トルコ旅行中、イスタンブールのオールドバザールをうろついていたら、カーペット屋に声をかけられた。
「ジュータン買っていかない?」
「要らないよ」
「日本に持って帰ったら、10倍で売れるよ」
「そうかもしれないけど、今、そんなおカネの余裕ないよ」
「安くしとくよ。クドクド・・・」
こっちもヒマだったから、ハナシにつき合っちゃった。そして、冗談に「マジック・カーペット(空飛ぶジュータン)だったら買ってやるよ」
そういったら、「あるとも! 中に入って!」
面白半分で店内に入ったら、「これが空飛ぶジュータンだよ。この上に座って目をつぶってごらん」
その通りにしてみたら、何と、宙に浮いた!
実をいうと、店内にいた男たちがジュータンの4隅を持って持ち上げていたに過ぎないんだけど、そのジョークがえらく気に入ったので、買うことにした。値段は6万リラ〈当時のレートで約6万円)。
でも、ビンボー旅行中なので、おカネに余裕がないのは事実だったから、手付けに10%のみ支払って、残金を送金したら品物を送ってもらう、ということで手を打った。
それからはオールドバザールなどをうろうろの合間には毎日のように寄って、チャイ〈お茶)やビールをご馳走になったり、一緒に食事に行ったりと、店主とはすっかり仲よくなった。
でも、帰国後、残金は送らないままになってしまった。面倒くさかったっていうか、よく「帰ったらXXしようよ」とかいった、旅の空で出たハナシは滅多に実現しないっていうし、自分自身、帰国したらあれをやろう、これをやろう、などと色々メモったりするんだけど、帰ってくると、日常生活に埋没するっていうか、日々の生活に流されてしまって、実現しないことが大半だ。そんなことと同じようなひきだしに入ってしまって、それっきりになっていた。
ところが、2年後、イスタンブールにまた行って、あのジュータン屋に寄ってみたら、店主はオレのこと憶えていたばかりか、件の”空飛ぶジュータン”をちゃんと取っといてくれたのだ。そして、「また来てくれてうれしい」と、それをプレゼントしてくれくれたのだ。
中東では、商取引とは、ふっかける~ふっかけられる、だます~だまされるとかいった関係ではなくて、友情を結ぶためのものだって聞いたことがあるけど、な~るほど、と感じ入った。そのオーナーとはその後もいいアルカダーシュ(トルコ語で友だちの意)になっている。