「ただいま……キャ~ッ!」
姉の悲鳴だ。
学校から帰って来るなり鞄を放り出して、おやつをパクついていた雪雄は慌てて玄関へ駆けつけた。
お勝手から母も、大根を握りしめたまま飛び出してきた。
 
「これ、何なのよ?」
姉が指さしたのは、雪雄がレイレイしく飾っておいた新調のスキーブーツである。
「何ってたって、スキーブーツに決まってるじゃないか。そんなに驚くことないだろう?」
「そうですよ、あんまりみっともない声出すんじゃありませんよ」
「だって……あんまり見慣れない形をしているうえに、バカでかいんだもん。アルプスでもアメリカでも、こんなに大きなブーツ見たことないわ、まるで怪獣ね」
 
姉は国際線のCA で、乗務の傍らよくあちこちのスキーリゾートへ足を延ばしているらしい。
「チェッ、イヤンなっちまうなあ、怪獣ってことないだろう? 最新システムのブーツだから、形も変わっているし、余計に大きく見えるんだよ…… な、何てったってオリンピック強化選手なんだからね!」
「そうそう、あなたがヨーロッパへ飛んでいる間にね、急に決まっちゃってね。それでお父さんに散々おねだりして、やっと買ってもらったのよね。前のブーツ、ついこの間買ってもらったばっかりなのに、どうしてもこれでなけりゃダメだなんて…… ずいぶん高かったのよ、これ」
「それはおめでとう! でも、何にしても巨大なブーツね。それに雪雄、私が帰って来る度に大きくなっているみたいよ。今、身長どれくらいあるの?」
190さ」
「何しろ育ち盛りだからねえ。それにしても、何だか腕が長過ぎやしないかね。最近、そう思うんだけど」
「そういえば、そうねぇ……」
「いやだなあ。これって、最も進化した体型ってもんだよ。校医さんがそういってたよ」
「長い腕に大きな足…… 雪雄、そんなにスキー、スキーっていってると、そのうち、スキー怪獣になっちゃうわよ」
「ほら、また姉さんのSFかぶれが始まった」(つづく)