あれから約1ヶ月。
あの日から保乃の頭は森田さんでいっぱいになってしまった。
ふと、隣の席に目をやる。
森「………zzz…」
相変わらず隣の席は森田さんやねんけど、にしても寝顔が可愛い。
ここ最近は授業に出てくるようになった森田さんやけど、大半は寝ちゃってる。
森「…………そういうことか……」
田「………ふっ、笑」
なに、その寝言。
可愛いすぎやん。
先「……また森田さんはサボりね…」
田「あ、さっきの授業は出てましたよ。」
先「どこ行ったか分かる?」
田「多分分かります。」
先「田村さん、ちょっと呼び戻してきてくれない?あなた学級委員長でしょ?」
田「え!」
いいんですか!?
先「嫌ならいいけど……」
田「や、行きます行きます!」
ずっと存在意義の掴めなかったこの役職やけど、今だけは学級委員長になって良かったと心底思う。
屋上までの階段を一気に駆け上がり、ゆっくりドアを開ける。
屋上に人影は見えなかった。
これが森田さんが見つかりにくい理由。
森田さんはいつもこのドアの上にいるんだ。
そーっとハシゴを登れば、やっぱりそこにはキャンディーをなめてる森田さんが。
嬉しくてにやけてしまいそうなのを必死に堪えながら、小さな背中に声をかける。
田「……それ好きなん?」
森「わ!びっくりしたぁ……」
田「へへ、ごめんごめん。」
保乃も森田さんの隣に座って足をブラブラさせる。
私たちの間をサーっと吹き抜ける風が気持ちいい。
森「あ、教室には戻んないからね。」
田「分かっとるよ。」
森「学級委員長様は戻りなよー。」
田「学級委員長だってサボりたい時ぐらいありますー。」
森「なにそれ笑」
森田さんはおもむろにポケットに手を突っ込んだかと思えば、ひょいと何かを取り出した。
森「はい、何味がいい?」
田「え、くれるん?」
森「特別ね?笑」
田「ありがと!んじゃ……コーラ!」
森「お、それ私も1番好き!」
今までで1番感情のこもった声のする方を向けば
今までで1番の笑顔になっている彼女と目が合った。
初めて見る彼女のとびきりの笑顔に、思わず見惚れてしまう。
田「………っ///」
森「ん?なに?」
田「いや………そういえば、森田さんってなんで授業サボるの?」
森「んー、面倒臭いんだもん。」
田「ええ?」
森「なんかみんな私のこと避けるし……あー、ほんと学校ってつまんないや。」
田「流石にその見た目は怖いし……笑
あと悪い噂も立っちゃってるしなぁ。」
森「…………あなたは?」
田「え?」
森「噂。信じてる?笑」
森田さんはどこか諦めたようにふっと笑った。
バキッ、と飴を噛み砕く音が聞こえた。
田「………正直、最初は信じてた。」
森「………」
田「でも今は信じてない!」
森「えっ?」
田「だってあの時助けてくれたやん。それにこうやって話してても悪い人感ないし!」
森「悪い人感……笑」
田「それに何だかんだ言って最近よう授業受けとるやん!……ほぼ寝てるけどさ笑」
森「うるさいなぁ……笑」
田「なあ、なんで急に授業出るようなったん?」
森「……んー?何ででしょう?」
田「はぐらかすな笑」
森「ところでさ、あなたって好きな人とかいるの?」
田「えっ!?………や、い、いるけど?」
森「ふーん?笑」
田「………森田さんはどうなんよ?」
森「ふふ、どうだと思う?笑」
含みをもたせるように笑う森田さん。
……やっぱり森田さん可愛いから彼氏とかおるんかな。
そうやとしたら……なんか嫌やなぁ……
目の前の森田さんから目を背けるように、さっき貰ったキャンディーを口に含む。
コロ、コロ、と転がせば甘ったるいコーラ味が口に広がる。
森「………さーて、そろそろ行くかな。」
田「え?どこ行くん?」
森「教室。授業も面倒だけど、先生に呼び出されるのも面倒だからね。」
田「あ、ああ………」
当初の目的は達成できたはずなのに。
………2人の時間が終わってしまうようでなんだか名残惜しい。
森「美味しい?」
田「………あ、うん。」
森「コーラ味、私も好きなんだ。」
知ってる。
さっきの森田さんの笑顔、ほんとに素敵やったもん。
森「でもコーラ味、それで最後なんだよね。」
田「……え、そ、そうなん?ごめ」
森「だから、」
森田さんの顔がぐいっと近づいた。
森「それ、ちょうだい。」
田「んっ、?」
コーラ味の物体がぬるりと抜き出される感覚。
気づいた時には保乃の口の中の飴は消えていて、代わりに森田さんが新しいキャンディーを咥えていた。
…………新しいキャンディー、?
森「じゃ、これもらってくね〜。」
田「んなっ……///」
そう言い残して森田さんはハシゴを降りて行ってしまった。
…………先に降りてくれてよかった。
だって、
田「………何なんもう…///」
こんな顔、森田さんに見られたくない。
――――――――――
ほのるん尊すぎんか……?ってことに気づいたこの頃。
おしまい。