ふと階段を見上げれば、ファンの方に向けて丁寧なお辞儀をしている有美子ちゃんと茉里乃ちゃんが見えた。
2人の姿を見てやっと、ライブが終わってしまったことを実感する。
福岡、愛知、大阪、そして埼玉とやってきたこのツアーが終わってしまうんだと考えると何だか寂しくなる。
それはもしかしたら、茜とぺーの卒業発表も大きく関係しているのかもしれない。
……卒業、ね。
色んな感情が駆け巡っていたせいか、前に立っている彼女に気が付かなかった。
菅「ぎゃっ!」
土「痛っ。」
菅「あ、土生ちゃん……ごめん。」
土「大丈夫大丈夫。ゆっかーは大丈夫?」
菅「私は全然………ん?これ何?」
土生ちゃんに気を取られて気付かなかったが、よくよく見ると土生ちゃん以外にもメンバーがいる。
っていうかほぼいるじゃん。
菅「え、打ち合わせなんてあったっけ?」
土「ああ、違う違う……笑」
菅「?」
なぜか半笑いで話す土生ちゃんの意図が読み取れなくて、更に質問を重ねようとしたところに冬優花が割り込んできた。
冬「あ、友香!」
菅「ふーちゃん?」
冬「キャプテンの出番だよ!」
なんて意味のわからない言葉と共に、ぐっと背中を押される。
菅「え、ちょっ、何事?」
土「いや〜、なんか泣いちゃった人がいるんだよ笑」
菅「まあ……恒例のことだね笑」
冬「それがね、珍しい人なんだよね笑」
菅「ええ?」
誰のことだろ……。
菅「………理佐?」
私の目の前には、困ったような笑顔を浮かべる茜とぺーが。
その2人に挟まれているのは、ぽろぽろと涙を流している理佐。
理「うう………ひぐ、っ……」
茜「もー、大丈夫だってば笑」
理「で、でもぉ……!」
梨「うん、理佐ちゃん頑張ってたもん。」
茜「そうそう!振りミスなんて誰だってあるからさ。そんな泣かないでよ。」
理佐か。
確かに理佐がこういう場で泣いてることってあんまり見たことないなぁ。
でも……理佐って振り付け間違えちゃったからって落ち込んじゃう人だっけ?
理佐って結構しっかりしてるから、あんまりそういう失敗に泣いちゃうなんてことないんだけど……
菅「大丈夫?」
梨「あ、ゆっかー。」
菅「ねえ、理佐どうしたの?」
梨「なんかね、最後の方で振り付け間違えちゃったらしくて。」
茜「そんなに目立ったミスじゃなかったんだけどね。気付いたの隣の天ちゃんとかひかるちゃんぐらいじゃない?」
梨「そうそう。だから大丈夫だよって言ってるんだけど……」
理「…………がうの。」
「え?」「ん?」「なんて?」
ずっと泣いていた理佐がぽつりと言葉を漏らしたが、茜とぺーとの会話に気を取られて聞こえなかった。
2人含め他のメンバーも聞こえなかったようで、じっと理佐の言葉を待っている。
また小さな声で理佐が呟いた。
理「違うの。」
茜「うん……どうしたの?笑」
菅「ちょ、茜……笑わないでよ…笑」
茜「だって……笑」
梨「理佐ちゃん、どうしたの?」
理「…ぐす、失敗しちゃったから……っ」
茜「えー?だから大丈夫だって…笑」
理「あかねとぺーちゃんにとっては最後のツアーなのにっ、失敗しちゃった……」
梨「〜〜〜っ!!!」
「ああ可愛いっ!」って小さく叫んで膝から崩れ落ちる茜。
その傍らでは、ぺーが顔を手で覆って天を見上げている。
この2人だけじゃなくて他のメンバーも理佐の可愛さに悶絶しているようで、いくつもの悲鳴がこだましている。
田「え、理佐さんめっちゃ可愛くない?」
森「分かる。」
松「きゅんきゅんする!」
なんて女子高生みたいな会話を交わしている2期の子もいれば、ぺーみたいになってる子もいる。っていうかそれが大半。
天「………///」
藤「〜っ///」
天ちゃんと夏鈴ちゃんなんかは完全にノックアウトされてるみたい。
天ちゃんはともかく、夏鈴ちゃんまであんなになってるの意外。
何だかんだいって理佐のこと好きなんだね……笑
菅「あれ?」
スマホを構えてニヤニヤしているふーちゃんに、口パクで「動画?」って聞いたら、親指を立てられた。
ナイス、ふーちゃん。
私もこの可愛い理佐を形に残しておきたい。
菅「2人とも大丈夫?笑」
茜「いやこれは反則。」
梨「理佐ちゃん可愛すぎだよ……///」
上「なんかすごい素直というか……ちょっと子供っぽいよね笑」
尾「あー、分かる笑」
菅「2期ちゃんたちもあんなだし……笑」
相変わらず固まって動かない夏鈴ちゃんと天ちゃん以外の2期ちゃんたちが、どこか期待を込めたような目でこちらを見ている気がする。
きっとみんな理佐と話してみたくてたまらないんだろう。
茜「ねえねえ、理佐。」
理「……ん?」
茜「私もぺーも全然気にしてないから大丈夫だよ?」
理「……ほんと?」
茜「うん。理佐と一緒にツアーできただけで嬉しいな。」
理「あかね…………だいすき。」
茜「………っ///」
平常心を取り戻したかのような茜も、理佐の可愛すぎる一言に耳を赤くしてしまう。
ぎゅーっと抱きしめられて、満更でもなさそう。
うう、羨ましい……
それにしても2期ちゃんからの視線がすごいな。
まあ、みんな理佐のこと好きだからなー。
ひかるちゃんと保乃ちゃんなんか目ギラッギラだよ。怖いよ。アイドルの目じゃないよ。
私が2期ちゃんたちに気を取られている間も、理佐の暴走は止まらなくて。
まだ " 可愛い " の余韻から抜け出せていないぺーのところへ駆け寄っていく理佐。
理「ぺーちゃん……」
梨「えっ、な、何っ?」
理佐っ
それ以上なんか言ったらぺー死んじゃう!
理「ぺーちゃんも…許してくれる?」
梨「う、うん…///」
理「……ありがと、ぺーちゃん。だいすきっ。」
梨「〜〜〜っ!!///」
子供みたいに抱きついてくる理佐の甘えた声に、ぺーもあっさり撃沈。
真っ赤になった顔を隠すように俯いて、理佐の腕の中に甘んじて収まっている。
うう、羨ましい……
菅「ふーちゃんどう?撮れてる?」
冬「ばっちり。にしても反則級の可愛さだね……笑」
菅「茜とぺーすっごい幸せそうだもんね笑」
冬「喜びが全身から溢れ出てる笑」
菅「ほんとに笑」
理「友香ー?」
冬「ん?友香、理佐が呼んでるよ。」
菅「ほんと?」
冬「ふふ、よかったじゃん笑」
げ、そんなに顔に出てたかな……
理佐からの指名ということもあって、ちょっとわくわくしながら理佐に近寄る。
私にも「好き」って言ってくれるのかな…
いやいや、私キャプテンでしょうが!
ついつい緩みそうになった頬に力を入れて、心を落ち着ける。
菅「理佐ー?どうしたの?」
理「あ、ゆっかー!」
やばい。
もう表情筋が陥落寸前。
理「友香ありがとう!」
菅「え、私何もしてないよ?」
理「ううん。舞台裏とかでも何回も声かけてくれたじゃん。」
菅「そ、そうだっけ?」
理「うん。」
私そんなことしてたんだ……なんてことを考えていると。
理佐がこぼれんばかりの笑顔で言った。
理「私、友香のお陰で頑張れたよ。」
菅「なぬっ///」
思わず理佐を抱きしめてしまう。
えっ、何この可愛い生き物。
うちのトムと同じぐらい可愛いじゃん。
欲しい……え、飼いたい!!
バシン!
菅「いたっ!!」
冬「ちょっと友香!ずるい!」
森「そこ代わってください!」
田「保乃だって理佐さん抱きしめたいです!」
茜「いやいや、事の始まりは私たちなんだからさ。」
梨「そうそう。」
菅「だって理佐が指名してくれたんだもん。ね、理佐!」
理「う、うん…」
尾「あー!ずるい!!」
森「理佐さん!私を指名してください!!私を!!」
田「いやっ、保乃をっ!!」
天「私も!!」
梨「理佐ちゃーん!」
……なんかカオスになっちゃったな。
でも茜もぺーもすごい楽しそうだし。
ちょっと理佐がお気の毒だけど、案外こういうのも悪くないかも。
「「「理佐(さん)ー!!」」」
理「?」
――――――――――
リクエスト作品です。
結構細かいところまでリクエストしてくださったので書きやすかったです!
メンバー全員は書けなかったんですが、できるだけいっぱい登場させた……つもりです。
リクエストありがとうございました!
いつかリクエスト募集してみようかなー、と思っております。
おしまい。