最近、友香の私への関心が薄れてきているんじゃないかと不安になることが多い。
保乃ちゃんとツーショットを撮る時も、そんなに顔近づける?と言いたくなるほどの距離感だし。
夏鈴ちゃんをやたら可愛がるし。
私にはよく分からない話題で土生ちゃんと盛り上がっちゃうし。
今だってそう。
菅「ひかるちゃんはほんとに可愛いね〜」
森「えー、そんなことないですよ笑」
菅「可愛いって!ねえねえ、抱きしめてもいい?」
森「え、はい……笑」
菅「ん〜!待って可愛すぎる!!」
森「へへ…///」
何よ、楽屋でイチャついちゃって。
まあ、ひかるちゃんは私と友香が付き合ってること知らないから仕方ないとして……
問題は友香。
『あの人、私の存在忘れてるのかな』って思うくらいには他のメンバー、特に後輩にベタベタしている印象が強い。
彼女が他の人とイチャイチャしている光景なんて見なければいいものを、どうしても気になってしまってチラチラと盗み見てしまう。
チラっと見て落胆。
もう1回チラっと見て消沈。
やっぱりもう1回だけ見て嘆息。
ますます落ち込みそうになった時、ふと人の気配がした。
茜「理佐。」
理「……えっ、茜?」
茜「はーい、茜だよー。」
理「ちょ、声と顔が合ってない笑」
茜「ふははっ笑」
おちゃらけながら私の隣の椅子に座る茜。
番組では熱血キャラが定着している茜だけど、楽屋ではそんなことはない。
おちゃらけるのも好きだけど、どこか落ち着いた雰囲気に見える。
にしても茜か……なんか珍しいなぁ。
別に仲悪いわけじゃないしむしろ仲良い方だけど、不思議とこうやって楽屋で話すことはあまり無かったように思える。
理「どうしたの?」
茜「うん?なんか理佐が悩んでそうだったから。」
理「え……」
茜「『なんで分かったの?』ってか?」
理「………」
茜「理佐ね、友香のこと睨みすぎ。」
理「えっ?嘘?」
茜「ほんとだって。めっちゃ分かりやすかったよ?
多分私以外は気づいてないけど。」
……それは " 分かりにくい " の分野に入るんじゃない?
とでも言い返そうかと思ったが、止めておいた。友香のこと見てたのは事実だし。
理「……はは、バレちゃったか…」
茜「………ねえ、なんかあった?」
理「…………」
茜にこの悩みをぶっちゃけようか迷った。
正直なところ茜とそういう真剣な話をしたことはあまりなかったから、少し不安だった。
しかし彼女だって伊達に副キャプテンに選ばれたわけではない。
きっと話せばちゃんと聞いてくれるだろうし、彼女なりの答えも知ることが出来るかもしれない。
理「……あのね、」
茜「うん。」
理「最近の友香見てたら、私のこと好きじゃないのかなって……」
茜「えー、そう?普通に好きでしょ。」
理「でも全然私のとこ来てくれなくて、ずっとひかるちゃんとか夏鈴ちゃんとベタベタしてるし……」
茜「あー、もしかしてそっちの意味?」
理「うん………」
茜「……うーん、でも別に好きなんじゃないの?好きじゃなかったら友香はそういうのすぐ言うタイプでしょ。」
理「……にしてもさぁ。ほんとに最近ずっと2期の子とイチャイチャしてるんだよ?」
茜「………まあ、その光景は私もよく見るけど…」
これがいわゆる " 言霊 " というやつだろうか。口に出していると、本当にそうなんじゃないかと改めて思ってしまう。
ああ、今すぐにでも立ち上がって、ひかるちゃんから友香を取り戻したい。
それが出来ない臆病な自分が腹立たしく思える。1歩踏み出すだけでいいのに。
理「だよね……はぁ、もう私どうしたらいいんだろ……」
情けない自分が嫌で、涙が零れ落ちそうになる。
突然、茜が無言のままパッと腕を広げた。
その行動が何を意図するのかなかなか理解できなくて、キョトンとしていると、待ちかねたかのように茜が催促してくる。
茜「……ほら。」
理「………え?」
茜「おいで。」
突然のハグに少し戸惑いつつも、茜の腕の中に甘んじて収まる。
相変わらず無言のまま、でもそっと頭を撫でてくれる手からは優しさを感じられる。
茜「………大丈夫だよ。」
ポツリと呟いた言葉。
恐らく茜にとっては、半ば無意識の内に発した言葉なのだろうが、今の私にとってその言葉は酷く心地よいものだった。
理「………ありがとう、茜。」
茜「ごめんね、上手いこと言えなくて…」
理「ううん、茜のおかげですごい元気でたよ。茜に相談してよかった。」
茜「……そう?笑
また寂しくなったらいつでも抱きしめてあげる笑」
理「ほんと?またお邪魔しちゃおっかな笑」
普段茜とはあんまりそういうことをしないからか、やけに視線を感じる。
急に現実味が出てきて、なんだか小っ恥ずかしくなってきた。
それとなしに周りを見回してみると、ほとんどのメンバーがサッと目を逸らしていく中、1人だけ私の視線を受け止めるメンバーがいた。
なぜか友香はジッと私の方を見てくる。
菅「………」
隣に居たはずのひかるちゃんはいつの間にか居なくなっていた。
……何?なんで見てくるの?
菅「…………」
理「…………」
なんか気まず……
何を考えているのか分からない表情から逃れるように視線を逸らした。
とりあえず今日は茜に引っ付いとこうかな……なんて考えながら席を立つ。
理「ねえ、あか」
菅「ねえ。」
理「っ、!」
知らない間に後ろに友香が立っていた。
さっきまでの無表情な顔ではなく、ニコニコと笑みを浮かべていたが私には分かる。
これは作り笑いだ。
しかも怒ってるときの。
菅「ちょっと散歩しに行かない?」
理「…………」
YESかNOかを答える暇もなく、手を掴まれてそのまま楽屋の外へと引きずり出される。
〈 空き部屋 〉
もちろんあのまま散歩に出かけるわけもなく、誰もいない部屋へと連れていかれた。
閑散とした部屋に無機質な施錠音が響く。
菅「…………」
理「ねえ、どうし……んっ!」
唇に温かい何かが感じられる。友香の顔もすぐそこにあって。
ああ、今キスされてるんだ。
不思議と驚きはなかった。
もしかしたら心のどこかに、そういうことをされるのを期待している自分がいたのかもしれない。
ふっと唇同士が離れていく感触と共に、息が楽になった。
理「………なんで急にこんなこと…」
菅「なんで茜に抱きついてたの?」
理「え?」
菅「え?じゃなくて。なんで?」
やはり先程の考察は間違っていなかったようで、友香は怒っている様子だった。
にしたって理不尽じゃないか。そっちだって後輩とやたら引っ付いたりしてたのに。
なんてことを考えてしまったせいか、少し語気が荒くなってしまった。
理「そんなのどうでもいいでしょ。友香には関係ない。」
……これじゃまるで私が嫌な奴みたい。
どうしても友香と話す気になれなくて、部屋の出口目掛けて走り出そうとしたが。
ドンッ!
友香の腕が伸びてきて、私の行く手を塞いだ。いわゆる壁ドンってやつだ。
7割ぐらいの気まずさと3割ぐらいの恥ずかしさからそっぽを向いていたら、友香にガシッと頬を掴まれて前を向かされた。
……うわ、怒ってる…
菅「関係ないわけないでしょ!私、理佐の彼女なんだよ!?」
理「…っ、そっちだってひかるちゃんとベタベタしてたくせに!」
菅「っ、」
理「最近ずっとそんな様子だし……もう私のこと好きじゃないんでしょ。」
菅「好き。」
理「…え?」
菅「理佐のこと、大好き。」
理「………なんで、?」
菅「理佐はさ、嫉妬してくれてたの?」
理「…………だって。」
菅「私がひかるちゃんとかのとこ行ってたのは、理佐が夏鈴ちゃんのとこ行くのと同じ感じだよ。ひかるちゃんはあくまでもメンバーだから。」
理「でも……すごい距離近かったし。好きってことじゃないの?」
菅「理佐の好きと、メンバーへの好きは違うに決まってるじゃん。」
理「…………ほんと?」
菅「ほんとだって。
……それに私、1回もひかるちゃんに『好き』って言ったことないよ?」
理「え……うそ……」
菅「……一応その辺は意識してたんだけどな…笑」
耳たぶ辺りからじんじんと顔が熱くなっていく。かあっと顔が真っ赤に染まっていくのが自分でも分かった。
菅「照れてるところも可愛いんだけどさ……それよりなんで茜に抱きついてたの?」
理「………友香が私のとこ来なくて寂しかったから、茜に抱きしめてもらってたの。
茜の腕の中、気持ちよかったなぁ。」
菅「ええ、何それ?嫉妬しちゃう。」
意地悪っぽく笑ったかと思いきや、感情のままに抱きしめられる。
理「う……友香、痛い痛い……」
菅「あかねんとハグしたんでしょ?上書きしなきゃ。」
理「……何言ってるの…笑」
でも……こんな可愛いことを言う彼女が、好き。
実を言うとさっきの茜には惚れそうになってしまったけど、やっぱり友香の方が私に合ってる気がする。
菅「あ、そろそろスタンバイ始まっちゃう。行こっか。」
理「うん。」
きっと友香なら、私を照らしてくれる。
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終わり方って難しい……。
最近りさゆっかーブーム来てます。
おしまい。