春めいた日が続いて嬉しい。

 

昨年植えたヒヤシンス、音沙汰無いなあと思っていた子から

少しずつ芽が出てきていて

ああ、そうそう、ペースはそれぞれなんだよね、と改めて思った。

 

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ポッドキャスト番組「となりの雑談」を聴いていて

呪いを自分で解く、みたいな経験って何かあったっけな、と思い返していたら

「調理用のバット」がそれだった。

 

幼稚園から小学生くらいの時期、

母はやたらと「親子で参加するパン作り」みたいな行事に私を連れて行った。

 

しかし手先が不器用な私は、作業を進めるにつれて、

「生地がなぜかうまくまとまらない」とか

「そのせいで他のグループから遅れをとってしまう」みたいな壁にぶつかってしまう。

 

その度に母は笑いながら、

「もう本当にこの子は不器用だから~」

「貸してみなさい、うまくできないんでしょう?」

といった声掛けをする。

 

「ナニクソ!」とか「どうやったら上手くいくんだろう?」と

ポジティブなエネルギーに転換できるタイプだったら良かったのだけど、

「私って本当に不器用なんだな」という実感がただただ上書きされ続けて、

色濃くなっていってしまった。

 

そしてたどりついた結論が、

「不器用な私は料理を頑張ろうとしてはいけないし、

料理ができる人が使っている道具を、私みたいな人が持つなんて恐れ多い」だった。

テレビの料理番組に毎回と言っていいほど出てくる調理用のバットは、

「料理ができる人が持つ道具」だから、とても手を出せなかった。

 

大学生になって1人暮らしを始め、料理をするようになってもそれは続いて、

実家に戻って暮らし始めて、夕食は各々作るスタイルだから

仕事から帰って台所に立つことは続いても、それでも使うことはなかった。

 

きっかけは、色々あって仕事を辞めてから、

ありあまる時間の中で出会ったお洒落な通販サイトに載っていた

フルーツサンドのレシピ。

マスカルポーネチーズと練乳とフルーツでできるシンプルなもので、

綺麗な断面の画像を見ながら、

ああ、これ美味しそうだなあ、作ってみたいなあと思った。

単純に暇でエネルギーがあったというのも、もちろんある。

 

材料を買いに行ったスーパーに隣接された、

100均のキッチン用品コーナーでバットと対峙して、

なんかもう、買っていいんじゃないか、と思えて。

使ってみたら、超便利。

 

軽いし丈夫だし、重ねて場所も取らないし。

今も大大活躍中だ。

 

何であんなにかたくなだったんだろう、と思う。

「不器用だから関わってはいけない」と自分でかけてしまった呪いは

ちょっとクリームの塗り残しがありつつも、

とても美味しいフルーツサンドと共にあっさりと解けた。

 

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何だか遠い昔のようだけど、2年ちょい位前の話でした。

ここ数年、なんだか紆余曲折だ。