マイストーリー ③

 

その後、長年の夢であったロンドンに移住し、

和食レストラン、和食焼き鳥店、日本食レストラン鮨カウンターなどで和食中心のシェフとして勤務し、和食がロンドンに馴染んでいること、どのお店も多くの日本人だけではない常連客がいるということを知り、日本人として、とても誇りに思いました。和食焼き鳥店にて、鳥の仕込みや炭を使って焼き鳥を焼く日々は白い煙に燻されても、お客さんが喜んでくれることに喜びを感じていました。

 

有名レストランNobu Berkeley Stでは、カウンター鮨シェフとして勤務しました。女性として、板前見習いとして学び続けることは、出来ないことの連続で涙を何度も流しました。それでも、色々と教えていただき、沢山の技術を得ることが出来きました。

大先輩のシェフの方々と肩を並べて立つ、カウンターを挟んで、お客さんの笑顔や美味しいと返して頂けることが、大きな励みになりました。

 

私の人生の中で、あれだけの数のお客さんを、前に仕事をすることは、もう無いと思いますし、本当に貴重な体験であったと思います。

食が巨大な力になって、人のうねりが毎夜、目の前に押し寄せる様は喜ぶべきことでしたが、その光景は異世界の光でした。

高級食材からスタッフの賄い、素晴らしい食材でいっぱいでした。

その時には、何も本当には分かっていなかったと、後に個人店で働き、初めて気付いたのでした。

一つ一つの食材の価値も、携わった人々の苦労、無駄を少なくする工夫も、十分には考えていなかった自分を恥ずかしく思いました。

 

近年は、主にケータリングのパートをする中で、日本の食文化を届けるための活動を夢見てきました。

大きな和食の需要に対して、イギリスで収穫できる野菜を使った和食の提供に、可能性を感じたからです。

一方で、大量生産、大量消費、大量廃棄の現代キッチンの現実に直面した経験から、ヴィーガンやベジタリアン、自然を大切にし共に生きるための食文化に興味を持つ様になり今に至ります。

そして、素朴でも新鮮な食材を使った、美味しい和食中心の料理の提供を通して、新たな発見を人々に提供し、喜んで頂きたいと思ったのです。

 

2020年、Noharaを立ち上げ、『常にそこにある自然と共にある私たちと、その恩恵を受けながら世界のどこにいても輝ける自分』をメッセージとして、シンプルだけれど季節の風味があり、素材を大切に使い仕上げた、日本人独特の感性である心のこもった『おもてなし』料理を提供し、何気ない生活の一ページにワクワクと彩を添える活動をしていきたいと思っているところです。

言語も国も人種も性別も、全ての垣根を超えた多種多様な人々と共に、料理を通じての繋がりを元に、微量であっても、私たちの生きる力の為に協力していきたいと夢みています。