映画 『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』  | 計画をねりねり・・・・・・。

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4月19日(日) 池袋・新文芸坐


     

特集 「さらば健さん! 銀幕に刻んだ男の生き様 追悼 高倉健 第三部」

『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』  【ニュープリント】(1966年/東映/89分)


     

時は昭和初期、場所は宇都宮。

高倉健扮するのは、花田秀次郎。

秀次郎の弟分(津川雅彦)は、地元の左右田組(そうだぐみ)親分左右田寅松(水島道太郎)のバカ息子左右田弥市(山本麟一)と恋敵。

弟分が恋仲との駆け落ちを助けるため、左右田組の親分に話を通しに行く秀次郎。

駆け落ちは許されたもののその代わりに、大谷石採掘業のライバルである榊組(さかきぐみ)の親分をヤルことを命じられる。
3年の刑期を終えたのちに秀次郎が真っ先に向かったのは、切り殺した榊組の親分・秋山幸太郎(菅原謙二)の墓参り。その墓前で偶然にも秋山の残された妻子に出会う。

大谷石採掘、榊組は代々受け継いできた良石の産出する山を持っている。


     


左右田組の寅松は、実は榊組の石工からの成り上がりもので、その持ち山から良石が産出する割合は少なく、おもしろくない。また、採掘組合の組合長(芦田伸介)も、榊組とは代々の付き合いであるため秋山の未亡人八重(三田佳子)が仕切っている榊組に肩入れをしており、さらにおもしろくない。

そこで、榊組が他所から手配してきた人夫を強引に奪って榊組の採掘の邪魔をしたり、採掘場で嫌がらせしたり。

そんな榊組を、名前を偽って影から様々に手助けする秀次郎。

そして秀次郎に、秋山の遺子である和夫(保積ペペ)は父のように親しんでゆく。八重もまた。

しかし、自分の手でヤッタ事実を隠しながら面倒をみることに日々苦しんでいた秀次郎は、八重が日頃の疲労の蓄積からひととき床についた頃合に、ついに事実を告げる。

そんなところに、三上圭吾(池部良)が榊組にふらりと帰ってきた。榊組の二の腕だった三上は、秋山と同じく八重に惚れていたのだが、八重が秋山と結婚することとなったため、三上は自ら身を引いたのだ。そして大陸へ渡り各地を放浪、馬賊と戦ったりもしていたという。

その三上、秀次郎が秋山を殺した仇と知ることに時間はかからなかった。川原での一対一のサシの勝負を申し込む三上、それに応じる秀次郎。しかし間一髪、八重が間に合い、二人を止める。

その頃、組合には宮内省から翌月末までに大谷石一千トンを納入する依頼が入る。大変に名誉なことで、なんとしてもやり遂げねばならない仕事である。しかし、宮内省からのリストに左右田組の名前はなかった。ますますおもしろくない寅松と手下たち。ついには、榊組の採掘場の現場責任者である金子直治(花沢徳衛)をその現場で爆死させてしまう。

こと、ここに至ってしまっては、耐え難きをこらえていた秀次郎も我慢ならない。一人で左右田組に乗り込もうとする。あたりには雪が舞っている。その足を向ける間際に、秋山家の板塀から八重と和夫にさりげなく別れの視線を送る秀次郎。

そして、秋山家の門前を通り過ぎようとしたとき、門内から歩み寄ってきて番傘を差し出したのはほかならぬ三上。


     

お互いにお互いを一瞬牽制するも、それぞれの胸の内は同じ。左右田組へと足を運んでゆく二人。

     

左右田組に着いた秀次郎、もろ肌脱いで 「死んで貰うぜ」

     

背中で泣いてる唐獅子牡丹


     

  

    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』 、昭和残侠伝シリーズの第2作目とのこと。

先だって、このシリーズの第7作目 『昭和残侠伝 死んで貰います』、

これをこの映画館で見たばかりで、

シチュエーションもストーリー展開も似たようなものだが、そこがよいのだろう。

やはり魅入ってしまった。

高倉健を筆頭に、池部良、芦田伸介、花沢徳衛、菅原謙二、いずれの俳優も貫禄十分。

そのたたずまいからして、いまの俳優では望むべくもないものを持っている。

1時間29分という時間のなかに、それぞれの役柄が持つ人生の悲哀が描かれている。

高倉健と池部良の道行、たまりません。

う~ん、ますますハマりそうな世界。

終演後、期せずして場内から拍手がおこる。

まあ、池部良の登場があまりに唐突なので思わず微笑んでしまったのと、

その池部良が討ち入りの時に使う武器が長ドスではなくて、主にピストルで相手を倒してゆくのは、

大陸帰りという設定が生んだご愛嬌。

父親を亡くしてしまった遺児に慕われ、

ラストは、「おじちゃん、行かないで。」「おじちゃ~~ん」 と叫ぶ声を背にいずくへと去ってゆく主人公、

完全に 西部劇 『シェーン』 の焼き直し。

でもそれは監督も、演者も、観客もみんなきっと承知の上だし、そこがいい。

本物のいい男は、男の子から慕われる。男の子は、本能的に大人のいい男を見抜く。

ただでさえいい男なのに、男の子から慕われる秀次郎=健さん、その劇的効果は倍増。

余談だけれども、大谷石の採掘現場は、この映画で描かれているとおり人海戦術だった様子。

もっぱらツルハシで切り出し、それをトロッコや馬車で運び出したよう。

1923年(大正12年)に完成したフランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテル本館には、この大谷石が建材として使われている。

現在は、愛知県にある明治村にその玄関部分が移築・再現されており、一見の価値アリ。