映画「東京物語」。
ネットで検索したその解説から。
「日本映画を代表する傑作の1本。
巨匠・小津安二郎監督が、
戦後変わりつつある家族の関係をテーマに人間の生と死までをも見つめた深淵なドラマ。
故郷の尾道から20年ぶりに東京へ出てきた老夫婦。
成人した子どもたちの家を訪ねるが、
みなそれぞれの生活に精一杯だった。
唯一、戦死した次男の未亡人だけが皮肉にも優しい心遣いを示すのだった……。」
先週金曜日。
82歳の実父と、77歳の実母が名古屋から上京してきた。
孫にあたる自分の愚息が5歳の頃以来だから、
およそ7年ぶりか。
実母は元気だけがとりえなほどだが、
実父は老衰気味でかかりつけ医からは外出禁止令の発動、
今回の東上もその医師には内緒。
そこまでしてやってきた目的は、
新装「歌舞伎座」の訪問。
六代目菊五郎や初代吉右衛門を見ている実父は、
昔からの歌舞伎好きで、
どうしても新しくなった歌舞伎座見たさにこのところの日々を過ごしてきたらしい。
切符は自分がすでに第3部を確保し、
両親は1階西側5番桟敷席を2枚、極上の座席位置。
自分は土間の12列14番通路際。
この切符代金は、自分が負担するといっても聞く耳を持たないため、
すべて両親が供出。
第3部の開演は18時10分。
16時23分着ののぞみで東京駅に到着する両親を迎えに、
社を早退してホームで待つ。
予定通り到着し、タクシーで歌舞伎座。
開演までに夕食を済ませる算段で、
相談の上、歌舞伎座脇にある老舗の「銀之塔」でシチュー。
3人ともここのシチューは初めてだが、
両親の口に合ったようで、すべて完食。
ちょうど開場時間となったので、入場。
桟敷に並ぶ両親の写真を撮ったり、
場内を散策したりしていると、開演。
そして、21時45分に終演。
終演後は歌舞伎座にほど近い八丁堀のビジネスホテルを予約済みで、
そこに3人で宿泊。
翌日、
自分は9時から重要な会議のがあるため、
6時に起床し朝食を済ませ、7時に会社へ向かう。
両親は10時30分の新幹線で帰宅。
13時過ぎ、
会議が終わった自分に、自宅へ無事到着した連絡が、携帯に入る。
さて、
上京する前から、そしていまも、
自分の行いが至らなかったのでは、と自問自答する。
翌日曜日に公式戦を控える少年サッカーの練習があるとはいえ、
実の孫、そして嫁である自分のカミサン、
この2人を東京駅まで見送りに無理やりにでも来させ、
ひと目会わせるべきではなかったか。
もうふたたび東京の地を踏む可能性のきわめて少ない老いた両親の上京、
それよりも重要な会議なんてあるのだろうか。
会議なんてうっちゃって、
せめて午前中だけでも自分の運転する車で
車中からでも東京見物をさせてやれたのではなかったか。
「東京物語」に登場する老夫婦の子どもたち、
その子どもたちが、どいつも老夫婦をやっかいもの扱いし、
それを見た自分は冷たいやつらだと蔑んでいたが、
結局は似たような行いを、しでかしていたのではなかったか。