今回ツッコませていただくのは、NHK教養バラエティ『熱中時間~忙中"趣味"あり』。

 この日のテーマは「野宿」で、番組開始早々、自分好きのニオイがプンプン漂っていた。

 27歳の女性が、「軒先を貸してください」と見知らぬ人に頼み込むのだが、これ、「飯も風呂も寝具も借りないから」ということで、本人のなかでは美しいのだろうけど、実際、かなり迷惑な行為には違いない。

 たとえば、想像してみよう。自分の家に彼女が訪れたら——やっぱり「危ないから家で泊まって」と頼むのではないか。実際、番組に登場したお寺の住職さんも困っていたが、「できれば野宿で」と主張する彼女。

 きっと住職さん、しぶしぶ承知した後も、心配で何度も彼女の様子をこっそり見に行ったろうし、場合によっては、眠れぬ夜を過ごしたかもしれない。

 だが、そんな他人のことは全然おかまいなし。

 第一、「野宿」を趣味とすること——これ、やむにやまれぬ事情で毎日野宿している人たちに、かなり失礼ではないだろうか。と思ったら、やはりネットでも「単なる自己満足」「迷惑すぎる」「こんな甘えた野宿だめだろ」「こういう奴実際迷惑だよ」など、同様の意見が続出していた。

 しかも、彼女、「普段は亡くなったおばあちゃんの家で一人暮らし」なんだそうな。あれ、なんかそれって......????

 とどめのように、「週に3日介護の仕事をしています。この仕事を選んだのも、時間が自由になって野宿に時間を使えるから」——。

「介護、なめんな!!」

 誰もがこの瞬間、心のなかでこう叫んだに違いない。ネットでもやはり怒りの声が噴出しており、それらが非常に「常識的」であることに、なぜか救われた気にすらなった。

 さらに、気持ちよさそうに語ってくれた「野宿の良さ」が、こんなセリフ。

「野宿してると、『幸せのハードル』が下がるんですよ。朝起きて無事であることに幸せ、天気が良くて幸せって。エヘヘ」

 あれ????? このセリフ、そっくりそのまま、先日、どこかで聞いたばかり。デジャブ?と思ったら、このコーナーでも取り上げたばかりの麒麟・田村のコメントだった。

 そのまんまのセリフを拝借って......いくらなんでも安すぎませんかね。田村には田村の誰にも真似できない歴史があってこそのセリフなのに、「一軒家で一人暮らしして、趣味で野宿」の人が言っちゃうのって......。

「ホームレス中学生、なめんな!!」

 そして、最後に、他人事のように、客観的に自分の趣味をこんなふうに語ったのだった。

「まあでも、刺激が欲しいんですよ、きっと。でも、平穏でありたい辻褄の合わない自分がいて。『何してるんだ?』って(笑)。辻褄の合わないことを真剣に試みてるのが面白いんですよね」

 「バカなことを真剣にやる美しさ」みたいなことって、周りの人間が見て感じることであって、自分で言っちゃったら、単なる"自分うっとりワールド"でしょうに。

 まあでも、自分にうっとりしたいんですよ、きっと。
(田幸和歌子)