今でも、あの頃のことをはっきり思い出します。
長野県でブラックバスのリリース禁止が議論されていた頃のことです。
当時も私は、野尻湖に立ち、釣りを仕事にして暮らしていました。
リリース禁止の話が出始めた頃、毎日のようにパソコンに向かって調べ物をしていたのを覚えています。
中心にあったのは議事録でした。
何か打開策はないかと、内水面漁場管理委員会の議事録を読み漁っていました。
フォーラムにも足を運びました。
県知事にも直接お会いしています。
パブリックコメントにも参加しました。
署名も集めました。
釣り人だけではなく、一般の方、ショップの方々など、さまざまな人が協力してくれました。
私が集めたものだけでも、2,000名ほどになったと記憶しています。
そうした中で、内水面漁場管理委員会のある委員の方に直接お会いする機会も作っていただきました。
その方は市議も務めており、当時ある漁協の組合長でもありました。
食事の席を設けていただき、何とかならないかと直談判したこともあります。
周囲からは、
「反対側であろう漁協と仲良くするなんて」
と言われたこともありました。
けれど、私の中では逆でした。
むしろ漁協の方だからこそ、話を聞いてもらえるのではないかと思っていたのです。
立場は違っても、釣り場のことを考えている人なら何か分かってくれるのではないか。
そんな気持ちがありました。
その時に言われた言葉は、今でもはっきり覚えています。
「委員は他にも何人もいるから、一概には言えないが、気持ちは分かる」
その方はもう亡くなられていますが、忘れられない言葉です。
しかし、全体の流れとしては止まらない空気がありました。
あちこちでリリース禁止の話が進み、この仕事も終わりかもしれないと絶望していた頃のことです。
陸に置いてあった自分の船を見ながら、そんなことを考えていました。
そんな時、とある野尻湖漁協の方から声を掛けられました。
「漁協が何とかしようと頑張っているから、待ってろ」
そう言われたことを、今でもはっきり覚えています。
リリース禁止が決まった後、状況は大きく変わりました。
リリースしてはいけないとなれば、いわゆる始末をするしかありません。
ルールを守ろうとすればするほど、そのことを嫌がって釣りから遠ざかっていく人が増えていきました。
仲間たちも、自宅の近くで釣りをすることがなくなり、少しずつ釣りから離れていきました。
それでも最初のうちは、たまに野尻湖まで来てくれる仲間もいました。
けれど、距離のある野尻湖だけでは、なかなか情熱を支えきれなかったのだと思います。
少しずつ足は遠のいていきました。
あれだけ多くの仲間が持っていたバスボートも、いつの間にか次々に手放されていきました。
当時、私の仲間たちは本気で釣りをしていました。
自分の仲間内のショップの大会には、40名ほどが集まっていた時期もあります。
それでも、少しずつ釣りをやめていく人が増え、大会も消えていきました。
当時たくさんいた仲間も、今ではたまに1人か2人顔を出してくれるくらいです。
それから長い時間が経ちました。
今でも私は野尻湖に立っています。
昨年は、自分で作ったN-CICADAというルアーで、サイズの良い魚がよく釣れました。
今でも、あの頃の仲間たちと釣りがしたいと思うことがあります。
あの頃のように、また同じ湖に浮かべたらと思うことがあります。
ただ、当時のことを具体的に思い出したり、人と話したりすると、リリース禁止が決まった時のあの気持ちが、今でもそのまま蘇ってきます。
N-Formula series について
魚は、水中のさまざまな情報をもとにルアーを判断しています。
N-Formulaは、その判断に触れる「ベイトのシグナル」をルアーに与えるフォーミュラーです。
フォーミュラー自体が持つ匂いと味。
それがルアーをベイトに近づけます。
もともとワームに匂いや味などのフォーミュラーを練り込んで成形する方法もありますが、配合量や構造にはどうしても限界があります。
また、練り込んだフォーミュラーは時間の経過とともに徐々に飛び、次第に薄れていきます。
さらにワームの製作工程では加熱処理が行われます。
フォーミュラーはこの工程の中で変質してしまうことがあります。
それは、料理前の素材と加熱後の料理の関係に少し似ています。
せっかくの良いフォーミュラーでも、製作工程の中で本来の状態とは違うものになり、結果として無かったものになってしまうことすらあります。
そのため、匂いだけでなく栄養や味を含めたフォーミュラーを練り込む方法には限界があると判断しました。
ただし天然塩とミネラルは熱の影響を受けにくく、成形後もそのまま残ります。
RBFの高比重ワームでは、この天然塩とミネラルを製作時に練り込んでいます。
そこにベイトのシグナルを後から加えるため、フォーミュラーという形を選択しました。
一般的なフォーミュラーの世界では、匂いの強さで魚の反応を引き出す考え方が多く見られます。
強い匂いは初期には効果が出ることもありますが、その特徴は魚に学習されやすく、短期間で反応が落ちてしまう場合もあります。
その結果、さらに強い匂いを作る、匂いを変える、といった繰り返しになりやすく、そこには限界もあります。
N-Formulaはその考え方とは少し違います。
対象となるベイトの匂いで寄せる。
ヒマラヤ岩塩に含まれるミネラルやフォーミュラーに含まれるアミノ酸も、魚を寄せる一因となります。
フォーミュラー自体が持つ味と栄養素は、バイト前後の判断にも関わります。
魚は水を口に含み、味蕾でその中に溶けている成分を感じ取ります。
匂いだけでなく味も、バイトの判断に影響を与えています。
フォーミュラーに含まれる匂い、味、アミノ酸、ミネラル。
それらは溶け出し、そのすべてが魚の感じ取る情報になります。
N-Formulaは、ベイトの情報が届くことを考えて作りました。
現在、N-Formulaは4つのモデルで構成されています。
Shrimp
甲殻類ベイトのシグナル
Shrimp Oil
水中で広がる拡散シグナル
Baitfish
捕食対象となる魚類ベイトのシグナル
Squid
高タンパク源となるベイトの栄養シグナル
それぞれ異なる方向から魚の判断に触れます。
また、すべてのフォーミュラーにヒマラヤ岩塩を配合しています。
生物に必須な塩分とミネラルを補完し、フォーミュラー全体の味の構成を整えています。
N-Formulaは単体でも使えますが、シグナルを重ねることでルアーの表現を調整することもできます。
フォーミュラー自体が持つ匂いと味で、ルアーをベイトに近づける。
それがN-Formula seriesの思想です。
魚の判断は、水の中の環境に依存します。
ベイト周辺の状態も、間違いなくその中にあります。
なぜ、ロイヤルブルーフィッシングのワームには天然塩が40%も入っているのか。
N-BOMERやN-Straightなどの高比重ワームでは、ヒマラヤ岩塩、いわゆる天然塩を40%配合しています。
※ここでいう40%はワーム素材に対する配合比です。
これは、ただ重くするだけのためではありません。
小ささを成立させ、ノーシンカーでもディープを狙える比重とすること。
そして、水の中で餌らしさを崩さないための設計です。
天然塩を使うもう一つの理由は、ミネラルです。
ミネラルを含む天然塩は、水に触れることで微量な成分が溶け広がる特性があります。
この点については、実釣の中でも少し興味深い変化を感じています。
バスだけでなく、鯉やヘラブナなど他魚種が反応する場面が以前より増えていることです。
もちろん、科学的に証明したわけではありません。
ただ、水の中でミネラルが溶け出すことで、餌が存在するときの水の状態に少し近い環境が生まれている可能性はあると考えています。
自然界の餌であるエビや昆虫、小魚などは体液を持っています。
体液には塩分やミネラルなどが含まれていて、水中ではそれらが周囲の水にわずかに広がります。
天然塩を多く含むワームも、水に触れることで微量なミネラルが溶け出します。
それが結果として、“餌らしい水”に近い状態を作っているのではないか。
今のところ、そんな仮説を持っています。
「なぜ40%なのか」と聞かれることがあります。
天然塩は、入れれば入れるほど良いというものではありません。
少なければ比重も個性も弱く、多すぎれば成形や強度が不安定になる。
その中で、小ささを成立させる比重、水の中での餌らしさ、そして製品としての成形性まで含めて意味が出る水準として、40%という配合にしています。
40%という数字は、ただ多ければいいという発想で決めたものではありません。
小ささを成立させる比重、ミネラルを含む天然塩としての意味、そして難易度の高い成形を製品として成立させること。
その三つが噛み合う水準として、40%という配合にしています。
そして、最近発売のN-Formula。
ここにもヒマラヤ岩塩を配合しています。
フォーミュラーは水に触れるとすぐに溶け出す特性を持っているため、水中に投入した瞬間からその効果を期待できます。
ワームは天然塩がゆっくり溶け出すことで、水の中で“餌らしい状態”を持続させる役割。
フォーミュラーは投入直後からその環境を作る役割です。
ヒマラヤ岩塩を使う最大の理由は、餌となる生物に少しでも近づけること。
ワームの持続性と、フォーミュラーの即効性。
この二つを使えば、水の中で絶え間なくベイトの気配を保つことができるでしょう。








