こんにちは。
嘲笑の精神に染まることなく、読む解く努力を重ねてくれている皆さん、本当にありがとう。
「昭和天皇7つの謎」(『歴史読本』、新人物往来社、2003年12月号)の⑦「天皇と軍部との関係はどのようなものだったのか? 天皇と軍部の相互不信(2)」です。
「昭和天皇7つの謎」シリーズは、これで終わりになります。
お疲れ様でした。
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■天皇と軍部の相互不信(2)
天皇と軍部との関係は、皮肉なことに政界ピンボールのようなものだったと形容できるのではないだろうか。
天皇のドロンとした球が軍部内の不満を高めて流言の拡大を生むと、それによって軍部に対する天皇側近の嫌悪感が増幅され、例えば皇道派を凋落(ちょうらく)させる堆積物となって着々と沈殿していく。
気がついてみると、軍部の対外路線はかえって急進化の傾向を強めてしまい、苛立(いらだ)つ天皇が再び変化球を投じる……。
天皇と軍部の相互不信とその連鎖は、この時代の日本にとって、実に深刻で悲劇的なパラドックスであった。
主要参考文献(★20160630 文庫本などになっている場合は書誌情報を加えた)
□山田朗『昭和天皇の軍事思想と戦略』(校倉書房、2002年)
□安田浩『天皇の政治史 睦仁・嘉仁・裕仁の時代』(青木書店、1998年)
□永井和『青年君主昭和天皇と元老西園寺』(京都大学学術出版会、2003年)
□防衛庁防衛研究所戦史部監修、中尾裕次編『昭和天皇発言記録集成 上・下』
(芙蓉書房出版、2003年)
□酒井哲哉『大正デモクラシー体制の崩壊 内政と外交』(東京大学出版会、1992年)