こんにちは。

多少の複雑さにひるむことなく、読む解く努力を重ねてくれている皆さん、本当にありがとう。

 

「昭和天皇7つの謎」(『歴史読本』、新人物往来社、2003年12月号)の⑦「天皇と軍部との関係はどのようなものだったのか? 統帥権独立と軍人勅諭(1)」です。

 

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天皇と軍部との関係は

どのようなものだったのか?

 

統帥権独立と軍人勅諭(1)

 

長州出身者でなければ陸軍内で将来を嘱望されるエリートたりえず、薩摩(さつま)出身者でなければ海軍内で出世を期待することはできないといわれた時代があった。

 

確かに日露戦争までの時期、それぞれ藩閥の長によって統率されていた陸海軍は自立した政治勢力であるとはいえなかった。

陸海軍それぞれの利害に深く関わる場面においても、藩閥の長たる元勲(げんくん)たちの、国政運営全般に関わる判断や意向に逆らうことは困難だった。

 

しかし日露戦争後、陸軍は長州閥を構成する中核という段階から、独自性の強い政治勢力へと脱皮していく(海軍の場合はやや時期が遅くなる)

藩閥からの自立を果たして政治的な存在感を増した陸(海)軍は、軍事組織としての軍と区別する意味で、「軍部」と呼ばれるようになった。

 

ここでは、政党勢力や官僚などと並んで一大政治勢力となった軍部が、昭和天皇といかなる関係にあったのか、その性質のもつ特殊性について考えてみることにしたい。