私は昔から、猫が好きだという人と気が合う。
別に私が猫好きなわけではないし、どちらかといえば亀が好きだ。
きっと猫好きはみんな、猫の自由気ままにやっているところが好きだ。
好きな動物を人に聞くと、面白いことに皆動物に自分の理想を重ねているらしい。
「私は鳥かな、好きなところに飛んでいけるし」
「クラゲでしょう」
「ウサギだよー。かわいいし!寂しいと死んじゃうんだよ?やばいじゃん!」
もう、丸見えなのだ。
ただ理想は理想なので、鳥になっても猛禽類でもないかぎり群れに縛られるし
クラゲのように潮の流れのままに生きたいと思っても定置網にひっかかって公害呼ばわりされるのが関の山かもしれない。
ウサギに至っては実は性欲の塊で、一人がさみしいからといって雌雄一緒に飼うと
雄はたとえ雌が出血しようともお構いなしにブイブイかまし続けるらしい。
こういう実情が回答者の実情まで示唆しているはずはないが
もう、丸見えなのだ。

友人に好きな動物を尋ねて妄想にいそしむことにはまっていた私は先日、
中学校の同窓会で、当時思いを寄せていたK君にこの質問をしてみた。
「動物かー…。あんまり無いなあ。というか考えたこと無いかも」
つれない返事に私は、今考えたらいいから、植物とかでもいいからと食い下がった。
「ああ、それなら夜光虫とか」
よくわからない回答だ。
「ほら、赤潮とかの原因だったり…2年のとき中学校のプール赤くなったの覚えてない?」
そういえば、と私は思い出した。

中学2年の秋に、使われないプールが赤く染まった。
毎年たいてい緑がかっていき、最終的には墨汁で満たしたような黒い色になるのだけど
その年のプールは、なにやら特殊な藻と夜光虫という微生物のために赤くなった。
自然に発生しうるようなものではないので、犯人さがしが始まったが
結局捕まらずじまいで、先生達も冬休み前には諦めてしまい、事件は迷宮入りした。

「あれさー、その水に夜に入ると面白いからって先輩たちがやってたんだよ」
私はあっさりと10年越し、迷宮入りの難事件の犯人を知ってしまった。
「結局寒いからとか言ってあの人たち入らなくて、じゃあ俺達で入ってみようって、Yとかで集まって忍び込んでさ。でもやっぱり寒いんだわ」
Yというのは今Kの横で笑っている彼の悪友で、その話題で盛り上がった彼らはそのまま私を置き去りにして馬鹿笑いしていた。
夜入るとどうなるのかも聞けず、漠然と、光るのかな?とか思って
昔話に出てくる金の斧を思い出している私は、そのまま完全に話し相手を失って真っ赤なトマトジュースをストローでちびちび飲んだ。
ほら、やっぱり猫好きじゃない人とは駄目なのだ。

帰宅してから、どうしても気になった私は、安いハイボールを片手にインターネットで検索して夜の夜光虫をみた。
その夜、夢にはプールで遊ぶKとYが、月とネオンのような夜光虫の光に照らされてぼんやり見え隠れした。
私は何故か、プールの精霊の右手の上で金色の亀となってそれを見ていた。