京都で独り暮らしをしている僕は、友人の小池という男に誘われて短期バイトをすることになった。海水浴場の休憩所で、所謂「海の家」をするとの事だった。当時の僕は金と女に縁の無いプー太郎だったから、小池の、一夏のアヴァンチュールじゃという、中学生でも相手にしないような台詞を真に受け、阿呆のように幻想を抱き、ころりと騙されたのだった。時給八百円で七月から八月の間、盆も休み無し。まかないは有り。小池の叔父がやっている。
「海開きする前に日除けとか建てなあかんから。明日いけるやろ」
小池が、僕の部屋で漫画を読みながら、アヴァンチュールを了承した僕に言った。
「ああ、うん。いや、明日は無理」
同じく漫画を読みながら聞いていた僕は、集中しない頭で自分の予定を思い出していた。
「明日は同窓会がある」
何の同窓会やねんと尋ねてくる顔には、嘘つくなサボるつもりやろと決めつけた雰囲気がした。小学校のクラスで集まろうという会だったから、中学から転校してきた小池は呼ばれなかったらしい。
「いつの話やねん、小学校って」
「大阪なんか機会無いと帰らんからさ、色々あんの」

 結局、中学で知り合うと、僕と小池は同じ京都の馬鹿な高校に行って、二人とも独り暮らしだったから、腐れ縁というのにぴったりなおざなりの関係でやっていた。僕は途中で学校を辞めて、小池は一応進学して、やっぱり馬鹿な大学に行った。その後、二人とも無職。


 まあまあ色々な、あんねん、と説得する僕の魂胆など、本当に、面倒くさい仕事を回避したいだけだった。今の自分で昔の友人に会ったとして、自分にも、相手にも、良いようなことは何もない。単に、2000円の参加費で食べ放題という所が、テント設営の労働よりも価値がありそうに思ったのだった。
「何時からや」
「七時。…やけど、そら集合とかは六時半とかなるやろうし、そうなったら出発すんのは…」
正直に言ってから後悔した。昼までやから、来い、とため息混じりに言われて、断れるはずもなかった。