なげかわしいことに。


自宅で呑んでいてふつか酔いである。


なんでこんなことになったか?といって、ふつか酔いなんてものは飲み過ぎ以外に要因はないのであって、だから私のふつか酔いもまた呑み過ぎが思いっきりその原因なのだけど、そもそもなぜ呑み過ぎるのか?といえばこれはもう習性のようなもので、呑みだしたら過ぎてしまうタチなのである。


が、最近までは家で呑むのにもビールだったわけで、これは大変にアルコール度数の弱い酒だから酔っぱらうまでに時間がかかる。今週のように労働が夜勤のシフトだと、酔っぱらう前に眠ってしまうから、私のように短眠3時間程度の人間でも起床時にはすっきりしていたのだが、先々週、近所の酒屋をぶらついていた折りにくだらないことを思いついてしまったのが運の尽きと言える。

それは、バーボン。

私、一昨年、憩室炎で入院して以来最近まで、まぁ減量の目的もあって自宅で飲酒するのを避けていたのだけれども、ここのところ油断甚だしく、ぼちぼちとまた呑むようになってしまった。

しかし、こんな意志薄弱な場末のパンクじじぃであっても心の奥底にハナクソ程度、入院生活の情けない想い出が引っかかっていたのだろう、「アルコール度数の強い酒は避ける」という掟をどこかで作っていたらしく、自宅飲酒はビールにとどまっていた。しかし、人間、油断し始めるときりがなくなってきて、それがまた焼酎のウーロン割りに格上げになったり、「泡盛程度なら」って、「そりゃもうウィスキーとかわらんだろう」みたいなボケツッコミををひとり演じつつ、休息にアルコール度数はエスカレート、そんなこんなでぶらついていた酒屋に並ぶバーボンに「なつかしいなぁ」なんて嘆息したあたりまでは記憶しているのだがその後、気がつくと酒屋の店先でレジ袋に放り込まれたバーボンを抱えて呆然としていたわけである。

でもほら、パンクなんてのは所詮気の小さい人間が世間を拗ねて足を踏み入れる稼業であって、私とてその例外ではなく、基本的性向がチキンだから買ったバーボンもなんとなく封を切るのに勇気が必要で、かれこれ10日ほど自宅PCデスク下の床に転がしたままになっていたのだ。

そこへもってきて昨夜の夜勤がトラブル続きで、気分がクサクサする。いっそのこと部下のブラジル人労働者を殴って憂さ晴らししてやろうかとも思ったのだけれど、そこはまたチキン野郎の哀しさで、私の与えた一撃が国際問題に発展すると、様々な面で生活がしにくくなるしおそらく私は職を失うという予測をしてしまい、拳を納めた。パンクをしながら長年執筆を続けている小説も、がらくたをぶっ叩いて録音したクズ音塊も、日頃の恨みつらみ妬み嫉み憎悪嫉妬憤怒等々をだらだらと書き連ねたポエムも未だまったく売れる兆しのない私としては今失業すると人生のプランが大きく狂ってしまうのでできるだけそう言う事態は避けたいし、よく考えると私のクサクサとブラジル人労働者は無関係なので、殴ったつもりが集団でボコられる可能性もあって、だけどそれは私に非があるのは明白で、反論、抵抗の余地もなく、この件に於いて私は有罪なのである。

有罪です。

有罪はイヤです。

なのでクサクサをとりあえず家に持ち帰ってきて、入浴でやや洗い落とした後、PCを立ち上げる段になって床に転がるバーボンを再発見してしまったと、こういう経緯があって。

私はふつか酔いになった。


若い頃バーボンが好きでネェ、でも当時は今にも増して貧しく一時的に路上生活もしていたような私にとってはとても高価な代物でとてもとても手がでなかったでも、ライヴの打ち上げかなんかで呑ませてもらったその味が忘れられずに時々盗んでみたりしてね。私がはじめて呑ませていただいて、とにかく大好きだったワイルド・ターキーなんてのは8000円以上の値段が付いていたナァ。

それが今は2500円ほどで購入できる。

いやこれは嬉しい。

ターキーが呑める。

円高バンザイ。


しかし、私が購入してふつか酔いになったバーボンはフォア・ローゼス。

なんでだ?

どうせならターキーを買うんじゃないか?

そこでまた50.5度対40度のしらじらしい比較をしてじじぃらしく度数の低い方を購入したか?

それともターキー2500円に対してローズ1500円という比較で1000円をケチったのか?

知りません。

私、気がついたらこれを持って店頭に佇んでいましたから。


いずれにせよ。

私はチキンであってターキーにはなれなかったというお話。


(了)