酸素室の中で

フラフラしながらも

しっかり立って

大きな目を見開いて

私に

「ここから出して」と

言い続けている…

 

そんな愛しい娘の願いを

叶えてあげる事も

楽にしてあげる事も出来ずに

側にいる事しか

出来ない私…

 

 

 

 

その時は突然で

 

 

 

「あ…ノワが倒れる」

 

 

力強かった眼差しから

フワッと光が消えた瞬間

とっさに酸素室の入り口から

手を伸ばし抱きしめました

 

 

ほんの一瞬の出来事でした

 

 

脱力した身体を抱きしめると

ノワの身体から水分が滴ってきました

温かかった

 

 

 

「ノワが逝ってしまう…」

 

 

 

 

主人は酸素ボトルを

何本も何本も使って

ノワの口に充てながら

「まだダメだ まだ間に合う」と

一生懸命でした

 

 

私は

「もう頑張らなくて良いよ」

「ありがとう」「ありがとう」「ありがとう」

と言っていました

 

主人が5本目の酸素ボトルを

使い切ろうとした時

私が大好きだった

ノワの大きな瞳に光が戻り

呼吸をしてくれました

 

 

けれど

それも束の間

 

 

苦しむ事もなく

静かに…とても静かに

 

私の腕の中で

主人が見つめる中で

奇跡の子は天使になっていきました

 

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心臓は最後の最期まで

強かったね