家族が寝静まってしまったので、
せっかくの父の日だし、父について少しじっくり考えてみました。


私の父は多分普通のお父さんとは違い、天然を通り過ぎてほとんど芸術です。


芸術エピソードをいくつか紹介します。

・ある日突然、ロシアに「ドストエフスキーの墓参りに行ってくる」と行って失踪。
 数ヵ月後、ロシアでカツアゲに遭い、一文無しで帰宅。

・退職後、父が仕事部屋的に使おうと、なんの気なく住みはじめた町で、
 ご近所さんから「オウム信者っぽいから退去して欲しい」と僕に連絡が入る。
 父のところに飛んでいったら、「え?おれ?オウムなの?」だって。

・ある日突然、北海道に「ルーツを辿りに行ってくる」と行って失踪。
 数ヶ月後手紙が届き「アイヌの村で暮らしています」と報告。
 会いに行ってみると、アイヌの村で暮らしていつつも村の人にちょー嫌われてる。
 父はあまり気にせずたんたんと一緒に暮らさせて貰っている。
 村の人々、僕を観てびっくり!「くまさん(父の村でのあだ名)!家族、いや、子供いたの!?」

・最近は原発反対運動で日比谷公園でのテント暮らしに凝っているらしい。


どうでしょう。

あ、ドン引いてるでしょ。まあまあ、これでもかなりソフトに言ってますからね。
ディテールは今度会ったときにでもお話します。


そう聞くと、困った親父だなー、サヨクだなー、プロ市民だなー、
うさんくせーなーと思うと思うのですが、
これがまた困ったことに、僕は父から結構ためになることを教えて貰ったと思っており、
それは父以外からは聞いたことも無い、どうも世の中の真相に結構肉薄した話な気がしてしまっているのです。親も親なら子も子ですねホント。

子供のお前にもドン引きだよ!て話ですが、まあ、もうちょっと聞いてください。


親バカならぬ、そんな子バカの僕が
父から教えて貰って、これは結構すごい話だな、なんか力が沸いてくるなと思える
3つの話を、せっかくだから、ドン引かれついでに紹介します。


■一つ目 「お金の量と幸せの量は全く関係がない」

父はお金持ちも貧乏も両方経験していますが、
どうも、お金があったときよりも無い今のほうが楽しそうです。
今は、ホントに困るぐらい全然お金がないみたいですが、生き生きしています。
その姿を見て、僕は本当に勇気がわきます。


■二つ目 「無職も立派な職業」

人はどうなったって生きていけるそうです。
それと仕事は本当に全く関係ない。

仕事があって命を落とす人もいれば、仕事が無くて長生きする人もいるのだと。

屋根がなくても着る服がなくても生きていけるそうですし、
ぱっと見、食べられなさそうなものも意外と食べられるんだそうです。
そのような父の姿をみたとき、僕は本当に勇気がわきました。

そして、一生懸命まじめに働く、ということと、世の中の役に立っている、ということには一切の関係がなく、
世の中の役に立つことを優先したときには、意外と、働かないのも選択の一つだという、
そんな謎かけみたいなことも言うのです。

このへんのことは、僕も難しくてよく分かりませんが、
もう少し僕も経験を詰めば分かってくるのかもしれません。


■三つ目 「生きる目標や夢はあれば目指せばいいが、なくてもいい。いずれにせよ独りよがりだから」

父は、世の中を変えなければ、とか、世界は間違った方向へ、とか言いながら
鼻毛がものすごい量出ていたり、ズボンのチャックが豪快に開いていたりする、
そんな、ちょービックな話をすると同時に足元がぐらんぐらんの小粋なあんちくしょうです。

そしてその姿は、詰めの甘い性分の僕の姿を見るようで、恥ずかしいと同時に、
「頭のいいヤツが何人集まっても世界は変わらないが、
そこに一人ド天然の大馬鹿野郎が加わるとモノゴトは一気に転がり始める」、
という逸話を思い出させもして、またもや勇気がわいてくるのです。


以上、父が体を張って僕に教えてくれた、
勇気が沸いてくる3つのお話を紹介させていただきました。

お金、仕事、生きがい。
そのどれもなくっても、生きていれば幸せ。

こんなに勇気の沸くメッセージをくれた父に感謝!

結果、僕の天然ぶりが父親譲りなことだけが暴露された気がして、
なんかトホホな話になっちゃいましたが、
僕のこの心が証明するとおり、父がどうあれ、子は父を愛するということも実感しており、
そんな内面を作ってくれた父には、もちろん母にも、改めて感謝なのです。


そう、父は酔っ払うといつもこう言っていました。

「なんだってやってみろ。失敗してもいいからやってみろ。
 で、やめたくなったらやめちまえ。
 でもひとつだけ約束だ。生きるのだけはやめるな。
 それはつまらない選択だ」

と。




そんなわけで、こんな父の子ですが、
皆さんにはなるべくご迷惑をおかけしないよう
妻に、家族に、手綱を引いて貰いながら、

「なんだってやってやろう」精神で、やっていきたいなーなんて思っております。
今後ともよろしくお願いいたします。


あ、父は生きてますからね、念のため。