最近、アメリカを始め、
海外の方とお話させていただく機会が多い。

仕事柄、当然ハリウッドの方が多いのだが、
ハリウッド=アメリカではなくなってきており、
ハリウッド人にはアメリカ人のほか、
インド人や中国人、フランス、イタリア、イスラエル、サウジアラビア、
ブラジル、メキシコなど様々な国籍の方がいらっしゃる。

話題の中心は映画やTVドラマになるわけだけど、
そこで気づいたことがある。

日本映画の暗さとアメリカハリウッド映画の明るさに
まつわる気づき。


日本人に映画を売り込むには
「感動」が必要だと海外の方の多くが言う。

その感動とはいわゆる「人間ドラマ」とか「生きる勇気」とかと
言われる、どっちかというとマイノリティや困ってる人に
スポットライトを当てる類の「感動」だったりする。

一方で、アメリカ市場は
「笑い」が重要なのだと言う。

コメディである。


これは映画館に期待される役割の違いから来ると
僕は理解した。

映画館は暗い。

そこでは日常では語れない、
より深い心の闇や真相を照らし出すのにいい暗さだ。

というのが日本における映画館の特性。


一方で、アメリカでも当然映画館は暗い。

その暗さはしかし、心理的な暗さとは関係がない。
この暗さはあくまでも「明るい映像」をより観やすくするための暗さだ。

毎日色んな矛盾やら分かり合えない関係なんかがあるけど、
笑いだったらみんなで盛り上がれる。
で、その笑いは、案外心の深いとこだったりとか社会問題なんかを
語る上でもとても親和性が高い。
その点で、コメディやパロディはきわめて社会的だし真理的だ。
なかなか日常ではこれで盛り上がれないから映画館で笑いあって盛り上がろう。


そんな雰囲気の違いを強く感じる。

映画館は暗い。そこは秘密が共有できる極めて私的でかつ公共的な空間。

そこで共有する秘密が、日本では「人間ドラマ感動もの」であり、
アメリカでは「コメディ&パロディで大爆笑、あ、もちろん幾分か涙があってもいい」ものになる。


ときに日本人はこのアメリカの特性を
「アメリカ人には心の襞や感情の機微といった繊細さが理解されない」とかいう。

僕もそう思う傾向があった。

が、アメリカ人もまたハードな日常を生きている。
そこでの処方箋は爆笑なのかもしれない。

そう思えた。


映画館で共有する秘密。

その秘密の暗さと明るさについて、
日本映画は暗く、アメリカ映画は明るく、韓国映画は暗さの先の明るさに行き着きつつある。


そんな配置を世界の映画人たちは考えている気がしている。