ポン・ジュノ監督の「母なる証明」を観た。

$cowvow's bowwow
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韓国を代表する人気俳優ウォン・ビンが兵役を終えての
復帰第一作だからとかいう理由を抜きにして、
これは間違いなくポン・ジュノ監督の現時点での最高傑作です。

そして2009年の僕の中でのベスト映画になる可能性がとっても高い。


ときどき映画を観ていて、
これならテレビでやればいいのに、とか思うことがある。

映画にしかない、

・とっても光の少ない、暗い画面がしっかり映る
・音がとってもでかく出せる
・知らない人が一緒に観る

といった稀有な環境を必要としない作品を観ると、
「ああ、これは映画に憧れてた人の作品なんだな」と
失望と共に思ってしまいます。

小説、というか文字、にしか出来ない表現、
音楽にしかできない表現、
写真(静止画)にしかできない表現、
絵画にしかできない表現、
ダンスにしかできない表現。

それぞれの手段を用いる必然性を感じる表現に触れると
深い説得力とともに、確かなメッセージを受け取り、
喋って伝わりきらないから、
こういうコミュニケーション手段を用いたんだなと
納得できます。

が、映画を撮ってみたかったから、という理由で作られた映画や
バンドがやりたい、楽器を弾いてみたいから、という理由で奏でられた音楽、
カメラが好きだからという理由で撮られた写真、
人に「あなた絵がうまいのね」と褒められたから描いてみた絵、
憧れのダンサーがいるので見よう見真似でやってみたダンス。

身内や友人でもない限り、
そういったものに触れると、しかもお金を払ってたりすると、
心から失望して、「頼む、家でやってくれ」と言いたくなります。

※身内や友人なら別ですよ。
 人前でやらないと上手くならないので、そこは相互扶助です。



そこをいくとこの「母なる証明」は映画でしか伝わらない
メッセージの連続です。

特に「真犯人」がつかまり、その人物があらわれるシーン。

その人物のぼやけた輪郭にカメラのフォーカスが少しずつ合っていき、
やがてフォーカスがジャストで合い、なにものか認識された瞬間。

筆舌につくしがたい、とはまさにこのこと。

この衝撃は映画でしか出ない。
その瞬間、椅子から転げ落ちそうな、
思わず「ああ」と映画館の誰もが無意識のうちに
言葉にならない吐息が口から出てしまうような、
どうにも処理しきれない感情が込み上げ、
とてもじゃないが処理しきれない、そんな過酷な体験を強いられる。

もはや、そんなとき、踊るしかないんじゃないかとすら思えてくる。

どうにも受け止めきれないことが確実な出来事に遭遇したとき、
どうすればいいのでしょう。

どうにもならない感情のせいで
もがくかのように体が勝手に動く。

はたからみると、それは踊りのようにみえる。

結果、踊るしかないという結論にいきつく。

それはまるで、
田中泯の体の動きのようでもある。

※田中泯についてはこちら

言葉に出来ない、
言葉では伝わらないし表現しきれない
複雑でシンプルな体験がこの映画には詰まっている。


「母なる証明」

必見です!!!


※どこぞで読んだ、角田光代さんのこの映画についての文章もまた、
 とっても秀逸でした。プロの仕事にプロが呼応する、素晴らしい相乗効果でした。

 ちなみに、ポン・ジュノ監督は黒澤清監督「トウキョウソナタ」から
 多くのインスピレーション受け、「母なる証明」完成のモチベーションを得たという。
 これまた素晴らしい呼応。

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