大学に入りたての1997年4月、

いつもより早く次の教室についた僕は

教室の後ろのほうに座って、

パラパラとベースマガジンをめくっていた。



入りたての音楽サークルで

偉いっぽい先輩から

「手がでかいからベースを弾け」と

言われたのでそうしたものの、

いまいちベースという楽器の楽しさが理解できず

とりあえず本でも読んでみるかと、

サークルの溜まり場においてあった

ベースマガジンを拝借して、パラパラとめくっていた。


新1年生は入学したてなので、

ずっと授業が同じ同級生ですらそれほど親しくはない。

親しくないけどまあ顔は見たことある、その程度の認識だったヤツが

「お、ベースマガジン」と言って話しかけてきた。

そうしてなんとなく音楽の話をした。


彼とはその後、大学の4年間を通して、最も長い時間を共にする友人となる。

彼とはよくお互いのCDを貸し借りしていたが、

彼が持ってくるCDはいわゆる日本の歌謡曲やらJ POPばかり。

とても音楽に詳しくて、洋楽も聞き倒しているのに、いつも彼のお勧めは日本の音楽だった。


なかでも彼のお勧めはsmap。あのジャニーズのsmapのアルバム。

先入観たっぷりの僕は、なめてんのかな、と思ったが、

実際に聞いてみるとリズム隊がめちゃくちゃかっこいい曲が多い。

ベースを弾き始めた僕は大いに影響され、コピーしまくった。


smapのアルバムを一通り聞き終え、ベースラインもなんとなく色々コピーしてみて、

こんなもんかなーと思ったころ、

彼が新しく貸してくれたアルバム、それがマイケル・ジャクソンだった。


それまでももちろん、マイケル・ジャクソンのことは知っていた。

しかし、彼がマイケル・ジャクソンのベストアルバムをかばんから取り出して

僕によこしたとき、そのとき初めて僕は「ミュージシャン マイケル・ジャクソン」と出会った。


マイケル・ジャクソンのダンスはドラムよりもベースを感じて踊っている。

ボーカルという最もベースから遠いと思っていた存在、

それも世界のキング・オブ・ボーカル、マイケル・ジャクソンが

明らかにベースを感じて歌っているノリを耳にして、

僕はベースという楽器こそPOPSの中核を担う楽器であることを知った。


サークルの先輩に言われて、なんとなくはじめたベースだったが、

細々とでも続けてこられたのはマイケル・ジャクソンがいたからだと心から思う。



ありがとう、マイケル・ジャクソン。