■3章:遍路3周目■深まる絆

                            2. 嵐はやってくる​

 

DAY74-3

 

皆「遍路中に離婚を決めたーーー!!???」

 

 

夫婦奥さん「いやいやいや!!心配しないで下さい!いい形で話を決めたので。」

私「いい形の離婚?」

夫婦旦那「僕達は、別に喧嘩をしてて遍路に来たわけじゃないんですよ。普通に話し合って、行ってみようかって。」

夫婦奥さん「そうそう。子供を二人育てて、手もあいたから行ってみようかって。」

私「それが、なんで離婚になるんですか?ってか、それただの話?それとも真面目に言ってます?」

夫婦旦那「大真面目です。」

夫婦奥さん「そうよ。これは、決定と言うより確定なの。」

私「えー!離婚確定してて、ここからだともう少し結願まであるでしょ。なんで一緒に歩いてるんですか?離婚確定してるほどなら、一緒には歩きたくないでしょ。」

夫婦奥さん「それが、一緒に普通にお遍路にやって来て、歩き出してみたら、遍路って自分の体力の限界まで闘うし、重たい荷物も持ってるし、大変でしょ?」

私「大変です。もう、素じゃないとやっていけないですよね。相手に気を使えるところも、もう使えなくなるし。」

夫婦旦那「そうそう。それで、お互いの素が出っぱなしで。」

夫婦奥さん「普段の生活なら、お互いになんとなく気を使い合って、隠せると言うか我慢すると言うか、それができるんだけど、遍路やってるとできないでしょ。」

私「自分の体力と闘わなければいけないですからね。普段のようには全く行きませんよ。本当の素がぶつかり合うことになりますよね。」

夫婦奥さん「それで、歩き始めてみたら、お互いに全く合わなくて!」

夫婦旦那「そう!本当に、これでもかってくらい合わなくて。」

私「じゃあ、喧嘩しっぱなしですか?」

夫婦奥さん「うん。最初の頃は、ぶつかり合ってたんだけど、あまりにも合わないから、二人で話し合ったのよ。」

夫婦旦那「俺たちって、実は、こんなに合わなかったんだねって。」

夫婦奥さん「そう。これまでは、お互い子供を育てることが必死だったから、私たちの関係性に目を向けることもなくて、これまでの普段の生活の中だけでは気づけなかったけど、お遍路は究極の状態に置かれるから、それが丸見えで。」

夫婦旦那「それで俺達は離婚を決めたんだよ。」

私「えーー!!かたや、遍路中に田宮君達のようにカップルになる人達もいれば、離婚を決める夫婦もいるんだー!」

 

二人は見たところ、特に喧嘩をしていて嫌悪感を出し合っている雰囲気では全くないのだ。むしろ、この楽しい場を二人とも楽しんでいる様子で、遍路中にまさか離婚を決めた二人には見えない。

 

夫婦奥さん「それが、若かったら、もう少しやり直そうとかって事も話し合ったかもしれないんだけど、私達もいい加減いい歳だし、考えてる時間がお互い勿体ないねってなって、即離婚って事にしたの。悪い意味じゃないの。むしろ遍路をやって、私達がこんなに合わないって事が早くわかってよかったねって。」

夫婦旦那「そうそう。だから、これから残された時間を無駄にしないように、むしろ別れようって。別れて、残りの人生をお互いに楽しもうってことにしたんだよ。だから、それに気付かせてくれた遍路は本当に来てみて良かったよ。」

私「えー!そんな状態でよく一緒に歩けますねえ!」

夫婦奥さん「それが、歩けるの。話し合うまでは、ほんと、3秒ごとかって程、ぶつかり合ってたんだけど、話し合って離婚を決めた時に、そうは言っても長年連れ添って一緒にやって来たんだから、このお遍路だけは、離婚前の最後の思い出の旅にしようって事になって、最後まで一緒に行くことにしたの。」

私「へー!だから、一緒に歩いてるんですねえ!」

夫婦旦那「そう。まあ、これで最後かと思えば許せることも出て来て、楽しくもなったしね。」

夫婦奥さん「そう。まあ、時々喧嘩にはなるけど、もう、本当にこれが最後だから。このお遍路だけは、最後まで一緒に楽しもうと思ってるわよ。」

私「でも、そうは言っても、自宅に帰って、色々整理することもあるだろうし、しばらくは一緒にいるんですよね?」

夫婦奥さん「いや。いないわよ!帰ったら、1週間程、荷物整理をして、離婚届は、その時に持って行こうって事になってるから。」

夫婦旦那「そうそう。だから、一緒に居るのは、1週間くらいかな?」

私「えーーー!!もう、そこまで決めてるんですねえ!これ、本気ですね。」

夫婦「そう、本気だよ!」

 

そして夫婦二人は顔を見合わせる。

夫婦奥さん「ね。だから、もうちょっとだけど、楽しみたいもんねえ。」

夫婦旦那「そうだよね。」

 

夫婦とは、長年連れ添っても最後、こんな形で別れる場合もあるのかと思った。

ただ、遍路は、体力的にも精神的にも究極な状況に置かれるので、合う合わないが露骨に出るから、お互いを知るには、わかりやすいのかもしれないとも思った。

せっちゃんと私にしても、普段、せっちゃんに勝手なことをされて、我慢して許したとしても、1周目に一緒に遍路を回った時は、暑さでやられて、やはり体力的に限界だった私は、せっちゃんを許す許さないと言うよりも、現実的に相手にするのは無理があったのを思い出す。

 

その後も皆和気あいあいと宴会は進んだ。

 

ゴンちゃん「お前、明日もおるやろ?」

私「明日は、博士とおか泉にうどんを食べに行こうって事にはなってるよ。」

ゴンちゃん「それに社長と奥さんにもゆっくりしていけ言われてんねんから。」

私「うん。わかってるよ。だから、とりあえず、明日はいるよ。でも、あんまり出発が遅いと11月25日の高ちゃんの49日までに戻ってこれなくなるし、寒くなり過ぎるから。」

 

今日は、もう11月1日だ。

 

ゴンちゃん「まあ、それもそやけど、とりあえず明日はおんねんな?」

私「うん。」

ゴンちゃん「そしたら、明日も夜、宴会しよな!」

私「わかったー!」

 

私達は、それぞれ遍路小屋に戻って寝る。

確かに前回、松山の杖ノ淵公園でゴンちゃんが歩いて戻って来て、私に会いに来た時、ゴンちゃんを突っぱねて、私はゴンちゃんの話を聞かなかった。

ゴンちゃんは、きっとあの時の話をしたいのではないだろうかと感じる。

私としては、友達のままでいてほしいから、話す話はないのだけど、あの時に今度は聞いてあげると約束をした。

一度だけは、話を聞いてあげないといけないとは思う。

ただ、あまりゴンちゃんとの距離を縮めない方がいいと直感で感じてはいた。

 

DAY75-1

 

朝、遍路小屋で起きてみると生憎の雨だ。

離婚を決めている夫婦も起きだして、早くに出発して行った。

田宮君カップルも、流石にここに2泊したので出発するとかで、荷物を整えている。

 

田宮君「じゃあ、そろそろ僕達行きます!」

私「そう!楽しかったよ!」

田宮君「いやいや!こちらこそ本当に楽しかったです!まだ出発したくないくらいですもん!ははは!」

彼女「本当に!まだまだいたいです!お好み焼きもありがとうございました!今度、広島で絶対食べますね!」

私「うん!絶対食べて!楽しかったよ!ありがとう!」

 

田宮君カップルは出発して行った。

それと入れ替わりに、福岡から来ている歩き遍路の男の子が、今日、宿泊したいと言ってやって来た。

 

私「あ、今日、雨だし大変だよね。」

男の子「そうなんですよ。時間はまだ早いけど、雨だから、ちょっと泊まらせてもらおうかなと思って。」

私「うん。それがいいと思うよ!」

男の子「ちょっと、段々寒くなって来て、雨が降ってると余計に寒いし濡れるし。」

私「そうだよね。あ、今日、お昼ご飯に、私が行きたいおか泉ってうどん屋さんに、うどんに詳しいうどん博士と行くことになってるんだけど、一緒に行く?」

男の子「えー!行っていいんですか!行きます!」

 

しばらくすると博士がやって来た。

 

私「あ、博士!この人もうどん一緒に行きたいって!」

男の子「お願いします!」

 

つづく・・・   

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