■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる

                1. 付き人との遍路珍道中

 

DAY69-1

 

いつものように朝5時きっかりに沢村さんがテント内で寝ている私にかける声で目覚める。

 

「Noisy、コーヒー入りました。」

 

私は、テントから出て、沢村さんが入れてくれたコーヒーを飲みながら、沢村さんとの最後の朝をまったりと過ごす。

 

沢村さん「じゃあ、この後、横峰寺行って、その後に桜三里の峠の頂上まで連れて行ったらいいん?」

私「うん。桜三里の峠の頂上からは、一人で行くから。」

 

沢村さんは、もうすぐお別れが近づいているからなのか、どことなく寂しそうだ。

ただ、この人は、寂しさをかき消したいかのように、喋り続ける。

テントなども片付けて、朝6時半には60番横峰寺へ向けて、前神寺裏の東屋を出発する。

昨日、一旦、横峰寺の登山道まで折角行ったのに、不思議にも何故か気が変わり降りてしまったので、もう一度、登山道入り口まで向かう。

 

沢村さん「あ、今日は、ちょっと行くとこがあるきん、僕は横峰寺に上らんよ。」

私「え?なんで?いつも一緒に行くじゃん。それに、何のようがあるの?こんな所で。しかも今更。」

沢村さん「いやあ。あるんですよ。ちょっと。」

私「え?最後の寺だから、一緒に行ったらいいでしょー!」

沢村さん「いや、ちょっと行ってこなあかんとこがあるから、行けんきん。」

私「沢村さんに、用なんてないでしょう!?」

沢村さん「えーーーー!!僕だって、用くらいあるわなあ!」

私「はははは!!わかった。じゃあ、一人で行ってくるから。1時間半あったら、上から降りてこれると思うよ。」

沢村さん「とにかく、迎えには来るきん。」

私「わかった!」

 

それにしても、折角昨日お風呂に入ったと言うのに、どことなくまだ臭い。

臭いが軽トラ内にまだ残っているのだろうか?

それとも、沢村さん自体よりも、服が臭いのかもしれない。

 

60番横峰寺の登山道入り口で、沢村さんに降ろしてもらうと、沢村さんはあっという間に走り去って行った。

私は、山道を登り始める。

朝の空気は気持ちよく、涼しくなっていることもあり、爽快な気分で上って行く。

これ以上つけられないだろうと言う程、有り余る体力で駆け上がるように上へと向かう。

もう、今の私にとっては、これくらいの山は、きついと言うより、身体を動かすことが心地よい以外の何物でもなかった。

 

横峰寺へ到着して、お参りを済ませ、沢村さんを登山道入り口で長い事待たせるといけないと思い、直ぐに下山を開始する。

朝一の山には、誰もいない。

山の中にただ一人、私だけが参道を歩いて下っているだけだ。

歩いているとは言え、下りだし、体力に余裕のある私は、気持ちよく歌を歌い始めた。

誰もいない山に私の声が鳴り響く。

 

歌っているのは、ヘビーメタルのバラード類。

 

“Remember yesterday~, walking hand in hand🎵

Love letters in the sand, I remember you🎵“

 

もはや、ステージで歌っていた時と同じ音量で、歌い上げる。

 

“Through the sleepless nights through every endless day~♪

I'd want to hear you say~♪, I remember you~♪ oh~~~~♪ oh~~~~♪“

 

すると突然、下から大きな声がした。

 

声「Noisy~~~~!!!Noisy~~~~~!!!うわ~~~~!!奇跡だ~~~!!」

 

ん?

私は歌うのを止め、声のする方を目で追って探してみる。

その声は、かなり興奮している。

 

声「Noisy~~~~~!!!会いたかったです~~~~!!ずっと、探してました~~~~!!」

 

え?

ずっと探していた?

声は、何かのドラマかという程に感極まっている。

よく見ると、二人の青年遍路が山道を登って来ているのが見えた。

二人の内の一人が必死で叫んでいると思ったら、いきなり私を目掛けて走って上がって来た。

その青年は、般若心経がプリントされた手拭いでほっかむりをしている。

近くに寄って来て彼を見ると、確かにどこかで会ったことのある人なことに間違いはないし、顔もはっきりと覚えているのだが、「こんなお遍路さんいたっけ?」と、何処で会った人なのかも定かではない。

 

私「おお~~~!!」

青年「僕、ずーっとNoisyを探してました!」

私「え?そうなの?」

青年「はい!僕は、お遍路しながら、Noisyを探す旅でした。まさか、会えるなんて!!すっごい嬉しいです!」

 

彼の目は、興奮と喜びに満ち溢れ、まるで奇跡でも起きたかのような表情だ。

 

私「え?私を探してた?」

青年「はい!僕は、Noisyを探すためにお遍路に出てきました!ずっとずっと周りながら、無理だと思いながら、探してました!」

私「ってか・・・。ごめん!あなたの顔は、はっきりと覚えてるんだけど・・・。でも、私、こんな遍路に会った覚えがないんだけど・・・。」

青年「はい!だって、前に会った時、僕は遍路じゃなかったですもん!」

 

私は、じゃあ一体どこで会った人なのか不思議に思っていると、彼は即座に頭に巻いていた手拭いをパーッと取りながら、真っすぐな声で答える。

 

「僕は、自転車で日本一周してて、Noisyがお遍路中に琴弾公園で会った、福岡の山森翔太です!」

私「あーーーーーー!!!翔ちゃん!!!」

 

彼は、ようやく私に気付いてもらえたことが嬉しいのか飛び跳ねんばかりの喜びようだ!

翔ちゃんは、日本一周自転車の旅は寂しいだけだったから、「明日には絶対に福岡へ帰る!」と言って、帰って行った青年だ。

私が、ついでにお遍路をしていけと言ったのに、その時は寂しすぎてとにかく帰りたいと。

別れ際にも、「僕は、また縁がある人には必ずどこかで会えると思っているので、あえてNoisyの連絡先は聞かない。」と言って去って行った人だ。

 

私「えーーーー!!???でも、なんで、探してたの?」

翔ちゃん「実は、あの後、僕は真っすぐに福岡に帰ったんですよ。1日の内に松山に着いて船で。」

私「うん。」

 

もう一人の青年も追いついて来て隣に並んで興奮している翔ちゃんの話を聞いている。

 

翔ちゃん「それで、家に帰って10日ほど、ボーっとしてたら、突然、しまった!と思って。」

私「何を?」

翔ちゃん「僕、日本一周してて、寂しいだけだったって言ってたじゃないですか。」

私「そうねえ。」

翔ちゃん「それで、その長い日本一周の旅の間に出会った人で、お世話になった人も多少はいるけど、でも、僕に影響を与えてくれるような人には、会わなくて、それでNoisyは、僕に色んな影響を与えてくれていたことに気が付いたんですよ!」

私「ほう!マジか!」

翔ちゃん「それで、しまった!なんで、たった一人、僕に影響を与えてくれたような人、ましてや人生でもそんなに影響を与えてくれる人はいないのに、そんな人の連絡先を聞かないで帰って来ちゃったんだろうって後悔して。で、福岡に帰って来て、まだ10日程だったんで、旅の荷物をあまりばらしてなかったから、直ぐに旅支度を整え直して、翌日に家を飛び出すようにお遍路に出て来たんですよ。」

私「へ~~~!そうだったんだね!」

翔ちゃん「あの時、Noisyは遍路も終わりごろの香川県で会ってたし、Noisyもお遍路終わったら、広島へ帰ってしまうだろうし、絶対に会う事はできないだろうって思いながら、やって来て。でも、諦められなくて、もしかして!万が一!2周してたら!!なんて、あり得ない希望を持って、ずっとずっと周りながら、あちこちのお遍路ノートとか、お札とかを見て回ったりして、どこかに通った形跡はないかなって。で、人に聞いたりもして。もう、お遍路も愛媛県のこんなとこまで来てしまったし、Noisyには会えないかなって思いかけてたんですよ。いやーーー!!!でも、諦めなくてよかった!!すっごい嬉しいです!本当に!本当に!これは、奇跡の再会です!」

 

 

私「いやーーー!!ほんとだねーーー!!すごいーーーー!!私は、何故か2周目に行くことになって、しかも本当は、昨日荷物を入れ替えに広島に帰ってるはずだったんだよ。でも諸事情で1日だけ、日にちが伸びて、その理由でここにいるんだよ。偶然。」

翔ちゃん「えーーーー!!昨日、一旦帰る予定だったんですねーー!!帰ってたら、本当に会えなかった!!」

 

ふと、隣に立っていた青年が口を挟む。

 

青年「いやー。これは、奇跡だわあ。Noisyさんの事を聞かされてて、絶対、そんなの無理だろって正直思ってたけど、こんなことあるんだあ!感動したわあ!」

翔ちゃん「あ。Noisy!」

 

翔ちゃんは、改めて直立の姿勢で輝いた眼をしてハキハキと言う。

 

翔ちゃん「今度こそ、Noisyの連絡先を聞きます!Noisyの連絡先を下に僕の自転車が止めてあるんで、フロントバッグに入れておいて下さい!」

私「うん!わかった!」

翔ちゃん「僕の自転車わかりますよね?」

私「うん。わかるよ。あ、じゃあ、翔ちゃん。折角、私の影響でお遍路にも来たなら、ぜひ、結願するときはお祝いを言いたいから、高野山から電話して!」

翔ちゃん「わかりました!絶対に、連絡します!」

 

私達はそう言って、大きく手を振って意気揚々と別れた。

本当に運命は不思議だ。

あの時、もう2度と会わないだろうと思っていた連絡先も知らない人。

私の知らない間に、私を探し続ける青年。

私が2周目に行かなかったら、そもそも今日ここで会う事もなかったはずだ。

そして、直ちゃん、とんちゃんからお願いをされ、1日伸ばし、更にここ横峰寺も打つことになったものの、何故か不思議にも昨日、参道入り口まで来たにもかかわらず、降りて行ってしまい、今朝、ここへ上ることにしたこと。

その偶然の全てが、今日ここで奇跡の再会を果たすことになろうとは。

昨日、急に何故だか、私をこの横峰の参道入り口から遠ざけて、わざわざ今朝またここを上らせたのは、翔ちゃんの強い思いが届いていたのかもしれない。

 

それにしても嬉しい。

まさか、私などの事を、ずっとずっと探しながらお遍路をしてくれていたなんて。

つづく・・・   

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