社長が倒れてからは

とにかく、大変、の一言に尽きた。


新しいブランドの立ち上げが控えていたし、

そのお披露目もあった。

何より、舵を取る社長がこんなことになり、

社内には

とにかく動揺が広がらないように

箝口令が敷かれた。


対外的なものはどうにかなる。

でも、担架で運ばれた社長を見た、

本社の社員はあきらかに動揺していた。

運ばれたきり、社長は出社なさらないのだから。



各部署に行くたび、秘書のわたしに

あれやこれやとこっそり社長の様子を聞いてくる。



過労だ、ということにしていたが

それもいい加減無理がある。




社長が倒れてから

わたしは毎日病室に出向いた。



場所が病室になっただけ。

そう思って、毎日日報を持ち

眠っている社長の耳元で

報告を続ける。



付き添う奥様がわたしに


あなたのことをいつも言ってましたよ。

犬みたいな子だと。

忠実で、一生懸命で、楽しみだ、って。



わたしは涙が溢れてきた。

そういえば、、、

O課長も、わたしを犬みたいだ、って

言っていたな、、


奥様に


未経験で、右も左も分からず飛び込んだわたしを
社長は拾ってくださいました。

絶対に社長の意識は戻ります。
わたしは信じています。




奥様と手を取って泣いた。



負けないで、社長。

社員みんながあなたを待っています。