僕は当時21歳。
バンドで飯を食っていく!とでかい口を叩き
大都会、東京にでてきた。
小さいころから飽き性で、続いたことといえば
ギターだけ。
地元では、歌にもギターにも定評があり
その変な自信が僕をここ東京につれてきた。
同居していたのは、カナ(バレるため偽名)。
彼女も同い年で、ギターとともに東京にきた。
カナは、見た目の可愛さはもちろん
優しくて、おっとりしていて。
でもそんな見た目とは裏腹に、決めたことは
最後まできちんとやり通し、決断も早く、
いいたいことは立場関係なくはっきり言う。
そんな人だった。
カナと出会ったのは東京にでてきてすぐ。
僕の家の近くにあるライブハウスで
最近人気のシンガーソングライターがいるから
行こうと友人に誘われて行った時のことだった。
まだ照明のついていないステージ。
「こんばんは、カナです、今日も楽しんでいきましょう!!」
暗闇に響き渡る声に、僕は一瞬で心を奪われた。
パチン!
♪〜♪〜
「うぉおおー!」
ステージにライトが照らされた瞬間
待ってましたと言わんばかりに叫ぶ観客。
僕は声も出なかった。
か、可愛い。
そしてなにより、透き通った声。
身体に電気が走る感覚を今でも覚えている。
ライブが終わり、裏口でカナの出待ちをする
ファンたちにまじり俺もそこにいた。
お疲れ様、だけでも言えないか。
ガチャ
ドアがあくと、カナとバンドのメンバーが
出てきた。控えめに一番後ろを歩くカナ。
男のファンが1人、カナに近寄っていった。
「これ俺の連絡先、よかったら...」
「連絡しないと思うので、すみません。気持ちだけ受けとります、ありがとう(^^)」
惨敗。といったところだろうか。
続いて、大学生風の女2人組がカナに差し入れを渡している。
「これ、カナちゃんの好きなアイスです!ハーゲンダッツの新作なんですー!すごい素敵でした!」
「えぇー!ほんとですか!?すごい嬉しい(^^)帰る前に食べちゃいそうです(笑)」
あぁ、なるほど。
「次のライブもぜったい行きます!」
「じゃあアイスのお礼にチケット代は次回いらないからね!ありがとう(^^)」
カナのファン層が老若男女全体にいる理由がわかった。
男に媚びず、ファンを大事にし、そして
(^^)←これ!!だ!!
笑い声こそ独特だが、それも可愛く思えちゃうくらいのビッグスマイル。
あぁーおれ声かけれねぇなぁ。
その日結局友人とそのまま、近くの安い居酒屋に直行。
ちゃっかりライブハウスに戻って、店長にカナの次回のライブ予定を聞いていたことは友人に内緒にした。
次は1人で行って絶対声かける!
そう勝手に誓いを立てたおかげで、いい酒が飲めた。