下の様に今頃になって過去のことを引っ張り出して来ているのは、最近余りネタがないからである。と言いながらもCDは買ったりした。以前購入出来なかった、IONAの過去の作品だ。"Journey Into The Morn"。IONAの作品はDave Bainbridgeの強烈な凝り性と妥協の無い音作り、そしてメンバー個々の実力から余り辛く批評されることは少なく、大概はそれなりの評価を得ている。1つのアルバムに莫大な時間が掛かっているので、そりゃそうだけども、それでも好評を得続けることは難しいと思うけどね。そんな中でもとりわけ評価の高いのが"Journey Into The Morn"。彼らの4thアルバムだ。3rdに続いて今回もRobert Fripp(ex.King Crimson)がゲスト参加していて、また、Maire Brennan(ex.Clannad)といったIrish Musicでは有名な歌手もゲスト参加している。


最近はこれを家で聴いている。と言っても、CDをとっかえひっかえしながら日々暮らしているもんだから、聴き込むという所まで聴き込めている訳ではないかな、まだ。サラッと触れておく。


1.BI-SE I MO SHUIL - PARTⅠはIONAらしいイントロダクション。

2. Irish DayはとてもポップなJoanneの声が温かみのある曲。これは間違いなく人気がある曲だろうね。秀作の歌もの。

3. Wisdomも温かみが強調されている。この手の楽曲は一部ではIONA節とも呼ばれているね。ポップな楽曲が好みの人はこの辺から入ると割とすんなり聴けるんじゃないだろうか。

4. Everything ChangesはMaire Brennanのコーラスがミステリアス。イージーリスニングなどでも時折取り入れられそうな曲だ。バックの透明感のあるシンセの他はベースラインとドラムが際立ち、Joanne, Maireのヴォーカルが最前面に立つ。アルバム全編を聴いているとこの曲だけ他とどこか違うことに気付くだろう。兎に角、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。だけど親しみやすい。個人的にはIONAの楽曲の中でも他との違いが表れていて愛聴している。

5. Inside My HeartとIONAらしいアコースティックな導入から楽曲に突入する。同じアコースティック主体でも2&3のような温かみを感じさせるというよりはもっと透明感のある美しさがある。"Inside My Heart"の後半ではDaveのギターソロが存分に聴ける。ギターのトーンやラインが非常にDaveらしい。ソロに入ると同時にシンフォニックな味付けへと楽曲が移行する。

6.Encirclingは大作。11分38秒の"LORICA","TARA","CAIM"と続く3部構成となっている。中間部分では嵐のようなDave Bainbridgeソロが顔を出す。"Encircling"でのソロは"Inside My Heart"でのそれよりも長い。最初から最後までバックではアンビエント系のシンセが鳴っているが、しっかりと3部構成されていることが聴けば分かる。一番聴き応えのある楽曲ではないだろうか。

7. Jouney Into The Mornでのホイッスルとハープのメロディは神聖な雰囲気を醸し出す。「歌もの」ではあるが此処では歌はやや引き、ホイッスルとハープのメロディが前面に出ている。

8.Lindisfarneで7の雰囲気を引き継いだまま、音はシンセサイザーのものへ変わる。7とは違いしっかり歌主体となっている。

9.No Heart Beatsで再び馴染み易いポップ感を織り交ぜている。2・3のように温かみを強調するものではないが、聴きやすさ・馴染みやすさという点でかなり近いものがある。

10. The Searchではシンセバックでホイッスルが大きくクローズアップされるインストゥルメンタル。7の"Jouney Into The Morn"とは性質として近いものがあると言えるのではないか。1や7と同じく2分台の短い曲で次の章への繋ぎとなる曲のようにも感じられる。

11.Divine Presenceで繊細なギターアルペジオと共に様々な音が波紋のような広がりを持たせている。全体的に静かな印象のアルバムだが、その中でも静かな印象を持たせる。

12.Heaven Blight The Sunは4と同じくこのアルバムの中の曲ではやや異色。出だしから大音量のシンセが顔を出し、静かなというよりは巻き込まれていくようなサウンドメイキングがなされている。静と動のコントラストが鮮明で、静の部分で時折顔を出すホイッスル・パイプで気をひき、その後男声コーラスらしき音と共に再び動のシーンへと繋がっていく。再びパイプが出てくれば、盛り上がりに達しているだろう。

13は"BI-SE I MO SHUIL-PART2"。1でのメロディを持ちながらフィドルでの循環は正にアイリッシュ。そこからギターソロへと続く。比較的短い曲と言えるかもしれない。

14. When I Surveyはととてもとても有名なある宗教曲によく似ている気がする。意識して作られたものである可能性も高い。美声の女性ヴォーカルが居るという武器を最大限に引き立たせる演出。


Iona
Journey into the Morn

アルバム全体の構成としては、ポップで聴きやすい歌ものから入り、6の大作"Encircling"を軸として再び聴きやすいもの、今度はヴォーカルの歌唱力を強調したところで締めるといったところか。曲によれば構成が複雑なものがあるが、どちらかと言うと女性ヴォーカルを引き立たせることに成功したものとなっているように思う。


余談だが、ブックレットにDaveの人となりを知ることが出来るエピソードが書かれていて、妙に興味深かった。つくづくこの人は出来た人なのだと、話を聞く度に思わされる。