結構長く引っ張ってしまったけれど、とりあえず感想。


「ベストオブベスト!!」と某ゲーム雑誌記者がこの作品について書いていたような気がしますが、個人的にはそこまで言うほどのものではなかったです。…と書くといきなり否定的に見えますが、そういう訳ではありません。諸手を挙げて賞賛出来るものではなかったというだけです。


[全体]

全体的に見て、余りストーリーを語る余裕が無く、激しいアクションをひたすら見せ続けるといったものになってしまっている。そういう意味では失敗なのかもしれない。緊張感で張り詰めた映像というよりも、緊張しなければアクションに目が追いつかない映像。逆に言うとアクションが多くて退屈にはならない映像。良くもあり、悪くもある。


[ストーリー]

アクションで埋もれてしまったストーリーに関しても決して内容的に深いものではない。だから見終わった時に物足りなさを感じるのだと思う。映画として見るならば若干要素不足かも。


◆メッセージ

ストーリーは過去を引き摺りヘタレてしまったクラウドが仲間達の協力を得て立ち直ると言う話。最後のシーンでのクラウドの「俺は一人じゃない。」は正にそれが集約されている。(このシーンなんかは野村氏らしい気がする。こういうシーン、彼の手がけた他のゲームでも見たことがあるぞ…。)だからこの映像のぶつけたいメッセージというのはそれ以外の何者でもないだろう。


◆展開

勧善懲悪的展開。ジェノヴァが悪でライフストリームが善な訳ですな。劇中でも語られている通りジェノヴァは星とそこに住む生命(これらは設定上一つのものとして括れる。)に対して「天より降りし忌まわしきもの」であり、「邪悪な物質」である。何故ならばそれらは星を死滅させるものであるから、だ。要するに星や生命は自らを防衛する為に戦う。しかし、ジェノヴァサイドを見てみると何故星を死滅させ、宇宙を旅するのかという動機付けが分からない。これに関してはFF7でも言えたことなのかもしれないが、ジェノヴァはあくまで"Unknown"の「害」として存在するので、詳細がよく分からない。だからジェノヴァは物言わぬ存在だ。そういう意味ではやはり物足りなさがある。もっと邪な動機付け欲しい。ただ、そうすることによって勧善懲悪的展開は出来易くなるということはある。敵が"Unknown"だから感情移入の余地は無くなる。


この二つの要素からストーリーとしては分かり易いものであると言えるかもしれない。ただ、最初台詞を聴いた時に「??」となった箇所は幾つかあるので、そこだけは述べておく。先に書いたように、悪くはないんだけど深くは無く、物足りなさも感じる。この作品はFF7では何とも取れないようなエンディング部分の穴埋めをする為に作られたというような背景があるのかもしれない。そのせいか、今回のエピソードでは特に最後のエアリスの描写がとても良かったように思う。先に亡くなった「初恋の人」であるザックスとエアリスが共に居て、クラウドはティファや孤児達と暮らす、そんなハッピーエンドになっている。ストーリー面での重要な描写はエンディングにある。


[アクション]

この映像作品は大半がアクションになっている。先に書いたようにもう少し余裕があれば良かったのだが。逆に言うとアクションが大半を占めているからこそ、メッセージを絞り展開を分かり易くし、シーンを幾つか見逃し聴き逃しても最後で「ホッ」と息をつけるような仕組みにしてあるのかもしれない。その辺は何とも言えないものがある。


CGアニメーションなだけあってとんでもないアングルから見せ、とんでもない激しいアクションになっている。それこそ緊張していないと目がついていかなくなるくらい激しい。めまぐるしい動きにただただ圧倒される。ただし、殴りあったり、放電されたり、銃弾が撃ち込まれたり、刀が刺さったりしても出血や跡形が全く残らないのは何ともならないことなのかなぁ(?)と。跡形が厄介でもせめて出血シーンはもっとあっても良いのではないかと思いました。ドラゴンボールみたいに、ではないですが、激しいバトルムービーだからこそ出血とか傷を描く必要があるのではないかと。


[BGM]

今回のBGMに関してはいささか不満がある所もある。というのは、曲がどうこうといったことではなくて、曲を入れる所の問題。全編通してみて、BGMが必要ではない所に音楽が入ってしまっている感じがあった。後半部分には特に見当たらないが、前半、特に教会の花畑でクラウド・ティファの二人が共に倒れてしまうシーン、そして、忘らるる都の泉に携帯電話が落ちていくシーン。この二つにはBGMは必要なかったと思う。更に全体がコーラス系、ピアノ系、オケ系、へヴィ系で音楽が成り立っているのに、この二つのシーンではかなりシンセっぽい音のBGMなので、どうしても浮いてしまう。植松氏は10の時の話で「音楽を引かせた方がいいシーンもある。」というような発言をしていて、俺も「成る程、確かに。」と思っていたので、今回このように音楽がやや出ずっぱりになるのは納得いかない。恐らくエディターの問題なのだと思われるが…。


曲に関してはセフィロスコーラスも好きだし、メニュー画面でのコーラスもいい。温かみのあるピアノ曲も良かったと思う。だから音楽に関してではなくて、その楽曲群の使い方に関して不満があった、と言った方が正しいと思う。


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この映像作品を見ていて、想起させられたのが、あのFINAL FANTASY映画の大失敗でした。正直言って、あの作品の題は"FINAL FANTASY"でなくても良かったと思うんですがね、俺は。「根底に流れているものが"FINAL FANTASY"なんだ。」という話がありましたが、正直言って設定が製作当時大ヒットを記録していたFF7と近いというだけな気がするんですがね。あの映画はフルCGなのだけども、設定や世界、メッセージに囚われ過ぎて説明臭いだけの映画になってしまった。フルCGなのにその特性=アクションなどを効果的に入れることが出来なかった。しかも静的な画ならCGを使うよりも実写でやった方が表情は豊かだ。個人的には別に嫌いな訳ではないですが、一般的にはSFオタ&CGオタの作ったとても退屈な映画と捉えられているんじゃないかと思います。


今回の"Advent Children"はその失敗の上に成り立っていて、めまぐるしいアクションで退屈を与えない映像になってはいる。やたらに設定・世界を語らず、比較的単純なストーリーラインの元に成り立っている。ある意味真逆をやっている気がします。今回のCGを見てもただリアルを追求するというよりも、アニメーション的に描かれていて、言ってみればスクエニタッチのCGのアニメーションと言う感じ。その路線は結構好きですよ。俺は寧ろそちらを希望します。写真が発明されてから写実的な画が余り見られなくなったように、実写で出来ることは実写ですればいい。3DCGでしか出せない質感とかそういうものを大切にすればいい。ただ、今回も映像としては諸手を挙げて「万々歳!!」と出来るものではなかったけども、映画のように大失敗をすることはないでしょう。俺もこの作品面白くないなんて全然思いませんし。実際今までに3回も見ましたし。これからも何回か見るでしょうし。


↓通常版っていつ発売だったっけ??

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン (通常版)