より新しいものを。そう求める人は、今更十数年前の作品を振り返るというのは、ナンセンスだと思われるかもしれない。また、あるいは今更名盤とされている"I&W"のことを書くなよ、と思われるかもしれない。しかし、このブログは新しいものをひたすらに追い求めるのではなく、古い新しいを抜きにして日々視聴するものを記事にしていくブログなので、今更ながら書いてみる。というか、恐らくそれしかブログを書き続ける方法は俺には残っていない。しかし、DTに関しては完全に後追いファンになってしまった。つい3年ほど前には名前すら知らなかったグループなのだ。如何に当時の自分の世界が狭かったかを思い知るようだ。そして、今でも次々に新鮮なものを手にすることが出来ると言うのは、逆を言ってしまえば、今尚俺の視界は非常に狭いものでしかないということになる。


DTに関しては知人の数人が良いと言っていたので、気になって聴いてみたという感じだった。その時の最新盤が7thのTrain Of Thoughtで、このアルバムについても過去に記事にしている。「ああ、こういう感じなんだ。」、すっと聴き流すだけに終わるかと思いきやそうはいかなかった。これが「スルメアルバム」足る所以だろう。いつの間にやら愛聴するようになっていた。そう、こういう「スルメ」を多分求めていたんだろう。次々に新しいものが出て垂れ流しのようになっている中で、長期間聴ける良いもの。路線としては賛否両論だったようだが、個人的には悪くはなかった。確かに弾き過ぎ感はあったが。それから他のアルバムも聴いてみて、今度発売される(現在発売中の)8thに期待を寄せていた。発売と同時に購入。その感動は過去記事を見て貰えば分かって頂けるだろう。特に#8タイトル曲には即効で完全にやられた。特に10分を超える大作の#7と#8が良い。


Dream Theater
Images and Words

先日超名盤とされる"Images And Words"(…と"A Change Of Seasons"も)を手に入れた。1st、4th、7th、8thは聴いているというのに、代表作に全く手を出していないのはおかしな話だが。最初に聴いた時は確かに凄い曲群だが、理解という点で及ばなかったようだった。最新作の8thの時には「まんべんなく良いが、即効性が無い」という感想を持つ人も居て、その上でI&Wは名盤とされるので、即効性があるのかと思いきやそういう訳ではなかった。しかし、これも所謂「スルメアルバム」という奴で聴けば聴くほど味が出てくるのだ。しかも、聴かせるプロセスが他と違う。7thの時は「なんとなく聴いていた」という感じだった。流石にI&Wということなのか、メロディが頭を掻き毟るように浮かんできて、そのアルバムの曲が次々に聴こえてくるのだ。誰かが「モンスター」と形容したのはこういう事なのかもしれない。


#1 "Pull me under"の冒頭は何処か昔のプログレに似た雰囲気を持っているが、以降は完全にメタルになる。"pull me under, pull me under, pull me under, I'm not afraid"の所で頭に浮かぶイメージは神聖な塔の最上階にロープ一本で吊るされている画だ。神聖な雰囲気を醸し出しつつもそこで繰り広げられる地獄絵巻。それに果敢に挑む勇姿。ちなみ特に歌詞を見て考えてイメージを描いている訳ではないので、内容が外れていても文句は言いっこ無しで。#2"Another Day"はバラード。#1と打って変わって落ち着かせる冒頭。中盤~後半に向かってハイトーンで盛り上げていくLabrieの歌唱。日々の物足りなさから明るい未来へ繋いでいくような救われるバラードだ。#3"Take The Time"は冒頭の"Just let me catch my breath..."からLabrieの歌唱がMichel Jacksonみたいだ。兎に角冒頭からリズミカルで、そこから曲がどんどん変わっていく。最後はバラード調で占める。一度使ったパーツは二度も使わない。だから繰り返す曲とは違う味が出る。長く繰り返し聴ける。繰り返さない曲を繰り返し聴く?…ヒトは繰り返すのが好きだな…なんつて。#4"Surrounded"バラード調の出だしから明るいミディアムテンポの曲に変化し、更にバラード調に変化し占める。正しく額縁方式。このバンドの全体の構造が素晴らしいものが多い。途中のミディアムテンポの部分ではワクワクさせるようなギターフレーズやキーボードフレーズが聴ける。殊このギターフレーズに関しては昔シャムシェイドというバンドの曲にも近いものがあった感じがする。出された年代から行ってこっちの方が古いが。或いはまた他のギタリストの影響から来たものなのかもしれない。どちらにしても、このワクワク感は心地良い。そして曲全体のことを言えば、明暗のコントラストに尽きる。#5"Metropolis part1-The Miracle and The Sleeper"では、Myungのベースソロが鬼だ。最初に聴いた時「何だ、これは?」と思った。俺はベースはよく知らないが、あれは人間業ですか、そうですか。Petrucciの早弾きはどんなものかは知っている。しかし、Myungのあのベースは知らなかったな。最近では前面に出ることが少ないからなんだろうか。この曲も同じことを繰り返さないようになっている。ソロに入るまでのメロディで繰り返して欲しい感じのメロディもあったが…。#6"Under A Glass Moon"は異国風なギターから始まる。このアルバムでは比較的繰り返しがある曲に入るだろう。繰り返すメロディーは特に嫌な感じにならないものだから、悪くはない。#7"Wait For A Sleep"ではMooreの美しいピアノ旋律が聴ける。繊細な感じのピアノフレーズに情感豊かなヴォーカルが入り、ピアノの旋律も又変わっていく。その変わっていく感じにQueenのイメージを重ねたのは俺だけだろうか?#8"Learning To Live"では最後の方に歪みギターでケルトミュージックをやっている。巡り巡って繰り返していくメロディは正にそれだ。そういえば、Dave Bainbridgeも"Veil Of Gossamer"でギターでケルトをやっていた。まぁ、あっちは完全にアイリッシュで分類されているからね。全体を総じて見てみて、#1~5そして#7が特に印象に残る。


へヴィネスとメロディという両極で判断されることが多いらしいが、改めて見てみて、その真ん中にあると思う。アルバム全体の雰囲気から見て。へヴィネスの極にあるのは7th"Train Of Thought"としてみると、逆に8th"Octavarium"はメロディの方にある気がする。8thは確かにヘヴィなのもあり、そういう意味で中道的かもしれないが、あのアルバムはヘヴィなもの、メロディアスなものですっぱり分類出来る。しかし、全体で見るとメロディと空気感を強く押し出したアルバムだと思う。両方が混在したという意味で全体の雰囲気として2nd"Images And Words"が真ん中にあるという感じが俺の頭の中で定着した。