だいきほ様の名演といわれる「ファントム」を観まして、ストーリーの悲痛さに封印していた初演の「ファントム」DVDを見直しました。

 

偏見と思い込みでざっくり書くので、誤認や異論もあると思いますが、さらっと流し読みできる方はどうぞ。

ネタバレあります。&、長文です。

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初めて「ファントム」をみたとき、そのストーリーのつらさ納得がいかず、DVDも再演鑑賞も封印していたファントム。

 

■あらすじ

エリックは声のうつくしい衣装係のクリスティーヌに正体を隠して歌を教える。

「愛があるから大丈夫、顔をみせて」と言ったにもかかわらず、クリスティーヌは仮面をとったエリックの顔をみて恐怖のあまり絶叫して逃げ出してしまう。

エリックがオペラ座の怪人であることがわかって警察に捕まりそうになり、「撃ってくれ」と懇願。庇護者であったキャリエールが引き金を引く。キャリエールは、実はエリックの父親で、昔愛人に産ませた子であるが、カトリックのため離婚できないままエリックをオペラ座の地下にかくして育ててきた。

撃たれたエリックをクリスティーヌが抱き、仮面をはずしてその顔にキス。エリックは微笑んで息絶える。

 

 

あらためて、なんつーお話でしょう

悲しすぎます。

くわえて、クリスティーヌにはパトロンであり恋してくる若くて美しい伯爵がいます。彼に頼るものの、恋より「歌!」。オペラ座デビューのことで頭がいっぱいという残酷さ。女ってこわい

各場面の歌がすばらしく、エリックとクリスティーヌの心を通わせるデュエット等は音楽としても高度で美しいし、ときめきも満載ですが、「こんな終わり方?フランス人わけわからん!!!」と思っていたわけです。

 

しかあし、各ブログ等で、望海風斗さん&真彩希帆さんのファントムが名作と繰り返されているので、楽天TVの配信を見たんです。ストーリーはかわりませんが、やはりお二人が素晴らしく、さらにごひいきの彩風咲奈さんのキャリエールがとても良かったので、1回みておわりにしていた初演のDVDを引っ張り出す。

 

 

初演「ファントム」

なんといっても、スーパートップコンビの和央ようかさん&花總まりさんというキャスト!!

 

花總さんといえば、入団2年目で抜擢をうけ、数代にわたってトップ娘役をつとめ、日本で初めてエリザベートのタイトルロールを演じ、退団後も東宝エリザを長年つとめた、女帝です。役者としてほんとに素晴らしいのですが、宝塚の娘役としてもぴか一にかわいくて歌がうまくて、さらに大人の演技もできる「花」なお方。

クリスティーヌとしては理想的です。花總さんのすごいところは、めちゃめちゃできる人なのに「未熟で考えが足りない」若い少女の演技もできるところです。クリスティーヌは完全に悪気がないのですが、きらきらきゃぴきゃぴしているうちに、周りの男性を不幸にするという、、、、、。かんぺきです。

 

そして、和央ようかさん。

 

この方は、、、、、、、長期で宙組トップをつとめられ、花總さんとのコンビで大人気を博しました。

花總さんが素晴らしかったのもあると思うのですが、和央さん、個人的には「不思議なアンバランス」というのが、ものすごく人を引き付けるように感じています。

 

「〇〇がうまい」というより、とにかくひきつけられる。

最近のトップオブトップといわれた明日海りおさんは、何でもできてお顔が超美麗でお芝居が上手でした。明日海さんは「何をしても上手だなあ」と思うことが多かった。望海さんも歌と演技が「上手だなあ」とつくづくおもう。

でも、和央さんて、めちゃくちゃ好きなんですけど「上手」という感想が当てはまらない感じがするんですよねえ。

 

背が高くてスタイルよく、出た瞬間に「どーーーーん!」と人目をひいてしまう。

わたしはよく、レビューをみていて、ほかの方が歌やダンスですごく頑張ってすてきーーーと思っていたのに、センターに和央さんが「どーーーーーん!」出てくると、「きゃーーーーーーー」とすっかり目を奪われてしまう自分がいて、「きったねーーーなあ」と同時に思っていたものです。出た瞬間って、なんもしてないはずなのに、一気に興味が和央さんにいってしまう。

なんだありゃあ。これは、宙組の後輩トップ大空祐飛さんにもいえるのですが、たまーーにそういう方にであいます。背が高いことが共通していますが、ただ高いだけならいろんなスターさんがいるので、立ちかたとか雰囲気のつくりかたとか、あるんでしょうねえ。

 

和央さんの特徴としてもうひとつ、歌声が不思議、というのがあります。

誤解を招くといけないのですが、歌は上手です。透明感があり声の伸びも音程もよい。

でも、なんか、人間離れしている声にきこえるんです。響き方が独特なのか。。。

滑舌が良くないといわれることもあったのですが、わたし個人としては、人間ぽくない声になるんです。だから、歌い出した瞬間にちょっと空気感がかわるというか。いい意味で、地に足がついていないというか。

 

このアンバランスな感じが、不思議な吸引力を持っていたように思うんです。

 

だから「オペラ座の怪人」であるエリックの声としては、ドンピシャだったと思います。

「ひとじゃない????」という感じ。どこから聞こえているの????という、ふかい、というよりどこか高い空間で響いているかのような。

これは、和央さんの雪組時代の先輩でトップの一路真輝さんにつながる気がします。一路さんは驚異的歌唱力でエリザベート初演を実現させたひとですが、歌唱力にくわえて、あのどこか「神的」な声質、が黄泉の帝王という世界へいやおうなく観客を引き込んだと思います。

 

 

望海さんのエリックは寂しがり屋の少年チックなかわいらしさ、どこか人懐こさを感じる温かみが評判でしたが、和央さんのエリックを見直すと、なんと涼やかな好青年なんだろう、と思いました。

人に関わりたいと思いつつ、「自分なんて怪物のような顔をしてるから」と、あえて人から距離を置こうとする、人を怖がっている感じと、逆に「自分には歌があり、この地下の世界でいきていく」という孤高にもみえる気高さがあいまって、透明感のあるキラキラ度が半端ない。

 

望海さんエリックが中学生くらいのあどけないかわいらしさを残すとすると、和央さんエリックは、怖がりながらもなんとか独り立ちしようとする高校生~大学生的悩みと頑張りとプライド、精神的な美しさまで感じさせる、むねきゅんな青年像でした。

 

やっぱり、和央さん&花總さんが初演をした、というのは、なるべくして、というところですし、このお二人でなくてはという素晴らしい組み合わせだったんですね。

 

エリザベートもそうですが、宝塚に合うのか?という難解な内容や精神的重さを含む作品の場合、初演をどうするかというのはとても大変だと思います。一回できてしまえば、それをベースに作っていけるでしょうけれど、名作とはいえどうやって宝塚ファンに受け入れてもらえる作品にするかという重責は半端ないのでは。それが担える体制というのは、相性やタイミングもあると思うので「めぐりあい」なんだろうな、と思います。

 

今後も、宝塚のあらたなチャレンジとめぐりあいに期待ですね。