ザインとゼイラが笑い合っていたころ、
新郎のゼロは…
「まぁ、心がけ次第ってことでさ」
ゼロはキィルと一緒に飲んでいた。
キィルはザインの前夫という立場から
ザインの昔の話等々をゼロに聞かせていた。
キィルが望んだのではない。
ゼロがキィルを誘ったのだ。
結婚を明日に控え、ゼロはほんの少しだけ、
マリッジブルーを感じていた。
キィルを訪ねて
夕方からやっている居酒屋に来ている。
ここは、おでんが美味しい。
(ファンタジー世界のおでんというのも違和感があるが
おでんに似た、料理である。)
「正直、ザインを何回抱いた?」
「え?は?」
あまりの直球の問いにしどろもどろなキィル。
「…実は、1回だけ。」
「それで妊娠?気を付けないと」
ザインは体質的にできやすい身体なのかもしれない。
あまりに早く子供ができると夫婦の楽しみも
味わえないというもの。
「俺ができなかったぶん、幸せにしてやってほしい。」
「ザイン…いや、フローラはもう俺のだからな。」
「…ああ、わかってるって。」
二人のわだかまりはもう、消えつつある。
「明日は式だし、飲みすぎない程度で切り上げよう。」
飲んだ酒とは別の意味で顔の赤いふたりは
そう言うと居酒屋の支払いを済ませ、店を後にした。
からーん からーん
式場となるルアーガの教会。
ルアーガでも主流になりつつある
ベ=オラ教の形式の教会で式は行われる。
「ついに、だね。」
「ああ、」
正装して式に参列したゼイラとアレル。
アレルは、いつもより質のいい仕立ての
豪華版ルアーガの制服
ゼイラはいつもの着物より
一段とシックできらびやかな着物を纏っている。
今までは男ものを身に着けることが多かったのだが
最近は徐々に女性のものに装いを変えつつある。
だが、やはり急に女性らしく、というのもまだできそうにない、
どうもスカートや襦袢にはなれないらしく
下にドロワーズのようなパンツを履くスタイルが主流だ。
今日も見えないところに質のいいドロワーズを仕込んでいた。
(アレルとしてはそれを脱がす楽しみができて喜んでいるらしい)
二人がレッドカーペットに登場した。
「おめでとう!」
二人とも、両親が存命でないから、
父が花嫁を連れてくるシステムは省かれる。
今回の式にはゼロの魔族の王としての戴冠も兼ねており、
その儀は先ほど、各国の王族を招待して執り行われた。
「ゼロのやつなよっとして見えるけどなかなか凛々しいやつだな。」
先ほどアレルはそう、ゼイラに感想をもらしていた。
なかなか、しっかりとした戴冠式だったようだ。
二人の幸せそうな姿を眺めつつ。
ゼイラはそっとアレルの手を求めた。
手をつないで式を見物する二人。
遠くない未来、二人も式を挙げる予定だ。
なんなら、すぐでもいいくらいだが、
ゼイラが先日成人を迎えたばかりであり
出身地のシャハンは成人を迎えることと
結婚できる年齢というが違うというやっかいな
法律があるため、まだ結婚の日取りは決まっていない。
シャハンの婚礼下限年齢は、19。
成人して、仕事をはじめ、貯金ができてから、
という先人の考えかららしいがゼイラは正直やきもきする。
とくにこんな幸せそうな光景を見せられると…
「俺たちもさ、いつか…」
「ああ、もちろんだ」
アレルはゼイラの手を握る力を
ぎゅっと強めた。
アレルのつないでないほうの手が空を切る。
色とりどりの花と花びらが空中から舞い落ちた。
わっという歓声が上がる。
「サプライズ?」
「いいだろ?」
こんな晴れやかな日にふさわしい快晴の青空。
幸せな空気が場を包んでいた。
俺たちのときも、こんなふうだといいな。
ゼイラはそう思った。
隣には、アレル。
こんな幸せな日々が続きますように…
ゼイラはそう、強く願った。
第29話 結婚と戴冠 ② 終わり、 第30話に続く…
***
ゼロとザインの結婚式です。
男装の麗人、ザインと男だと思いこみ
男装していたゼイラ。
なんだか共通項があるような気がします。
ついに!
次の40話でこの第一章は最終話を迎えます。
もうちょっと頑張ります。