「帰ってきたと思ったら即、酒場直行かよ。」
ゼイラは少々ご立腹だった。
アレルはノッヂと連れだって
元エレメンタル大陸(現在は水に沈んでいる)の
地陣営の地下空洞に旅立って行った。
無事帰国し迎えたパーティーメンバーに挨拶ののち、
二人はなんと酒場に行くと言って
そそくさと向かっていったのだ。
ゼイラは、まだ昼下がりであったから
今日は非番なアレルとなにかしたかったのだが
(イチャイチャとか?w)
二人で明るいうちから酒場に向かったものだから
正直、肩透かしをくらった。
「こうなりゃガリュウでも呼んで愚痴きいてもらうかな」
ガリュウというのはアレルと深い因縁のドラゴンである。
魔法に長け、人間の姿で居ることもできる。
アレルとは長い付き合いのようで、昔のことをいろいろ
知っているふうだ。(あまり話したがらないが)
アレルとガリュウは契約を結んでおり、
報酬を提示する代わりに、アレルを乗せたり
何か運んだりとお役立ちの人物(?)だ。
ゼイラは特権として、ガリュウにもらった
牙のようなサブ契約アイテムでいつでも召喚可能だ。
ガリュウもゼイラにはとくに見返りを求めないので
悪いと思いつつ、気軽に呼んでは話し相手になってもらっている。
…むろん、アレルにばれないように気を遣ってはいるが…
ゼイラはガリュウの牙状の石にふっと息を吹きかけた。
どろん
ドラゴン姿のガリュウが眠っているまま現れた。
「ガリュウ」
ゼイラは呼びかけたがガリュウはかなり深い眠りのようで
反応がない。
無理やり起こすのも気が引けたのでゼイラはガリュウの
袂で最近やっているアラン編みのニットを編み始める。
「ガリュウまでオレの相手してくれないなんて…
今日はツイてないな。」
そう思いつつ、アレルのサイズに仕上がる予定の
編み物を続ける。
しばらくして、ガリュウがもごもごと動き出した。
ようやく目を覚ましたようだ。
「ゼイラ、呼んでたのか」
「うん。ガリュウったら寝てるからさ」
「悪かったな」
そして、ゼイラはガリュウにここ最近の
経緯をかいつまんで語った。
ガリュウはだまってときどき頷きながら話を聞いてくれた。
「アレルの交友関係は狭く深くだからな
ノッヂは面白いやつだし、話も合うんだろ」
アレルの交友関係が狭く深く?
広く浅くかと認識していた自分が恥ずかしい。
「仕事上の関係者には広く浅くではあるよ、けど…」
なるほど、アレルの表面しか見えていなかった。
アレルのこと、どんな小さなことでももっと知りたい。
ゼイラはそう願う。
「そろそろ俺を眠らせてくれない?」
ガリュウがそう言うのでゼイラはガリュウを見送った。
ガリュウは相当眠かったんだろう、いつもは飛んでいくことが多いのに
そのままドロンと消えてしまった。
「さて…」
アラン編みの続きをしつつ、アレルの帰りを待つ。
もうすぐ、前身ごろが完成する。
アレルに似合いそうな斑入りのグレーのウールだ
気に入ってくれるといいのだけど。
そんなこんなしているうちに夜は更けた。
アレルは深夜をまわっても帰らない。
「まだかな…」
ゼイラは待ちつつもうつらうつら。
一応、アレルが食べるかもと思い、
軽食を準備していた。
クラッカーにオリーブやチーズなどを
乗せたかんたんなおつまみである。
…湿気ちゃうかな。
そうぼんやり思ったとき、扉がバンと開いた。
「ゼイラ、アレル連れて帰ったぞ」
ノッヂである。
背のあまり高くないノッヂが長身のアレルを
引きずりながら帰ってきた。
相当飲んだらしい。
アレルは普段ほとんど酒を飲まない。
なにか話したいことや相談があると
酒の量が増えやすい。
今回はノッヂと飲んで酔いつぶれたのだろう。
「ほら、まかせたぞ」
ノッヂはアレルをソファーにおろすと
去って行った「じゃな、ゼイラおやすみ」
そう言うとなぜか投げキッスをして去って行った。
「よっぱらい達め…」
アレルは時折、ごにょごにょと
寝言を言っていたが起きた。
ように見えたがまた寝た。
しばらくかわいい寝顔を見守っていたゼイラ。
アレルは目をしぱしぱさせながら、
ようやく体を起こした。
「カナッペじゃん、いただきます~」
パクパク食べ切った。
「あんまり飲むと体に障るぞ」
ゼイラがあきれたように言った。
「だれのせいで飲んでると思う?」
「へ?」
「お・ま・え・の」
そういうとアレルはゼイラを後ろから
ぎゅっと抱きしめた!
「え!アレル!?」
アレルはゼイラを抱きしめたまま
スリスリとその滑らかな肌の感触を楽しんでいる。
どうしよう、ドキドキする。
第32話 愛しきもの ①終わり ②に続く…
***
よっぱらいのアレルがゼイラを抱きしめて終わった32話前半でした。
この二人、友達以上恋人未満の関係が続いていますが
ついに!?
続きは次回~
比較的早く続きが書けました。
またできれば早いうちにお会いしたいですね。