「はぁ~極楽。」
ゼイラは誰も居なくなった露天風呂を独り占めしていた。
長い旅の疲れを取るため、パーティーは
ルアーガの北の温泉郷を訪れていた。
フォースなどは、美味しい料理を堪能して即
もう夢の中だ。
昼間3回風呂に入ったと自慢していた。
アレルとキィルはなにやら話しながらお酒を飲んでいたし、
なんだか眠くなかったゼイラは夜中のお風呂を楽しみに起きていた。
女子メンバーたちも隣の部屋でなにやら話が盛り上がっていたようだが
早々に寝てしまったのか、今は静かだ。
ゼイラは、完全な男、ではないので(宦官であり、大事な部分が、ない)
他の客が居ない夜中を選んでお風呂に来た。
「やっぱ温泉って最高!」
人と一緒に浴場に来るのは憚られるからだだが
だからと言って温泉が嫌いかと言えば否!である。
疲れをとるには温泉が一番。
そして、肌もなんだかつるつるになる。
とくに、この温泉には傷跡の治癒にいい成分が
含まれているという。
ゼイラの下半身とあちこち怪我してできている
傷跡も少しは薄くなるかもしれない。
そんな期待も抱いている。
思えば、アレルの配慮かもしれない。
1週間ほど、のんびり滞在予定だ。
しばらく湯船でうとうとしていたゼイラだが
誰か浴場に入ってきた気配がして
あわてて手拭いで前を隠す。
「おう」
アレルだ。
夜中だから誰も居ないと思ってやってきたのは
アレルも同じであった。
アレルにも、人に見られてはいけない部分がある。
胸だ。
といっても、女性のようなふくらみがあるわけではない。
胸に大きな天然石のようなものが埋まっているのだ。
結局、ゼイラにはその部分を見せてくれた経緯があったが
いったいどういう仕組みになっているかは、依然説明されていない。
アレルがゼイラの隣に来て、
掛け湯ののち、隣に腰掛けた。
露天風呂のなかの石の腰掛けで、ふたりは並ぶ。
「アレルその石…」
「ん?」
ゼイラがアレルの胸の石を指して言う。
「色が薄くなって綺麗だな。」
アレルがきょとんとして自分の胸を見る。
赤黒い石が薄まって今はピンク色に光っている。
中心にはアレルの心臓が鼓動している。
「血流が良くなるとこうなる。」
「へぇ。」
「俺の詳しい話、ゼイラにならしていいかもな。」
「え?話してくれるのか!?」
「まぁ家族だし。」
アレルはシャハンに帰ろうとしたゼイラに
家族になってほしいと望んだのだ。
ゼイラもそれに応じた。
性別上、一応男同士なわけだが
ゼイラは男ではなくなった存在だ。
この関係のまま過ごせるとはゼイラ自身も
思っていないのだが…
いつかは、ローラのような、普通の女性を
選ぶのではないか?
ゼイラはそれを危惧している。
だが、同時にアレルは必ず自分を選ぶという
確信もあるという。
それを同時に矛盾として心に抱えている。
「実は俺、この世界ができたときから生きている」
「へ?」
なんだか、天文学的な話が始まった。
「この石が俺の本体なんだ。」
にわかには信じがたい話だ。
「じゃあ、アレルは…人間じゃないのか?」
当然の疑問だ。
「この石に意志があって、代々人の体に宿って
その使命を全うしている。」
「でもルアーガのセトナ王と叔父と甥の関係なんだろ?」
アレルからはそう説明を受けていたが…
「今回の宿主がルアーガの先王の弟なんだ。」
「それって?」
ゼイラはルアーガ王からみて、アレルが甥だと
完全に思っていたのだが…
「俺が叔父なんだ」
「ちょ、それどういうこと?」
ゼイラは軽く動揺した。
アレルによると、現在の宿主の体は
ルアーガ王、セトナの叔父にあたる人物の
体なのだという。
石を体に宿す際、体が若体化したのだ。
まわりへの説明のため、セトナはアレルを
先王の弟の息子ということに仕立てた。
そういうことなのだという。
その結果、叔父が甥になった。
わかったような、よくわからないような…
ゼイラは正直、そう思った。
ただ、アレルがそんな身の上を話てくれたことがとても嬉しい。
それに、アレルの語学力や知識が
豊富であることの答えがそこにある。
それを知ると、いろいろ今までの疑問が一気に解決した。
アレルは、この星の一部なのだ。
神に近い、存在なのかもしれない。
「みんなには内緒だぞ」
「うん。」
アレルは前を隠すこともなく
そのままの姿でいることにゼイラは
気にしないように、気にしないように…
と念じつつもやはり気になってしまった。
だから、思いきってゼイラも隠すのをやめて肌を露わにする。
「ほんとにないんだな…」
「けっこうな傷だろ?」
ゼイラの体を見て、アレルも驚いている。
お互い、体にコンプレックスがあるという
共通点がどこか嬉しい。
「触っても…いいか?」
アレルが真剣な顔でそう云った。
第26話 旅の終わりと新たな旅① 終わり②に続く…
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このお話は事前にあまり内容を考えてなかったのですが
流れとしてこんな展開になってしまいしましたw
自分でも思わぬ方向に向かっていることにハラハラ
②はどうなるのか、お楽しみに。
今回のイラストはゼイラ(描きおろし)
