第25話 交換条件 | N/F NO FACTER

N/F NO FACTER

剣と魔法の世界「アスタシア」を舞台にしたファンタジー小説。
謎多き主人公アレルと連れのゼイラ、
その他キャラクターたちの冒険活劇です。
アレルとゼイラ、二人の恋愛要素もあります。

「たいへん素晴らしい品々ですね」

バドはアレルたちが集めた品々を几帳面に

手袋をはめた手でしげしげと眺めた。


みんな、無言で見守っている。

アレル的には自分だけで交渉にのぞむつもりだったが

パーティーのメンバーたちが交渉の場に居たいと

申し出たため(とくに、フォースががんとして譲らなかった)

全員居る場での交渉となった。


「いや、こんな品々を直接みる機会が来ようとは思いませんでした」

バドバドツェル(通称バド)は薬師兼商人である。

彼はエルフで長命なのだ。

なので、長い年月で培った審美眼はすばらしいものがある。

いろいろな珍しい品々を仕入れては各地で売り歩き、

薬草や毒草に強く、アレルも昔から何度かお世話になっている。


アレルが言う。

「どうかな?交換は成立しそうですか?」

バドが応える。

「十分です。」


そういうと、大仰な金属製の豪華な宝石箱を

空間魔法で出現させた。


この魔法使う人を見るのは3人目だな…

ゼイラはそんなことを考えながらその場の空気を見守っている。


「これが、そのアイテムです。」

バドが高尚そうにそのアイテムのケースを開いた。


外側は、人物の像のような美しいものだ。

開くと中から、今まで見たこともない

球体の模型のようなものが現れた。


「それは…何?」

サザンが興味深々で覗き込んだ。

自分が使う、占い道具にも通じるものがあると思ったのだ。

「地球儀…かしら?」

ローラも実物を見るのは初めてだった。

本の中の世界のアイテムだ。


「そうです。このアスタシアの形をそのまま写し取った

まさに芸術的作品です。」

「アスタシアの…模型?」

キィルがその細かい造形をしげしげと

眺めては溜息をついている。


「まるで神様が作ったみたいだな。」

ゼイラが正直な感想を口にした。

「この作品は、古代の科学者が生涯をかけて制作した

世界に2つとない貴重な品なんです。」

「へ~。」

フォースが目をキラキラさせて、地球儀に触れようと思った手を

サザンにはたかれた「いて!」


「もともと、制作後に亡くなった科学者の国家の子孫が代々

大事にしていたということだけど、ある時代に

盗難にあったんだ。」

アレルが説明する。

「まぁ、実を云うと、ルアーガで制作されたものなんだ。」

「え!ルアーガで!?」

全員が驚きを隠せなかった。

「2300年前の科学者ワイマールの作で、2000年前に盗難にあった。」

「どこでみつかったんだ?」

ゼイラが問う。


「実はそれがですね。」

バドが説明する。

「前に、アレルが制圧したヒー=ヤン教の教団が

崩壊してから、残党が教祖の持ち物を整理したいと

申し出があってね。」

「あの教団か!」

「教団が最初に保持したベルクールの遺跡に

ご本尊としてまつられいたのがこれだったんだ。」


教団は、崩壊後の幹部のメンバーたちは

すでにマインドコントロールが解け、散り散りになっているが

まだ金目のものがあれば売り払いたいと思っていた。

そんな中、この外側のケースのご本尊の中身の装置に

気づいたのがバドだった。


「私財をほぼ使い切ったのですが

あなたがたが持っていたほうが有効なのではないかと思い

お譲りすることに決めました。どうぞお持ちください。」

「光栄です。ありがとうございます。」

アレルが正式な礼をして敬意を示す。


「それで、この品々なんですが。」

バドが4代工芸を指して言う。

「もとのところに返してもらっても良いですか?」

「え?」

バドは意外な提案をした。

「わたしとしてはこれらを見たかっただけだったんです。

実際欲しいとは思っていません。

やはり、作られたところでそれぞれ大切にされるのが一番です。」


「いいのか、それで?」

アレルはこれでは交渉にならないと思い、云った。

「わたしの目が確かだったことはこれで証明されました。

あとは好きに使ってください。また、私財は増やせるのですから。」

バドが商人らしくないことを口にしている。


「いや、やはり、礼金くらいはさせてほしい。」

アレルはそう望んだ。

これでは、対等な取引とは言えない。

「分割で1億ニール払わせてもらいたい」

国家予算並みの提示額だ。

余りの額に、ゼイラはハラハラした。

「うーん、では、半額の5千万ニールで。」

交渉は終わった。

アレルとバドは篤く握手をかわし、

バドはまだ仕入れのできる時間だから、と

その場を後にした。


「いや、しかしすごい金額じゃないか」

フォースがこれからアレルが払わなければならない

金額をおもい、辟易した。

「別に俺の私財で全部賄うわけじゃないぜ?」

アレルはそう云った。

「え!どうするんだ?」

「ばかやろう、俺はルアーガの宝を取り戻すためにやったんだ。

国からいくらか出してもらう算段だったのさ。」

アレルがペロリと舌を出す。


「セトナ王が、2億ニールまでなら出すと云っていたから

5千万ニールなら4分の1で済んだってことさ。」

さすが、アレルである。

金額を高く提示したとみせかけて

実は半分だったのだ。

「それを聞いてほっとしたぜ。」

ゼイラもやっと安心したような表情だ。


「あとは、これがからくりで動くらしいんだけど

その調整をキィル、君に任せたいと思う。」

アレルがキィルに云った。

「うーん、からくり細工は正直専門外だけど

他に適任が居ないのなら僕がなんとかしてみよう。」

そういうと、からくりに手袋をして触れ、表面を見回しはじめた。


「さて、今日はみんなで打ち上げでもしようか!」

久しぶりのルアーガでの休暇だ。

すでに美味しいレストランを貸切で予約してある。

ノッヂ(現在ルアーガの新兵の戦闘実践教育をしている)や

サーベル、ソードなどのルアーガ職員も誘って

大規模な宴を催す予定だ。


「よっしじゃあ、飲むぞ~」フォースが叫ぶ。

「おまえは、ソフトドリンクね。」

「あ、やっぱり?」

小突きあいながら、一行はレストランに向かう。


サザンはこの、みんなで歩いているシーンが

まさに、予知夢で見た夢見のシーンだったな、とデジャヴュ

を感じていた…


ゼイラは、このメンツでこんなわいわいして楽しい出来事がまた

何回もあればいいなと思った。

空は美しい黄昏に染まっている。

夜はまだまだ、これから。



第25話 交換条件 終わり 第26話に続く…


***

交渉は無事終了しました。

バドバドツェルは結局どれくらい得をしたのか。

実はきっとアレルが思うより、本尊である地球儀、安く買い取っているのでは?

彼も商人ですから、きっとそこはぬかりないはず。


これから、また新しいストーリー展開の予定です。

おたのしみに。


やはり、毎日更新は仕事やほかの作業との兼ね合いで難しいかも…

スローペースの更新になりそう。

週2,3回の更新が目標です。

よろしくお願いします。




描きおろし、アレル。