第17話 男でも女でも ③ | N/F NO FACTER

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剣と魔法の世界「アスタシア」を舞台にしたファンタジー小説。
謎多き主人公アレルと連れのゼイラ、
その他キャラクターたちの冒険活劇です。
アレルとゼイラ、二人の恋愛要素もあります。

ルアーガに到着したアレルとゼイラ。

アレルが行くほうに、ゼイラも続く。


ルアーガの知り合いから、宦官候補を選ぶのか?

ゼイラは誰だろうと思い悩んだがどうもわからない。


すると、アレルは「アデフに行くぞ!」

アデフ…

毒物で王子が殺害される事件が記憶に新しい。

アレルは、何やら取りに戻っただけのようだ。

荷物を鞄に放り込むと、またすぐガリュウを呼び出した。


「いそがしいことだ。」

ガリュウもそう云って、アレルとゼイラを乗せた。


二人はまた、ガリュウに乗るとアデフへと飛んだ。

アデフの誰に頼むんだ?

なんとなく、ノッヂ・ルォークのことも頭に浮かんだが

あいつが宦官で王子の世話なんてまるで似合わない。


いろいろ考えているうちに

ルアーガからアデフはそう離れておらず

思ったより早く到着した。


すると、アデフの宮殿の地下にするすると降りていく。

(書状などはなかったが、アレルは事件解決後顔パスだ。)

「アレル、地下なんて牢獄しかないじゃないか。」

そこではっとゼイラも気づいた。

「マルケル王子か!」

なるほど、アレルも考えたものだ。

幽閉生活のマルケルは食事もろくにとらず

書物を読みふけってるとの知らせが先日入った。


幽閉生活を続けるより、宦官になったほうがいい。

そう、マルケルも納得するかもしれない。


格子窓はあるものの、清潔に保たれた地下牢に

マルケルは居た。


「マルケル王子」

「アレル…か。」

アレルはマルケル王子に事のあらましを説明した。

「なるほどね、幽閉を解く代わりに宦官になれと。」

「王子には申し訳ないが、ひとつの提案と考えてほしい。」

アレルとしては藁にもすがる思いだろう。

マルケルは少し考えたようだがこう応えた。


「べつに、いいよ。」

マルケルはそんなに深く考えるふうでもなく、了承した。

「アレルに恩売っとけばいつか僕も得するだろうしね。」

マルケルは軽くウィンクした。

「別に、男であることにそれほどの拘りはないんだ。」

「本当にいいのか?」

「まかせてろってこと。」


マルケルは現在9歳である。

宦官として局部を切断するには

ぎりぎりの年齢だ。

もともと王子であった彼には王子の気持ちが

わかるはずだ。


マルケル王子の今後のことを

元王女のラキスに伝えた。

ラキスは宦官のことを聞いて

少し狼狽えたものの、了承した。

牢の鍵を見張りに開けさせる。


「では、さっそくシャハンへ行こう。」

「何か持ってきてるようだけど?」

マルケルが不思議そうにアレルの鞄を見た。

「マルケルへの贈り物だよ。」

そういうと、美しい表紙の本を取り出した。

「アデフの伝記か…よく手に入ったね。」

「うちに来た写本の専門家にお願いしたんだ。」

きっと、こっそりローラに頼んだに違いない。


3人はガリュウの背にまたがると

一路、シャハンを目指した。

アデフからだと、ルアーガに戻るより遠い距離になる。

しばらくガリュウの上でゼイラは

シャハンの王子メベルの好き嫌い、あやし方などを

大声でレクチャーしている。


そんなこんなでシャハンに到着した。


「では、明日、このものを宦官として術させてもらうぞ。」

メベルは、マルケルの利発さが気に入ったようだ。

ふたりでしりとりなどを早速始めて盛り上がっている。

なかなか、良い人選だったのかもしれない。


「しかし、アレルとやら」

「はい。」

「ゼイラは宦官であるぞ、将来子を成すこともならん。

このものを妻としてよいのか?」

ゼイラははっとした。

アレルと添い遂げること、それは子孫をあきらめる

ということでもあるのだ。

ゼイラはアレルに抱かれようとも、子を成せない。

生まれてきた子供をアレルと育てることもままならないのだ。


「アレル…」

おれはばかだ。子どものことなど今まで何も考えてなかった。

それこそ、ローラとうまくいったほうがアレルのためなのではないか?


「俺が愛しているのは、ゼイラただひとりです。

それは、きっとこれからも変わらない。

ゼイラは俺の大事な人です。」


それを聞いたゼイラは堰をきったようにぼろぼろと涙があふれた。

「アレル…おれ。」

「泣くな、ばかやろう。」

アレルはゼイラの涙を指ですくうと

ゼイラを強く抱きしめた。


「おあついことで。」

マルケルが冷静に言った。


それから、マルケルをシャハンに預けると

アレルとゼイラはガリュウに乗り、再びルアーガに向かった。


「今日は強行軍だな。」

ガリュウがあきれたように言った。

「何度もすまなかった。」

「…べつにいいさ。」


ルアーガに無事到着した。

ルアーガは少し、雨が降っており

肌寒い。


ガリュウにお礼の熊の右手を差し入れると、

またガリュウは元の石に戻った。


「俺、アレルとこれからも一緒に居られて

ほんとにうれしいよ。」

ゼイラが儚く笑った。

アレルはその唇にキスしたいと思ったが

今はまだ、我慢した。


「ばかやろう、とりあえず塔でのんびりしよう。」

「せっかくの休みがとんじゃったな。」

「そうだな、まあしょうがないさ。」


アレルは、ゼイラが隣に居るシアワセをあらためてかみしめた。


キャラン キャラン ツリー

アカハラの鳴き声の響く黄昏時である。


今日は、このまま夕日を眺めるのも、いい。

そんな夕日のオレンジ色を

ゼイラの背中越しに眺め、目を細めたアレルだった。


雨は、あがった。




第17話 男でも女でも 終わり 18話へ続く…


***


ひさしぶりに③まで続いたお話でした。



当初の予定より、かなり恋愛ファンタジーになってます。

まだキスもしていない二人ですが(笑)


ポストカード原画

アレルとゼイラ。

蛍ではなくウィルオーウィスプのイメージ。