「アレル、今日休みなんだろ?」
ある日の朝。
ようやくルアーガの樹の葉も色づきはじめた。
そろそろ、動物たちも冬ごもりの準備で忙しい。
「ああ、今日はしごともないし、家に居ようかとおもって」
アレルはここ数か月、激務で
(主に訪問しにきた他国の重役への通訳)
やっと休みをいただけたところだ。
「どっか、行くか?」
「うん!」
たまには家族サービスも必要だ。
そう思って、さて、支度するかと思ったその時だ。
コンコン
ドアを叩く音がした。
「はーい!」
支度の途中で襦袢しか着ていないゼイラであるが
気にせず来客に応じるようだ。
おいおい、ちゃんと着ろよ…
襦袢の生地が薄く、若干肌が透けている。
その格好で人前に…アレルは少し、妬けた。
ゼイラが扉を開けると、ルアーガの通信兵
ダーツが居た。
「何かありましたか?」
基本アレルのこの北の塔には滅多に
来客はない。
ごくまれに外交部の同僚を伴って帰ってくることはあるものの
こんな朝に誰か来ることはこの1年まるでなかった。
ゼイラが居ることに気を使っていた、ということもあるが。
できれば、この塔に閉じ込めていたい。
誰にも肌を触れさせたくない…
そんな、自分の独占欲に驚くべきであると云わざるを得ない。
そんなことをいろいろ考えながら。
自分に用があるのだろうと、アレルも扉のそばに向かい、
訪問者の意図を探った。
「ゼイラさんへ、シャハンの主君から書状です」
ゼイラが手紙を開く。
アレルは、急に不安になった。
まさか…
手紙を読み終わったゼイラ。
「貸して」
アレルがゼイラから手紙を奪い、自分も読む。
シャハンの文字が書いてあるが、アレルは読める。
「なんだって?」
フォースが心配そうにこちらを伺っている。
「ゼイラを、国に返せって。」
かいつまんで言うとそういうことだ。
「え!?」
「シャハンの王子直々の手紙だ。」
今までの話を読んだのならお察しであろうが
ゼイラはシャハンの王子の世話係だ。
アレルと知り合い、国に何も告げずに
密航でルアーガに来てしまったゼイラだった。
アレルにここに残ってほしいという要望をされ
ルアーガに滞在して、ほぼ、丸1年。
シャハンの王子、メベルも相当おかんむりのようだ。
「おれ、メベル王子の一番の遊び相手だったんだ。」
アレルは、ゼイラが国でどのような仕事ぶりだったのか
等、特に気にしていなかった。
考えると、なかなか難しい立場だ。
ゼイラはゼイラで、ルアーガに着た当初、
シャハンへの書状に「ルアーガのアレルの嫁になった」
と記載したのだが…
やはり、一応、性別が男である
自分が嫁、というのはシャハンの誰も納得してはいないのだ。
メベルはまだ幼く6歳である。
自分がお世話していた5歳のころよりは多少
分別もつくようになっただろうが、やはり、まだ子供だ。
ゼイラとて、先日14歳を迎えたばかりだという
子どもに分類される年齢である。
いくら、アレルの仕事をお手伝いしている、とはいえ
ゼイラの仕事は、やはりシャハンの世話係なのである。
どうしよう…ゼイラは考えてみたが
このままアレルと離れ離れにはなりたくない。
かといって、国に戻らなければ、アレルになにか
迷惑がかかってしまうのではないか?
そんな不安がある。
「どうしようか、アレル。」
アレルも思った、このままゼイラと
離れ離れなんて、絶対に、嫌だ。
「一旦、一緒にシャハンに行こう。」
フォースはその二人のやりとりを
はらはらしながら見ていた。
正直、駆け落ちでもしたらどうしようかという
妙な予感におそわれたが、その心配はないようだ。
そうと決まれば、アレルもちょうど、今日は休みだ。
青い石を取り出し、ガリュウを召喚する。
「呼んだか?」
ガリュウが出現した。
「俺も行っていいか?」
フォースがすこしだけ、不安そうな顔で
こちらを見ながら言った。
「いや、今回は俺とゼイラだけで行く。」
アレルは言った。フォースを連れると
いろいろ見たがって時間がかかりそうだ。
「また、改めて連れて行ってやるからさ。」
「……わかった。」
ゼイラは急に無口になり、いろいろ
考えてしまっているようだ。
ふたりでガリュウの背につかまり
空へ。
シャハンに向けて、二人は出発した。
キィー キィー キチキチキチ
モズの鳴き声が聞こえた。
けたたましい音が、心臓に響くようだ。
これまでの生活が一変するかもしれない。
そんな不安を抱えつつ。
ガリュウに乗った二人は、
かぶさるように体を重ね、ぎゅっと手を握りあっていた。
第17話 ①終わり、②に続く…
***
ゼイラに帰国勧告がやってきました。
いくら、事情があるとはいえ、
やはり男同志の愛。
なかなか理解されないようです。
これから、どうなるのか
続きをお楽しみに。
某雑誌投稿コーナー用イラスト。
アレルとゼイラ。
