ぴちち、ちゅんちゅん。
雀がとっと、っとアレルのすぐ横の地面を跳ねながら通過した。
某国(例えば、ゼイラの出身国など)では食用にされることもあるようだが
ここ、カートライトの雀は人を避けない
つまり、飢饉などがなかったということか。
豊かな土壌と農耕の発達。
そんなことを考えながら、歩みを進める。
乗合馬車が少し離れたところにしか発着しなかったので
修道院までの移動は途中から徒歩だ。
1時間ほど歩いていくとようやく
修道院のある谷が遠目に見えてきた。
「ふぅ」
歩くのは久しぶりだ。
いつも近場でもついフライドラゴンや
自家用の馬車、ワープゾーンを多用してしまう。
あたたかい気候にちょっと汗ばんで歩くのも悪くない。
自身の普段からの運動不足も感じつつ。
そんなことを考えながらいるうちに、修道院が目前に迫った。
意外とこじんまりしてるな…
こういう場所は正面から入るより、わきから入るべきだと
アレルは思っている。
とくにこういった女性中心の土地では、手続きを省ける
わきからのほうがスムーズに責任者に会えることが多い。
正面からだと、門番や管理人につかまってくどくど言われて
結局責任者に会えなかったという経験が何度もある。
国からの命であるなら、書状を見せるだけで済むのだが…
あいにく今回は携帯していないのだ。
もちろん、TPOと時の運もあるのだが…
建物の連なった間の通路を進む。
「こんにちは」
「あ!こんにちは~」
幼い修道女見習いの3人組に声をかけた。
沢から水を汲んで運ぶ途中のようだ。
「すみませんが、ここの修道院の責任者の方の
ところに案内いただけませんか?」
「?」
「私は、ルアーガの外交官でアレルと申します」
少女たちは現地語で少しもごもご話し合ったあと、
一人が扉に急いだ。
「ちょっと待ってくださいね」
流暢な公用語だ。
きっと母国語と同じく読み書きも教わっているのだろう。
この国の教育水準は高いようだ。
他国では平民の教育などは考えられないとい
う国のほうが多いというのに。
現地語もわかるのでそちらで話してもいいのだが。
公用語が通じるならそれに越したことはない。
しばらく少女たちと談笑ののち、
「こちらへどうぞ」
修道院の裏手に案内された。
ちいさな小屋がある。
「いらっしゃい」
小屋に入ると女性が糸紡ぎをしていた。
ローザ教の修道士、一番の責任者というからには
年配だと思ったが意外にも40代くらいだろうか?
落ち着いた雰囲気の小綺麗な人物だ。
「ルアーガのアレルと申します
こちらの図書館を拝見したいのですが」
「代表のティティーナと申します。わざわざルアーガから?」
「はい、貴重な本があると伺ったものですから」
正確には、占いを頼りに来たので、本が目的のものなのかは
まだ未確定であるのだが…
本の豊富さはアレルにとって魅力であることは間違いない。
経緯なども時と場合によっては云う必要のないこともある。
「いろいろありましてよ」
ティティーナは糸紡ぎを中断して
図書館ににどういった本があるか、
タイトルを列挙して伝えた。
そこに全巻は揃っていないというが、
古代書「黒の書」があるということにアレルは関心を示した。
「実は、黒の書は私も収集しておりまして」
「そうですか」
「ぜひ拝見したいのですが」
「わかりました、リーネ!」
先ほどの修道女見習いの一人を呼び止めた
「ローラを呼んできてくれる?」
リーネと呼ばれた少女はこくん、とうなずき、
小屋から出て別の棟に向かっていく。
しばらくして、水色の長い髪に修道女の装束を
少し崩して着込んだはっと目を見張るような
美しい修道女がやってきた。
歳は16くらいだろうか。
「はじめまして、ルアーガのアレル・シード=ルアーガと申します」
「はい、私はローラ=マームエと申しましてここの図書館の
責任者をしております。」
「お若いのに立派ですね」
「あなた様ほどではありませんわ」
修道女にしておくには勿体ない美貌だ。
一国の姫であれば求婚は絶え間ないであろう。
髪と同じ水色の大きな瞳は吸い込まれそうなほど
澄んで美しい。
ローラのほうも、アレルの顔を少し遠慮がちではあるが
ちらちら見ているようだ。
「話もなんですからとりあえず図書館にご案内しますわ」
「では失礼して。」
代表のティティーナに一礼すると
アレルはローラに続いた。
小屋を出て谷の絶壁のほうに伴に歩いていく。
空には抜けるような青空が広がっていた。
静かな昼下がりである。
谷に生息しているのか、トンビの鳴き声だけが響いた。
ピーヒョロロ
崖の入り口に近づきながら、
アレルはローラの後ろ姿に続いた。
第4話 知識の源②終わり、③に続く…
***
新しい人物ローラが登場しました。
なんとなく、この話で今後の展開を
こうなるかなぁと予測してくださればうれしいです。
落書きから。
ローラのイラストが案外なくて探しました。