第2話 誘拐 ② | N/F NO FACTER

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剣と魔法の世界「アスタシア」を舞台にしたファンタジー小説。
謎多き主人公アレルと連れのゼイラ、
その他キャラクターたちの冒険活劇です。
アレルとゼイラ、二人の恋愛要素もあります。

新しい朝が来た。
昨日は成り行きでエドワーズ国王子ローレンスを
盗賊団から無事取り戻す、という使命を受けてしまった。

それもこれも、ゼイラのせいである。
ただ、今は外交どころじゃないこのエドワーズ国。
事態を収拾しないと外交の「が」の字もないのが現状だ。

とりあえず、昨日出た案として、盗賊団の下っ端と
うまく接触してアジトの位置や盗賊団の状況、要望などを
さぐれないかという算段だ。

夜を待ち、二人は酒場に向かった。

街の情報収集にはやはり、酒場(パブ)である。
これぞ、ファンタジーの王道。

とりあえず、羽振りよさそうに酒を飲み、
周りに今日はおごりだと声をかけ、財布を無造作に
机の上に置き、周りの反応を待つという
ゴキブリほいほい方式を採用した。

アレルが酔っぱらって眠りだしたようなしぐさをしたとき。
机の下からにゅっと手が伸びた。

すかさず、伸びた手をつかんで
ぐっと引き寄せる!

「おまえ、名前は?」
「おいおい、こんな状況で名前なんか名乗る馬鹿がいるか!」
どうやら、手を伸ばしたのはさらさらの銀髪で目のあたりを
隠したひょろっと背の高い青年。
風貌からして、17、18才くらいだろうか。
盗賊らしく、麻の上下に革のアーマーを身に着けて
ナイフを腰から下げている。
腕をアレルに後ろ手で素早くしばられ、なおもナイフを
抜こうとじたばたする。

これはあたりかもしれない。
アレルは賭けにでることにした。

「名を名乗るならこの金は財布ごとくれてやる」
唾をのみこむ盗賊の少年A
「まじか…」
「で、名前は」
「・・・・フォース」

「でも、名前以外をそうすらすら言うと思うなよ!
盗賊団の早業フォースとは俺のことだ」
やはり。
このフォースという青年、盗賊団の一味のようだ。

こうも簡単にことが運ぶとは。
アレルは内心にやりと笑った。

「王の憲兵にはお前を引き渡さない、だから協力してくれないか?」
「あ、なんにだよ?」
「俺たちはなにも、盗賊団を壊滅させたいわけじゃない
王子さえ無事に戻ってくればいいんだ」
「つまり、王子が戻るように協力しろってことか…」
「そうだ」
「俺を人質にとっても無駄だぜおれ、まだ入ったばっかりのペーペーだから」
「いや、人質にする気はない。ただアジトまで案内してくれればいい」
「ふーん、で、報酬は?」

こういう輩にはやはり、金である。
王からいくらか前金でもらっていたので
なかなか大きな金額をちらつかせ、フォースを味方に取り込んだ。
もちろん、手付金を渡し、成功報酬を提示して。

そして、アジトにいざ潜入!
フォースによると、盗賊団は昔の地下水道あたりにアジトを
作っているらしい。しかも、転々と拠点を変えるので
なかなか足がつかなかったとそういうことらしい。

机から手を伸ばしたとき、その足元には
排水溝の鉄板があり、そこから侵入していたのだった。
つまり、地下水道から出入りしていたため、神出鬼没と
恐れられたのであろう。

フォースは松明を持ち、現在の拠点にアレルとゼイラを招き入れた。
こっそりではなく、堂々と。

「よお、新入り!」
声をかけた先輩らしき盗賊の顔が一瞬おいて凍りついた。
いかにも国の手先らしい風貌のアレルと
みるからに異国の服に身を包んだゼイラが後に続いたからそれも仕方ないことだ。

「お、お前、この盗賊団のルールわかってんのか!?」
「うるせーな、こいつらは客だよ、客」
「ルアーガのものだ、他意はない」
「と、とにかく、俺はお頭呼んでくるわ」
そういって先輩盗賊の一人が奥に走って行った。
盗賊だけあり、足がかなり速い。もうあんな遠くに。

「まぁ、とりあえず、取引までここで待てよ」
アレルとゼイラは、盗賊団の用意した意外にもふっかりした
ソファーに腰掛けさせられ、ここが地下水道とは思えない
薫り良いお茶を出され、くつろいで待った。
盗賊団は意外と金入りがあり、団員への配慮も手厚いようだ。

ゼイラは内心、このお茶とお菓子、変な薬物入ってないだろうな?
と疑ってはみたものの、あまりに美味しそうな香りに観念して
ぐいっと飲んだ。
「うま!」
アレルは、紅茶なら一番何の変哲もないスタンダードなものを
好むため、ゼイラもこんな花のような香りつきの紅茶は初めてである。
「アレル、この盗賊団やるな!」
アレルは同じように紅茶を一口こくんと飲み、何か考えるような顔をした。
「?」
ゼイラが不思議な顔でアレルを覗きみた。

そこに、走ってお頭のもとへ行った盗賊Cが戻ってきた。
「お前ら、こっちにこいってお頭が」

ここからは交渉である。
そのお頭と呼ばれる人物がいかなる人物かにより
手を変え、品を変え、とにかく様子をうかがい、
金額を提示し、互いの妥協点を見出す。
そんな交渉力が必要なのである。
いきなり殺されるかもしれないと
ドキドキしていたゼイラだが、先ほどの茶などの
厚遇によると、そんなに悪いやつじゃないのでは?と
思えてくるのだった。だが、相手は盗賊、油断は命とりだぞ。
ゼイラはぐっと拳をつきあげ、必至に用心する。

そのお頭の居る広い客間のような一室に通され、
上等そうな椅子にゆったりと腰掛けた
浅黒い肌の少年、年は15,6才ほどであろうか?
盗賊団の頭というからして、ゼイラは髭面の
おっさんを想像していたが意外と若い。

「おまえらが王の使いか?」
「ああ、そうだ」
「王子を返せというのだな」
うなずくアレル。

「返さない、といったらどうする?」
ニッと笑う、盗賊の頭。
「実力を行使するまで」
アレルの前の中空から、突然光が立ち上り、
そこに細身の刀が現れる。

「お、おい意外と武闘派だな!びっくりさせんなよ」
頭はすこしひるんだ。
「まぁ、血を流すのは好きじゃないんだ、できるだけ穏便に済ませたい」
アレルは刀にすぅっと手をすべらせ、中空に出現した刀を一旦仕舞った。

「べつに俺たちも、王子の命をどうこうってわけじゃないんだ」
「それはわかっている」
「ちょっとゲームでもしないか?」
頭は不敵な笑みを浮かべた。

この、光も差し込まぬ暗闇のなか、
籠の中の鳥の王子は、果たして無事なのか!?
盗賊の頭の提案する、ゲームとは!!!

第2話 誘拐 ②おわり、③に続く…

***

形容描写が続いたり、
心理的な動きを書いたりしたので長引いた…③に続きます。
たぶん、2話は③で終わる予定です。
長くなりすいません。書きたいもの多すぎ。



描きおろし。フォースの装備と容姿をざっくり落書き。