「こっちよ」
サザンがペンダントを下げてダウジングして
進路を示している。
その通路はたくさん枝分かれした
とてつもなく複雑な迷宮のようだ。
アレル、キィル。
そして、文献を持ったローラと道を示す占い師のサザン。
あとから、ゼロとザイン、用心棒として連れてきたノッヂが進む。
パーティーメンバーでは、ゼイラとティオが留守番である。
今回は地下を進んでオトルトゼの都市にたどりつくのが目標の旅だ。
そろそろ出発して3日になるだろうか?
坑道から下々の魔族たちの居住区に変わったのが今朝のことだ。
ずっと暗い洞窟のような場所を進んできたので
日付の感覚もないと言えばないが、アレルは
精巧な懐中時計を持っており、時折休憩して食事をしたり、
仮眠を取ったりしているので体感時間はそんなに大きくずれこんでないはずだ。
オトルトゼの表層は、そろそろではないだろうか。
魔族との交渉が終わったので
日をあらためて彼らはオトルトゼの調査にきた。
魔族はほぼ居ないのだが、知力の低いホブゴブリンやトロールと
出くわして戦闘になるシーンも数度あった。
彼らの住処としては広く、食料も供給できるし
最高の立地となっているのかもしれない。
そんなキケンがあるから、ゼイラとティオを連れてこなかった。
ティオはあっさり承諾したが、ゼイラはかなり文句を云っていた。
でも、アレルの
「お前が大事だから言うんだ」という発言と
そのあとの濃厚なキスによってやっと納得してくれたようだ。
「無事帰ってきてくれよな」
ゼイラはそう云って見送ってくれた。
「この扉の外だと思うけど…」
ローラが文献を地図に照らし出しながら言う。
「いくぞ!1,2 3!」
ギジジジジー
錆びついた扉が少しづつ開いていく…
緊張の一瞬。
そこには、壊れた天窓から、光の降り注ぐ美しい広間があった。
なぜだろう、どこかで見たような…デジャヴュ?
広間の中央には王座があり、
白骨化した人物の亡骸がそこに座している。
服装からして、女性のように見える。
豊かな金髪は波のようにウェーブしており、
ライナノーツェの王座に座る王と同じように蔦のように伸び、
そこら中に蔓延っている。
記憶を辿ると以前訪れた魔族第2の都市ライナノーツェの王座の間に似ていたのだ。
夢のような、ある意味とても美しい空間…
全員がその景色に圧倒されるなか
ゼロが小さく呟いた「ただいま」
***
彼らが持ち帰った本のなかにはザイナノーツェの
成り立ちや複雑な建築様式など
財宝こそなかったものの、歴史的価値の
高いものばかりで、その知識と技術等は
お金では買えないほどだ。
アレルは語学力を買われ、その解析チームで
仕事をするという激務が待っていた。
なので毎日帰りが遅かった。
ゼイラはごはんを用意して、毎日待っている。
そんな日々も、約2か月後、ようやく収束した。
「あしたからやっとのんびりできそうだ」
いつもより珍しくかなり早く帰ってきた
アレルが夕方のテラスで夕飯を摂りながらゼイラに云った。
「仕事、終わったのか?」
ゼイラが顔をきらめかせて、見つめた。
「まだ手つかずの文書もあるけど
後任が見つかったから、俺はもう担当を外れた」
アレルによると、古代魔族語のわかる
魔導師の女性が突然現れて後任を名乗り出たのだという。
聞くところによると、それはあのジェザの彼女だとか。
ジェザにより異空間に飛ばされて2000年。
苦労を重ね、この空間に帰って来たらしい。
「どんないわくつきの美女かと思ったらかわいらしい雰囲気の女性だったよ」
「おれも会ってみたいなぁ。」
「そのうち、紹介する。」
「うん。」
二人の正面には美しい夕日が輝いている。
「なんか、こう平和だとなにか始めたい気分になるんだ」
ゼイラがアレルを見ながら切り出す。
「なにか事業でも始める?」
アレルは真剣に考えず、軽く応じる。
「結構本気でやってみたいことがあるんだ」
「なに?」
「俺たちの知り合ったきっかけ、手紙だったじゃん?」
「うん」
思い起こせば、ゼイラと出会ったきっかけになったのが
なぜかアレルの執務室とゼイラの暮らす後宮に
ワープ用の魔方陣が敷かれていたことだった。
二人は手紙をやりとりし、知り合い…
そしてゼイラは押しかけ妻のようにアレルのもとにやってきた。
もちろん、出会った当時はゼイラは自身を男としかおもっておらず。
まわりにも不毛な関係を心配する声もあったが。
その後、ゼイラが女性であることが判明して。
アレルとしては、別にゼイラなら男性であっても
気持ちは変わらなかったはずだと自負しているが…
どこか本能的にゼイラを女だと見抜いた部分はあったのかもしれない。
今となっては懐かしい話だ…
そんなこんなを考えているうちにもゼイラの話の続きはつづいた。
「手紙を届ける仕事がしたいなって。」
「手紙…か。」
なかなか名案かもしれない。
「まずは世界中に魔方陣を作ってさ」
「なるほど」
魔方陣から魔方陣に手紙を送ることができれば。
その手紙を別の国に届けることも可能だろう。
「やってみる?」
「できれば」
二人は見つめ合って笑った。
そろそろ、外交官を辞して
新しい仕事をするのもいい機会かもしれない。
パーティーメンバーで旅しながら魔方陣を設置して…
「ところで…さ」
ゼイラが恥ずかしそうに目をみずに俯いて口を開いた
「ん、なに?」
アレルはなんだかドキドキして、次のゼイラの言葉を待った。
「俺たちはいつ、結ばれるのかな?」
「………」
アレルも顔を赤らめる。
ここ数か月仕事に追われ、
結局ときどき戯れるばかりで、ゼイラとまだ先の関係に進んでいなかった。
「今、でしょ?」
アレルはそういうと
ゼイラの焦らされた恥ずかしさと勇気ある発言を熱くを感じながら
ゼイラの唇を強く求めた。
夕日は 夕闇にかわりつつある。
静かな夜のベールを纏いつつ、今日という日は終焉に向かって閉じて行っている。
「なにみてるの?」ルクエがルクスに訊ねる。
「しっ!」
ルクエはその光景を見て察したようで
ルクスの手を引いてその場をあとにする。
「やっとじゃない?邪魔しちゃ悪いわよ。」
「ふふふ。」
双子ではないのに名前も雰囲気の似た
アレルとゼイラつきのメイドルクエとルクスは
顔をあからめながら、本日の業務をかたずけ、
寝床のある寮に戻っていった。
二人の夜はこれから。
どんな情熱の夜になるやら。
うっすらと細い三日月だけが知っている…
第1章 第30話 平和な日々を結ぶ 完 番外編と第2章に続く…
***
第1章が終了しました。
プロットを間違っており、話数が途中で増えたり減ったりしましたが
漸く第1章終了です。
次はとりあえずサイドストーリーの番外編を交えつつ、
第2章に話が続いていく予定です。
新キャラクターや新しい国を訪問しつつ、
お話は続いていきます。
ただ、かなり更新頻度は遅くなるかと…
別の趣味や仕事との兼ね合いが…
とりあえず、こちらの第1章が終わった今の段階で
この小説を某所に転載しての展開を考えております。
1話づつ、描きおろしイラストを描きつつ、きれいな
かたちで再掲載していきたいです。
まだ予定の段階なのですが…どんな感じか
決まり次第こちらでもお知らせします。
とりあえず、40話というこの長い小説を
ここまで書けたことのヨロコビも大きいですし
数は少ないとはいえ、見守っていただけたことに
多大なる感謝を伝えさせて頂きたいです。
ありがとうございました!
そしてまた時々読みに来てやってください。
よろしくお願いします~
2015.3.29 小砥テイ
