死ね、という言葉が大量に、それもPCのモニター画面いっぱいに表示されている。
これをパソコンで打ち込んでいる人間は現在もこの不気味な文章を打ち込み続けているようでチャットログは更新する事に「死ね」と言う二文字を描き連ねていく。
本当に不愉快で気持ちが悪い。自分がこんなことをするやつと同じ人間なんだと気づいた瞬間からズキズキと押さえ付けるような頭痛が始まり、冷えピタを頭に貼り付けてベッドに横たわる。布団は僅かにカビのような匂いがしていてとても一般的な人間だったらこのベッドに横たわることをできず不愉快で気持ち悪いと思うだろうがまさにそう言う気持ち悪さを孕んでいるのがこの不気味な文字列だった。そう、これはもはや文字列という方が正しかった。
パソコンを閉じて苛立ちや不快感をどうにか消そうとした。
動画アプリを開くが調子が悪いのか2、3回落ちてしまった。それからもう一度開こうとした時きゅるりという不思議な音がして、いやそれは幻聴だったのかもしれないが、とにかくアプリは正常に起動しなかった。

そして。唐突に流れ始める暗い日曜日。

https://youtu.be/Fkos6emRph0

それから、不思議な光景が映し出された。




冷たいコンクリートの床。
灰色と少し青みのかかった壁。
鉄格子。
看板には「処刑場」と書かれている。

天井から吊るされた縄。鉄の処女。
水死体とハエの浮いた腐ったプール。
大量の睡眠薬と精神安定剤。
ノコギリとチェーンソー。包丁とカッターナイフ。
少し血のついたまま滑りのあるフック。
煉炭。ライター。プロパンガス。マッチ。

黒子姿で佇む鬼。

私。

そのまま首に手をかけられ、縄が私の首に巻かれていく。

私は先程まであのPCで、たった二文字を呪いのように繰り返し画面に打ち込んでいた。
「死ね」「死ね」「死ね」……もう何十時間打ち込み続けていたかわからない。
ずっとパソコンの前に張り付き、一睡もせず打ち続けた。ひたすら呪詛を画面に描き出すことで、精神をどうにか保っていた。
誰かを思い浮かべることはもちろんあったが、その誰かに向けての言葉では決してなかった。ただただ「死ね」という二文字を書き連ねているだけだった。
誰かに死んで欲しいとは思っていないし、自分が死ぬためにこの場所は存在しているし、どうせなら誰か私を殺して欲しいとすら思えてくる。

目の前の黒子姿の男がようやく私を殺す気になったようだった。私は椅子から立ち上がり階段になっている台をゆっくり踏み上がっていった。