あれは俺が小学校4年生の時だった。
冬休みに入り、いつもなら大学生だった叔父か叔母が青森に帰省する際に俺を一緒に連れて行ってくれるのだが、この年はそれぞれバイトその他の予定で帰省しないという。
ショックの為か、俺は風邪で41度の熱を出してしまう。
3歳から、毎年盆暮れは母の実家である青森の祖父母の家で過ごすのがいちばんの楽しみだった。
特に両親が離婚し、夜は明け方まで独りで留守番をする生活になった小学校1年生からは、夏休みと冬休みに青森へ行くのが本当に楽しみだったのだ。
ようやく風邪も治りかけ熱も下がった時、その日はやって来た。
俺にとって10回目のクリスマス。
物心がついてから初めて独りぼっちで過ごすクリスマスだった。
いつものように夕方に母が仕事へ出ると、俺はいつものようにボーっとテレビを観ていた。
すると、「ピーンポーン!」
ん?誰?
夜7時を過ぎた時に、インターホンが鳴った。
「はい・・・。」
「しょう、俺だ。」
ナント、当時大学院生だった叔父が来てくれたのだ。
玄関を開けると、手にはクリスマスケーキを持った叔父が・・・。
独りだと思って諦めていた夜に、叔父がわざわざケーキを持って来てくれたことに、子供ながらに感動したのを覚えている。
さっそくケーキを箱から出し、包丁で叔父が切り分けようとしたその時、またしても「ピーンポーン!」
ん?俺と叔父は目を見合わせた。
「はい・・・。」
「俺だ!」
マジか!今度はもう1人の、大学生だった叔父だった。
玄関を開けると、その叔父もクリスマスケーキを手にしていた。
母の2人の弟が、甥っ子の為にわざわざクリスマスケーキを持って・・・・・。
テーブルの上に2つのクリスマスケーキが並んだ。
こんなに贅沢で感動したクリスマスのことは、中年となった今でも忘れてはいない。
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