翔はいつも私の職場までバイクで迎えに来てくれた。初めて迎えに来てくれる前、場所を確認するために、私は自分の名刺を渡した。でも、翔は身分を明かすものは何も渡しても見せてもくれない。
3月8日。翔は出会いアプリを辞めておらず、誰かと出会うための痕跡を残していた。「このアプリは出会いを求める人のアプリだと私は思っているけど、他の人が良ければそうすればいい。」今までアプリ内で取っておいた思い出の会話をアプリ退会という形で2度と見れないようにしてしまった。
「出会いなんて求めていない。そのやり取りは残しておきたかったのに残念で仕方ないよ。」

それから数日後、モヤモヤが晴れない2人は話し合う。「私はあなたが誰であるかもわからない。名刺でもなんでもいい。あなたの個人情報がしりたい」「俺は俺だよ。これからもそう。会う度にその話が出てくるようだったらこれ以上は付き合えない」その頃の私は心底翔に惚れていた。「わかった。あなたの言動だけを信じるよ」
いままで通りの付き合いに戻った。

コロナ自粛もあり、会う頻度はますます減っていった。