雪の降る日だった。
シャッター通りになった小さな街。
時計の電池交換も簡単ではない。
馴染みの時計屋さんも最近店を閉めた。
そうだ、あの小さな路地に確か時計屋さんが。
あった、あった。
古くて、小さな時計屋さん。
すみません、時計の電池を入れて下さい。
すると、店番をしながら、大ボリュームでテレビ
を見てた老人が、こちらを向いた。
お相撲の話題だったっけ。
かなりのご老人に見受けられた。 90才くらいだろうか。
店を見渡すと、昭和のある時から、時が止まった
たような、古びた感があった。時計屋さん特有の、カチカチと言う音だけが、小さな古い時計屋さんに響いてた。5分、10分、15分・・大丈夫かな、少し心配になる。20分くらい経っただろか、
よいしょと立ちがり、その老人は、ヨタヨタとこちらに向かってやってきた。
その手には、しっかりと時を刻む、私の時計があった。当たり前の事なのだが、なんか、妙に感動した。 まさか、その老人がそんなに細かい仕事をまだ出来ると思わなかったから、てっきり息子さんでも出て来るものと、勝手に思ってたから。
この、古びた小さな時計屋さんでこの、老人は職人として、真面目に時を刻んできたんだろう、ほかの人生の選択は無かったのかな、なんて要らぬ心配をしたりした。
1500円頂きます。老人はそう言った。 お金を手渡して、店を出ようとした時、
その老人は、 私の背中に
「いい、時計ですな…」とニッコリした。
「ハイ!」思わず返事した。
なんか、妙に嬉しかった。 腕の確かな時計屋さんに褒められた気がしたから。
