会社分割と詐害行為 | じじい司法書士のブログ(もんさのブログ改め)

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法律事務所の中で司法書士・行政書士を個人開業しています。50近くになって士業としての活動をはじめました。法律事務所事務員と裁判所書記官としての経験を生かして、少しずつ進歩していければと思っております。

最高裁判決が出ました。平成24年10月12日第二小法廷判決〔平成22年(受)第622号〕です。会社分割行為を詐害行為に当たるとして、詐害行為取消権を行使して、会社分割行為の取消しを求めることができるのかについては、下級審判決は多々出ておりましたが、最高裁での判断がなされました。


判旨は「株式会社を設立する新設分割がされた場合において、新設分割設立株式会社にその債権者に係る債務が承継されず、新設分割について異議を述べることができない新設分割会社の債権者は、詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる。」というものです。


この最高裁判決の原審は大阪高裁です。事案は、A社がZ社に対して保証債務履行請求権を有していたところ、Z社が新設分割を行い、新設分割設立会社Yに対し、不動産を承継させることが詐害行為に該当するとして、A社から上記保証債務履行請求権管理および回収の委託を受けたX社が、詐害行為取消権に基づき、その取消しおよび不動産についてなされた会社分割を原因とする所有権移転登記の抹消登記を求めたものです。


理由中で

(1)新設分割は、株式会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させること(会社法2条30号)であるから、財産権を目的とする法律行為としての性質を有するものであるということができる。

(2)他方で、新設分割は、新たな会社の設立をその内容に含む会社の組織に関する行為でもある。

(3)財産権を目的とする法律行為としての性質を有する以上、会社の組織に関する行為であることを理由として新設分割が詐害行為取消権行使の対象にはならないと解することはできない。〔ここで、「会社設立行為が詐害行為取消権の対象になる」との内容の大審院大正7年10月28日判決・民録24輯2195頁を引用しています。〕

(4)新設分割が詐害行為取消しの対象になるかどうかは、新設分割に関する会社法その他の法令における諸規定の内容を検討して判断することを要する。

と判断し、会社法の規定を検討しています。


(1)会社法その他の法令において、新設分割が詐害行為取消権の対象となることを否定する明文の規定は存しない。

(2)会社法上、新設分割株式会社の債権者を保護するための規定(会社法810条)が設けられているが、新設分割株式会社に対して債務の履行を請求できる債権者は上記規定の保護対象ではない。

(3)会社法上の保護対象外の債権者に対しては、詐害行為取消権によってその保護を図る必要性がある場合が存する。

(4)このような債権者保護の必要性がある場合に、会社法上、新設分割無効の訴えが規定されていることをもって、新設分割が詐害行為取消権行使の対象外になると解することはできない。

と検討したうえで、「株式会社を設立する新設分割がされた場合において、新設分割設立株式会社にその債権に係る債務が承継されず、新設分割について異議を述べることができない新設分割株式会社の債権者は、民法424条の規定により、詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができると解される。」と判断しました。


詐害行為取消権の効果は相対的だといわれています。本件原告のX(委託者A)との間では会社分割は取り消されたわけですが、他の債権者との間では、会社分割は有効であると考えられます。他の債権者はどのように保護されるのかについては明らかではありませんが、今後、明らかにされるのでしょうか。


以前から、ブログで紹介を続けている

大越一毅司法書士が「濫用的会社分割と詐害行為取消権」と題して、平成24年1月31日に判例・先例研究会で研究発表をされています。おそらく、この判決の評釈もされると思います(勝手に期待しています。すいません。)。


弁護士や司法書士は、今後は、この判決に留意し、会社分割の実行に際しては十分注意する必要があります。新設分割設立会社に承継させない債権を有する債権者には事前に説明を尽くして、新設分割を実施しなければなりません。会社分割の実施を検討している会社関係者の方は、専門家とよくご相談のうえ、会社分割をすすめてください。