株式の譲渡制限の規定を新設し、譲渡制限会社になりたいという相談を受けました。
株主は、その有する株式を譲渡することができるのが原則です(会社法127条)が、株式会社は、その発行する全部又は一部の株式の内容として、「譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定め」を設けることができます(会社法2条5号)。
「その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けている株式会社」以外の会社を「公開会社」(会社法2条5号)と定義しています。
分かりにくい定義ですが、
全部の種類の株式につき譲渡自由…「公開会社」
一部の種類の株式が譲渡制限株式で、他の種類の株式は譲渡自由(発行済みである必要はなく、定款で譲渡自由な株式が発行できることとなっていればよい)…「公開会社」
全部の種類の株式が譲渡制限株式…「公開会社でない株式会社」=「譲渡制限会社」
となります。
公開会社かそうでないかは、会社法上、様々な場面で違いがあるので、重要な概念です。
公 開 会 社 公開会社でない株式会社
取締役会 必置機関 任意の機関
監査役 必置機関 任意の機関
業務監査権限あり 会計監査限定にできる
取締役任期 原則2年 最長10年まで可能
株主総会招集通知 2週間前 1週間前
…などなどです。
昭和27年7月1日~昭和41年6月30日は、株式の譲渡は自由で、かつ、定款の定めによっても制限することができないとされていました。そこで、今でも、歴史のある会社の中には、株式譲渡制限規定を設けていない株式会社が見受けられます。かなり多数の会社が、会社法施行時に定款の見直しを行い、譲渡制限規定を設けたのでしょうが、未だ公開会社のままという会社もあるのです。
全部の種類の株式につき譲渡制限規定を設けるには、
(1)株主総会の特殊決議(会社法309条3項1号)によって定款を変更しなければなりません。議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合が定款で定められている場合には、その割合以上)であって、当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合が定款で定められている場合には、その割合以上)以上に当たる賛成が必要です。株主の半数以上の出席(または委任状の獲得)が見込まれ、かつ、出席者の議決権の3分の2以上での賛成が求められるわけです。
(2)株券発行会社は、「株券提出公告」かつ「通知」を行う必要があります(会社法219条1項)。「公告」も「通知」も両方必要です。ただし、当該株式の全部について株券を発行していない〔株主全員から株券の不所持申出(会社法217条1項)を受けた〕場合は、株券提出公告及び通知の両方とも行う必要はありません。
の二つの手続が必要です。
(2)の「公告」及び「通知」は、譲渡制限規定の設定の効力発生日の「1箇月前」までに行う必要があります。1か月というのは長い……と感じる方は多いと思います。そこで、これに代わって行われているのが、「株券廃止と譲渡制限規定の設定」です。
株券廃止をするためには、
(1)株主総会の特別決議(会社法309条2項11号)によって、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款変更をしなければなりません。この場合、「株券を発行する旨の定款の定めの廃止」のほかに「定款変更の効力発生日」も定める必要があります。
(2)株主及び登録株式質権者に各別の通知及び定款に定める方法による公告を要します(会社法218条1項)。この「通知」及び「公告」は、定款変更の効力発生日の2週間前までに行わなければなりません。ただし、当該株式の全部について株券を発行していない〔株主全員から株券の不所持申出(会社法217条1項)を受けた〕場合は、通知又は公告のいずれかで足ります(会社法218条3項・4項)。
「株券廃止」と「譲渡制限規定の設定」を同一の株主総会で行います。第1号議案で「株券廃止」、第2号議案で「譲渡制限規定の設定」を決議します。効力発生日は、共に株主総会の決議時点としておきます。そこで、株券廃止の通知・公告は株主総会の2週間前までに行っておきます(通知は株主総会招集通知に織り込めば、別途、通知する必要はありません。)。株式に譲渡制限を設定した時点では、当該会社については既に株券が廃止されていますから、会社法219条に定める株券提出手続は必要ないことになります。ちょっとしたコツですね。