裁判上の和解に基づく抵当権設定登記について相談がありました。
通常よくある和解のパターンは
1 被告は、原告に対し、本件借受金として元金1,000万円並びにこれに対する平成×年×月×日から平成○年○月○日までの利息金10万円及び平成△年△月△日から支払済みまで年14%(年365日日割計算)の割合による遅延損害金の支払義務があることを認める。
2 被告は、原告に対し、前項の金員を、次のとおり分割して、毎月末日限り、株式会社□□銀行□□支店の原告名義の普通預金口座(口座番号1234567)に振り込む方法で支払う。
(1)平成△年○月から同年□月まで金50万円ずつ
(2)平成◎年○月から同年□月まで金100万円ずつ
3 被告が前項の分割金の支払を怠り、その額が金150万円に達したときは、当然に同項の期限の利益を失う。
4 原告と被告は、本日、第2項の支払いを担保するため、(被告所有の)別紙物件目録記載の土地につき、次のとおり順位1番の抵当権を設定する。
(1)債権額 金1,000万円
(2)損害金 年14%(年365日日割)
(3)抵当権者 原告
(4)債務者 被告
(5)設定者 被告
5 被告は、原告に対し、前項の土地について、同項の抵当権設定契約に基づき、平成△年△月○日和解同日設定を原因とする抵当権設定登記手続をする。
(以下省略)
です。
今回の和解は
・ 残元金1,000万円を一括払い
・ 仮に支払いを怠った場合には、和解で定めた支払期限の翌日から年14%(年365日日割計算)の割合による遅延損害金を付す
・ 支払いを怠ったら、抵当権設定登記をする
という双方の希望があるそうです。これに基づき条項を作成すると
1 被告は、原告に対し、本件借受金として元金1,000万円の支払義務のあることを認める。
2 被告は、原告に対し、前項の金員を、平成△年△月△日限り、株式会社□□銀行□□支店の原告名義の普通預金口座(口座番号1234567)に振り込む方法で支払う。
3 被告が前項の支払いを怠ったときは、被告は、原告に対し、平成△年△月×日(前項の支払期日の翌日)から支払済みまで年14%(年365日日割計算)の割合による遅延損害金を支払う。
4 原告と被告は、本日、第2項及び第3項の支払いを担保するため、(被告所有の)別紙物件目録記載の土地につき、次のとおり順位1番の抵当権を設定する。
(1)債権額 金1,000万円
(2)損害金 年14%(年365日日割)
(3)抵当権者 原告
(4)債務者 被告
(5)設定者 被告
5 被告が第2項の支払いを怠ったときは、被告は、原告に対し、前項の土地について、前項の抵当権設定契約に基づき、平成△年△月○日和解平成△年△月×日(第2項の支払期日の翌日)設定を原因とする抵当権設定登記手続をする。
(以下省略)
となりそうです。
この場合、被告〔債務者(設定者)〕の意思表示が債務の履行等債務者の証明すべき事実のないことに係るときに該当しますから、第5項に基づく登記をする場合には、「条件成就執行文」が必要です。
原告が執行文付与の申請をすると、裁判所書記官が債務者(ここでいう債務者というのは執行文付与における債務者=被告のこと)に一定の期間を定めてその事実を証する文書(例えば、指定口座への振込みをした振込依頼書兼証明書など)を提出すべき旨を催告し、債務者がその期間内に文書を提出しない場合に、執行文が付与されます(民事執行法174条1項ただし書後段、3項)。
弁済期経過
→執行文付与申請
→裁判所から債務者へ催告
→期間徒過
→執行文付与
→抵当権設定登記
→登記完了(登記事項証明書取得)
→抵当権実行(担保不動産競売申立て)……となることを考えると、途中で被告(債務者・設定者)がイタズラ(登記名義を変えてしまう)しないかが心配になってしまいますね。まあ、被告がそういうことをしない場合でも、滞納処分差押えが入らないのかも気になります。そういう意味では、お薦めはできない条項であることはお伝えしました。そういうリスクも承知のうえで、当事者間で成立する和解であれば、信頼関係に基づくものですから、おそらく金銭債務の履行がなされて、登記はしないで済むことでしょう。