遺言書でできること(のうち一番えげつないこと) | じじい司法書士のブログ(もんさのブログ改め)

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法律事務所の中で司法書士・行政書士を個人開業しています。50近くになって士業としての活動をはじめました。法律事務所事務員と裁判所書記官としての経験を生かして、少しずつ進歩していければと思っております。

今日は、「遺言書作成支援と遺言執行者の実務」という研修会に参加しました。いろいろ興味深い話を聞くことができました。



今日は、その中で、遺言書でできることのうち、一番えげつない(と私が思う)「廃除」(民法892条)について書きたいと思います。

「廃除」というのは、本来、相続人であるはずの人から相続権を剥奪することです。遺言者が「長男一郎を廃除する」と遺言しておきます。そして、やはり遺言で、遺言執行者を指定します。そうすると、遺言者が死亡し、遺言執行者が就職すれば、遺言執行者は家庭裁判所に対して、相続人廃除の審判申立てをすることになります。

家庭裁判所で申立てを認容する審判がされ、その審判が確定すると、長男一郎は相続権を剥奪されるわけです。



とはいっても、廃除の原因として「虐待」「重大な侮辱」「その他著しい非行」があげられていますから、その原因事実があることが認められる必要があります。家庭裁判所の審判手続の中で、そのような原因事実をどうやって認めてもらうか……と考えたとき、もっとも有効なのは「被相続人の陳述」になります。家庭裁判所は客観的な廃除事由があるかどうかの判断をするからです。

通常の審判手続では、審問の場で被相続人の陳述を聴き取るか、調査官の調査の中で聴き取ることになります。しかし、当然のことながら、遺言による相続人廃除の場合、被相続人(遺言者)は既に死亡しています。

そうすると、遺言書の中で、原因事実を詳細に記載しておいた方がよいのか……というと、これも問題がのこります。というのは、遺言書は一人歩きしてしまうからです。遺言書を使った不動産登記、遺言に基づく預金解約などの手続きの中で、当然、遺言書を開示していく必要があります。そうした中で、廃除の原因事実を詳細に記載した遺言書を示すことになるわけで、被廃除者の名誉を侵害する可能性があります。



今日の講師の弁護士の先生が提案されていたのは、

① 遺言書の中の廃除原因の事実はある程度抽象的な記載にとどめる。

② 遺言執行(相続人廃除審判)に備えて、陳述書を作成する。そして、公証役場で、宣誓認証をしておく。

ことでした。これでしたら、被廃除者の名誉に配慮しつつ、自らの陳述を家庭裁判所に判断の材料としてもらえます。



仮に、長男一郎に子がいれば、一郎が廃除されても、その子が代襲相続はできますが、このように用意周到に相続人廃除を準備していたことを知った長男一郎はどう考えますでしょうか。本当に廃除事由があったとすれば、後悔先に立たずということですね。


次回に続きます。