限定承認について | じじい司法書士のブログ(もんさのブログ改め)

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法律事務所の中で司法書士・行政書士を個人開業しています。50近くになって士業としての活動をはじめました。法律事務所事務員と裁判所書記官としての経験を生かして、少しずつ進歩していければと思っております。

ブログの更新を怠ってしまいました。申し訳なく思っております。

また、ブログタイトルを改めました。「じじい」というのは年齢のみならず、精神的なものをさしております。更新を怠ったことからもお分かりのように、根気もなくなっております。可塑性もありません。何とかならないでしょうか……。

本当は商業登記、ひいては会社法などに基づく法務支援について、少しでも記載できればよいのですが、なかなかネタが出てきません。守秘義務にも考慮するところですので、ここに記載することができるような機会がくることを私自身も待ち焦がれております。

さて、本日は、限定承認(また、相続……)について少し記載してみたいと思います。

限定承認というのは、「相続によって得た財産の限度において、被相続人の債務及び遺贈を弁済するという条件で相続を承認する」ということです(民法922条)。

単純承認が「相続人が被相続人の権利義務を無限に承継すること」(民法920条)、相続放棄が自らが相続人とはならないとの意思表示(民法896条)ですから、その間に位置するものでしょうか。

限定承認は、相続によって得たプラス財産の範囲で負債(マイナス)を弁済しますよ……という制度ですから、これが原則となってもよさそうなものですが、実際のところ、限定承認を選択する人は少ないと思います。

その理由は、一つには税務リスクです。限定承認の場合には、「みなし資産譲渡所得税」という譲渡所得課税が生じます。相続人が限定承認をした場合には、「相続が開始したとき」にその時の時価で資産の譲渡がなされたものとして課税対象とされます。

税金は死亡した時点で精算しろ(被相続人が支払うべき分を死亡時に精算して、相続人には引き継がせない)……ということですから、理屈はおかしいわけではありません。

しかし、単純承認の場合には処分しなければ支払う必要がなかった税金を、処分しなくても支払えと言われてしまうわけですね。ここがコワい。だから、税理士などの専門家に相談したうえでないと、この方法はとれません。

もう一つの理由は、具体的な清算の手続がよく分からないということです。民法の条文だけでは、どのように清算手続を進めていけばよいのかが、今いちピンとこない。文献も少ないのです〔基本書-例えば、全訂・判例先例相続法Ⅲ(松原正明裁判官)-にも、少しずつ書かれてはいるのですが。〕。相続人不存在による相続財産管理人の清算手続について限定承認の手続が準用されている部分〔民法957条2項が準用する民法927条2項~4項、928条~935条(932条ただし書を除く)〕もあるのですが、文献からすると、こちら(相続人不存在による相続財産管理人の清算手続)の手続の方が多いですよね。

弁護士五右衛門(大阪弁護士会の服部廣志弁護士)著作の「改訂・限定承認の実務」が唯一といっていい実務指針の文献です。

相続債権者の立場からしても、限定承認というのは、少しコワい部分があります。相続人が複数共同で限定承認をした場合、裁判所が職権でそのうちの1名を相続財産管理人に選任します(民法936条)。〔一人でした場合は、その相続人が当然に清算を行います。〕

ところが、この相続財産管理人(あるいは相続人)には、裁判所の管理は直接及びません。したがって、管理・清算を怠っていたからといって、相続人不存在に基づく相続財産管理人のように、裁判所からの指導や監督ができないのです。

こうした「管理人として不適当」とか、「管理を行うことができない」とかいった事情がある場合には、相続債権者の請求で、家庭裁判所は相続人以外から相続財産管理人(民法926条2項、918条2項、3項)を選任することができ、この管理人には裁判所の監督が及ぶこととなります。

相続財産管理人Aがいるのに、相続財産管理人Bを選任して、Bが管理権限を有して、Aが清算を行う(実際には行わないだろうから、Bが尻を叩く。裁判所もBを通じて尻を叩く。)……という迂遠なことを行わなければならないのです。

もう少し、具体的な清算についての規定が整備されることを希望しています。