じじい司法書士のブログ(もんさのブログ改め)

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法律事務所の中で司法書士・行政書士を個人開業しています。50近くになって士業としての活動をはじめました。法律事務所事務員と裁判所書記官としての経験を生かして、少しずつ進歩していければと思っております。

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「特定の人の生死を保険事故とし、その保険事故の発生した場合に、保険者が保険金受取人に対して、約定の一定金額を支払うことを約し、保険契約者がこれに対し保険料の支払いをもって酬(むく)いる」契約を生命保険契約と言います。



こんなまどろっこしい説明はいりませんよね。多くの方々が何らかの生命保険契約に加入しているかと思います。



では、保険契約者がお亡くなりになったとき、給付される「生命保険金(請求権)」が相続財産に含まれるかどうか、遺産分割の対象となるかどうか……について、改めて考えてみたいと思います。





保険契約者(被相続人・A)、その相続人が妻B、子C・Dとします。



1.Aが自分を被保険者とし、相続人中の特定の者(例えば、妻・B)を保険金受取人とした場合

指定されたBは、固有の権利として保険金請求権を取得するので、遺産分割の対象とはなりません(相続財産にはなりません)。

〔最三小判昭和40.2.2民集19巻1号1頁〕

「……保険金受取人としてその請求権発生当時の相続人たるべき個人を特に指定した場合には、右請求権は、保険契約の効力発生と同時に右相続人の固有財産となり、被保険者(兼保険契約者)の遺産より離脱しているものといわなければならない。」



2.保険契約者・Aが自己を被保険者(被相続人)とし、保険金受取人を「被保険者又はその死亡の場合はその相続人」と約定した場合

被保険者死亡の場合には、受取人を特定した人の氏名をあげず、抽象的に「その相続人」とだけ記載していた場合です。

保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に相続人の固有財産となり、被保険者(兼保険契約者・被相続人A)の遺産から離脱します。

つまり、遺産分割の対象とはなりません(相続財産にはなりません)。

〔前記判例〕

「本件養老保険において保険金受取人を単に『被保険者死亡の場合はその相続人』と約定し、被保険者死亡の場合の受取人を特定人の氏名を挙げることなく抽象的に指定している場合でも、保険契約者の意思を合理的に推測して、保険事故発生の時において被指定者を特定し得る以上、右の如き指定も有効であり、特段の事情のないかぎり、右指定は、被保険者死亡の時における、すなわち保険金請求権発生当時の相続人たるべき者個人を受取人として特に指定したいわゆる他人のための保険契約と解するのが相当であって、前記対審院判例の見解は、いまなお、改める要を見ない。」



この場合、相続人が保険金を受け取るべき権利の割合は、民法427条の「別段の意思表示」があるものとして、各保険金受取人は、法定相続分の割合による権利を有することになります。(妻Bは2分の1、子CDは各4分の1)

〔最二小判平成6.7.18判時1511号138頁〕

「保険契約において、保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の『相続人』と指定した場合は、特段の事情のない限り、右指定には、相続人が保険金を受け取る権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれているものと解するのが相当である。」



3.保険契約者・Aが自己を被保険者とし、保険金受取人を指定しなかった場合

保険約款及び法律(保険法等)の規定に従って判断することになります。約款に「被保険者の相続人に支払います。」との条項がある場合には、保険金受取人を被保険者の相続人と指定した場合と同じになるので、その相続人が固有の権利として取得することになり、遺産分割の対象とはなりません(相続財産にはなりません)。

〔最二小判昭和48.6.29民集27巻6号737頁〕

「……『保険金受取人の指定がないときは、保険金を被保険者の相続人に支払う。』旨の条項は、被保険者が死亡した場合において、保険金請求権の帰属を明確にするため、被保険者の相続人に保険金を取得させることを定めたものと解するのが相当であり、保険金受取人を相続人と指定したのとなんら異なるところがないというべきである。」



4.保険契約者・Aが被保険者及び保険受取人の資格を兼ねる場合

(1) 満期保険金請求権

満期保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に被相続人の財産となりますから、満期後に被相続人Aが死亡すれば遺産分割の対象となります

(2) 保険事故による保険金請求権

保険契約者Aの意思を合理的に解釈すれば、相続人を受取人と指定する黙示の意思表示があったと解するのが相当ですから、被相続人A死亡の場合については、保険金請求権は相続人の固有財産となります。遺産分割の対象とはなりません(相続財産にはなりません)。



5.第三者が被相続人を被保険者及び保険金受取人として保険契約を締結した場合(例えば、Aさんが会社のオーナー社長で、会社が保険をかけているような場合)

被保険者(被相続人A)の死亡のときは、その相続人を受取人に指定するとの黙示の意思表示があったと推定できるので、保険金請求権は、受取人(被相続人A)の相続人(BCD)の固有財産となります。遺産分割の対象とはなりません(相続財産にはなりません)。