誰もが知っている。こんなところ、自分のいるべき場所じゃない。それでも僕は、大多数の人間が歩いていく道の、そのわきに掘られた溝の中で身を縮め、誰も知らない小さな輝きを求めて、底に横たわるヘドロを浚うのも悪くはないと思う。

 

 僕は周りに座って担任の話を熱心に、眠そうに、あるいはそっちのけで参考書を眺めながら聞いている予備校生たちを見た。この人たちも、ここが自分の居場所ではないことは分かっている。それでも自分はここにいる。その矛盾にどうやって折り合いをつけているんだろう?

 

 ここはただ、勉強をする場所なのだ。生き方も、過去も未来も考えず、ただひたすらに今と向き合う場所だ。それ以外の思考は無駄。傷だらけの体を顧みず、ただ敵だけを見て拳を繰り出し続ける。相手が倒れるまで。でも僕がやっていることは、終わることのない傷の手当。敵なんて見ていないから、一つ傷をふさいでもその間に新しい傷ができる。手当は雑でやり方なんて知らないから、ふさいだ傷はすぐにひらく。