「キッチン」読んだことある方、はーい!
「TSUGUMI」知ってる方、はいはぁーい!
結構いらっしゃると思います。
これらの作品を書いたのは、ちょっと不思議な女の子や、変わった家庭環境を持つ主人公の設定がお得意な作家、吉本ばななさんです。
ばななさんの小説に登場する女子と村上春樹さんの物語に出てくる男性は、本当に皆さん仕事をしないし学校にも行かないですよねぇー。すぐ休んだり、ふらっと家出をしたり、何かを探す旅に出ちゃう。
しかしその非現実感こそが、ファンタジー要素あふれる世界観を作っています。
さて、そんな超有名作家・吉本ばななさん著の「哀しい予感」。ちっとも哀しくないどころか、この上なく幸福感に満たされる恋愛小説です。
本書は、19歳の弥生という女の子が主人公です。彼女は医師の父、看護師をしていた母、高校生の弟との4人家族で、羨ましいほど幸せな仲良し一家です。しかし弥生は自分の中に、何か説明できない気持ちを抱えています。幼少期の記憶がまるでなかったり、男女の姉弟としては考えられないほど弟と仲が良かったり。
自分は大事なことを忘れているのではないだろうか…。弥生は理由もなくふらりと家出をしたりしてしまいます。
そんなある日、また家出をして叔母・ゆきのの家に泊まりに行っていた弥生は、彼女が叔母ではなく実の姉だということを知ります。弥生は幼い頃、今の家族に養女として迎えられていたのです。そして翌日、ゆきのは突然どこかに行ってしまいます。
弥生は、いまや血が繋がらないとわかったイケメン弟の哲生と一緒に、ゆきのを探しに行きます。その旅の中で、失われていた幼い頃の記憶を思い出し、もちろん愛も見つけるよー♥というお話です。
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話の筋はそれほどひねっていないのですが、この、血の繋がりのない弟との恋愛が、そりゃもうベストセラーになりますよね〜というトキメキ感がバキバキなのです。おそらく当時、日本に住む妙齢の女性はみんな夢中で読みましたよね? というレベルです。
本書が執筆されたのは、ばななさん24歳のときです。
若者にしか持ちえない瑞々しい感性と、誰もが感じる圧倒的な才能による文章。アンニュイでちょっとエキセントリックで可憐でメルヘンで、しかし本質を突くような名言を放つ登場人物たち。思わず真似したくなるキラキラ輝く表現ばかりです。しかしそれらは、どれほど憧れ、見つめ続けても、決して手が届かないものだろうと思います。
きっと、ばななさんにしか触れられない光なのです。
ヒロインが最初はイケメンに興味なし→何かきっかけに意識しはじめちゃう…ドキドキドキ🥴といったような〈ダルいお約束〉は、一切ありません。そんなものは全部すっ飛ばされています。
〈すでに両想いドドーン❤〉から始まるのです。
お互いに特別な〈好き〉を持っているけれど、まだ伝えてはいない。でも絶対好き。間違いなく好き。
恋愛の一番いいときですね。
少女漫画のようなときめく展開ながらも、それを構成する文章は決して甘すぎず、ピリッと透き通っており、確かな強さがあります。
繰り返しますが、24歳当時の作品です。
ひれ伏したくなる才能ですね✨
素敵な弟は、〈恋心の色しかない目〉で真っすぐ見てきたりします。すごい表現!
こんな瞳で一度でいいから見られてみたい😆!
いやぁ…果てしなく幸せな設定ですね。
そして、〈ベストセラーになったのはここだよね〉と思わせられる表現が、作品の中盤にあります。
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ゆきのを追って軽井沢に来た2人でしたが、いまだ彼女を見つけられません。
その夜、2人は散歩に出ます。そこで会話をする中で、実の姉弟ではないことを哲生はすでに知っていたと聞かされます。
驚き、なぜだかふわふわして、弥生はどうしたらよいかわからなくなります。
そしてふいに、哲生が弥生を抱きしめます。
弟から感じられる、懐かしくて大好きな自宅の匂い…。切なくなり、涙がこぼれそうになってしまう弥生。
仕方なく顔を上げると、哲生の長い睫毛に囲まれたダイヤモンドのように綺麗な瞳がこちらを見つめています。
それがあまりに悲しげに輝いていたので、弥生は思わず瞳を閉じます。
そして2人はキスを交わすのです。
相手から壁ドン的に迫られるのでもなく、
自分から純粋さでグイグイ行くのでもなく、
互いにどちらも好きで、そうなるのは当たり前で、
1つずつ動作を重ねていったら、いつの間にかキスをしてしまったね…でも…うん…🥴♥という感じ。
下世話に注釈してしまうと、
〈涙がこぼれそうだから〉顎クイされずとも上を向き、〈美しい瞳が悲しげで見ていられないから〉好きな人の前で下心なく、目を閉じるのです。
誰の欲望も見えない、滑るように美しいキスシーンです。
初めてのキスのくせに、この2人は遥か以前から、とっくに恋人同士なのです。
猛烈にときめきます。
あーオシャレ。ああ恋がしたいぞ。
そう思わせてくれる素敵な作品なのです✨
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クリスマスということで、楽しく幸せな気持ちでキュンキュン♥できる本をご紹介しました。
いくつになってもドキドキは楽しいですね。
久しぶりにガチの恋愛小説で浮かれてしまいました。妄想気質の人間(=私です)はこんな本を読んでしまうと、しばらく〈ニヤニヤ星🤤〉から帰ってこられません。
〈睫毛の長いイケメン〉などをどなたかご存知でしたら、その方を思い浮かべながら読むと最高の小説です。
それでは皆さん、メリークリスマス🎄✨